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55.SIDE:エリアノーラ・マ・ノーストキタ 2

「改めて紹介しますわね。エリアノーラ。私のフィオナ王女様ですわ。」


「私の?」

母の言葉にカチンときた私は、思わずそう言ってしまいました。


母は、ニコニコと機嫌良く笑い、

「そうですわ。私が後見人を務める、私のフィオナ王女様ですわ。私、フィオナ王女様の魔法の先生を引き受けましたのよ。王女様の魔力は、素晴らしいのよ。」


「へぇ~、そうなのですか?私は、フィオナ王女殿下は、お体が弱くお母上様のご実家イーデアル公爵家で静養中と聞いています。お体の弱い子供の魔力がそんなに素晴らしいのですか?」

母が魔法の先生を引き受けたと言うことは、この王女様は五星。母が子供とは言え自分以外の五星を誉めることに苛立ちを隠せず、私は公爵家当主としてしてはいけない王女様の魔力を否定するような発言をしてしまいました。


「エリアノーラ、失礼ですわよ。今の発言を取り消しなさい。王女様に謝るのです。」


母に言われ、我に返った私は、王女様に謝罪しようとしましたが、私が謝罪するよりも前に王女様は、

「いいのです。ミューラ大叔母様。私は、そのように思われても仕方ないのです。今、王宮に戻っていますが、まだ、イーデアル公爵家で静養中ということになってますから。」

母にそう言うと、私の方を見て、私に挨拶してくれました。

「エリアノーラ・マ・ノーストキタ公爵様、しばらくお世話になります。フィオナ・マ・アールと申します。よろしくお願いいたします。」


『いい子だわ。かわいい。笑ったお顔は、マリアンヌ様にそっくりね。』

私がそう思って王女様を見ていると母の容赦ない言葉が聞こえてきました。


「王女様、この馬鹿娘にお優しくしていただいて、ありがとうございます。この馬鹿娘には、後で私からよく言って聞かせますわね。申し訳ありません。」


「いえ、ミューラ大叔母様。本当にいいのです。」


私を馬鹿娘馬鹿娘と連発してそう言った母とフィオナ王女様は、二人ともお互いの顔を見て笑っていました。王女様は、本当に私の失言を気にしていないように見えました。


母が誰かを連れてくる、母が誰かの後見人になる、ただそれだけで私は、母に苛立ち、王女様を否定してしまいました。

私は、王女様に対して申し訳ない気持ちになりました。


「フィオナ王女殿下、申し訳ありませんでした。ごゆっくりとご滞在下さい。歓迎いたします。」


「ありがとうございます、ノーストキタ公爵様。公爵様は、ミューラ大叔母様にそっくりですわね。私、最近、ずっと大叔母様に魔法以外もいろいろ教えていただいてます。大叔母様には、私、とても感謝しています。」


「あらあら、まあまあ、かわいいわね。エリアノーラ、あなたもそう思うでしょう?」


「えっ?そうですわね。とてもお可愛らしく思います。」


「でしょう?本当かわいいし、とってもいい子なのよ、私の王女様は。」



???

…母は、いったいどうしたのだろう?

もちろん、母は、私以外の者には、お優しい。お優しいが、少しひいてあまり干渉したりしない方のはず。誰かをこんなに猫可愛がる様子を私は今まで見たことがない。そう、よく考えれば、母は他人の後見人をするような方ではない。この王女様は、何かあるのだろうか?


私は、母が可愛がる王女様に興味を持ちました。


「フィオナ王女様、失礼とは存じますが、少しよろしいでしょうか?」

母が可愛がる王女様の魔力に触れてみたくなりました。

母が代わりに返事をしました。

「フィオナ王女様、馬鹿娘に王女様の魔力を分からせてあげて下さいませ。遠慮は要りません。いいですわね。おもいっきりやって下さい。」


「お母様…。」


「覚悟なさい。エリアノーラ。母の情けです。身構えるのです。」


「はぁ?」

母は、そう言ってましたが、五星の王女様とはいえ、九歳になったばかりの子供。しかも、体が弱く、最近まで静養していて、母に魔法を習い始めたばかりの子供の魔力が、大人以上とはとても考えられなかった私は、言われた通り少しだけ身構えましたが、必要以上にすることもないだろうと安易に思ってしまいました。


「大叔母様、本当にいいのですか?」

不安そうに、母に尋ねる王女様からは、ほとんど魔力を感じませんでした。


「「どうぞ。」」

母と私は、同時にそう答えました。


王女様が差し出す、その手を取った、その瞬間、本当に一瞬で私は、王女様の魔力に支配されてしまいました。


「きゃあああああ、嫌ああああああ。」

いきなり崖から突き落とされ、冷たい奈落の底に引きずり込まれるような恐怖の魔力に全身を拘束され、私は、悲鳴をあげてしまいました。


「大丈夫ですか?ノーストキタ公爵様。失礼しますね。」


恐怖でうずくまってブルブル震える私を、フィオナ王女様は優しく抱きしめ、今度は、ゆっくり、ゆっくりぽかぽかとした暖かいとろけるような優しい魔力で私を包み込みました。


「大叔母様、だからダメだって言ったではありませんか。ノーストキタ公爵様、申し訳ありません。大丈夫ですか?」


「これでいいのよ。五星はこうするのが一番いいのよ。分かったでしょう?エリアノーラ。」


「はい、お母様。フィオナ王女様、ありがとうございます、もう大丈夫です。」


「よかった。」

そう言って、フィオナ王女様は、私の手をとり、立たせて下さいました。


このお方の魔力は、凄まじい。私は、このお方の足元にも及ばない。母がべた褒めするのも、頷ける。

ですが、

母は、このお方をどうなさるおつもりなのでしょうか?

何故、母は、このお方の後見人になったのでしょうか?

王家には、フェリオ王子様がいらっしゃる。

慣例通りなら、フィオナ王女様は、四大公爵家のうち次期当主が四星男性の公爵家に降嫁するはず。


『うちに欲しいわ。私の娘にしたいわ。』


母の真意を知りたい。そして、可能ならうちの娘にしたい。そう思った私は、

「お母様、少しお話があります。後程、お母様のお部屋にお邪魔してもよろしいでしょうか?」

母に尋ねました。


「そう言うと思ってました。いいでしょう。」

母も、私の質問に答えてくれるみたいです。

私は、王女様を客室にご案内した後、すぐに母を尋ねました。

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