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54.SIDE:エリアノーラ・マ・ノーストキタ 1

私は、エリアノーラ・マ・ノーストキタ。成人してすぐ父から爵位を譲り受け、女性公爵となりました。


私の母は、この国の元王女、ミューラ・マ・ノーストキタ。五星の王女は、四大公爵家のうち次期当主が四星の男性に降嫁する慣例があり、母は北の公爵家ノーストキタに降嫁させられました。四大公爵家でも一番格下で貧しいノーストキタ公爵家に。


母の世代は、MR五星が比較的多い世代でした。


突出していたのは、四大公爵家筆頭、東の公爵家イーデアル。イーデアル公爵家には、五人の五星がいました。当時は次期当主で現在の当主ゴルディオ様、ゴルディオ様のお祖父様、お父上様、叔母上様、異母妹レノファ様。ゴルディオ様の叔母上様は西の公爵家に、異母妹レノファ様は母の弟バードット王子に嫁がれました。


南の公爵家の当時の当主様も五星。


王家の五星は、母の異母兄国王ジャン・マ・アール陛下、母の父で退位した前国王陛下、ジャン国王陛下のお母上様で前第一王妃陛下、生まれたばかりのエドガー王子。


五星が多くいたおかげで、数世代五星当主がいなかった貧しいノーストキタ公爵家に、漸く五星の女性、しかも王女が降嫁することになったのです。一族は、歓喜しました。貧しい一族に日の光が差したのです。母は、多額の一時金と王宮仕事を携えてノーストキタ公爵家に降嫁しました。母は、ノーストキタ公爵家に富と権力をもたらしたのです。


そして、私が生まれました。


末は、王妃か久しくノーストキタにいなかった五星当主かと、一族は私が生まれたことをとても喜んでくれました。一族が私に優しくしてくれる反面、母は私に冷たく接しました。五星の私は、同じ五星の母から魔法を習いました。母の指導は、とても厳しく、私は怒られてばかりでした。


『五星なのに。五星のくせに。五星でしょ。五星なら…。』


母は、必ずそう言って私を叱りました。私は、元王女の母から生まれた五星なのに、魔力も魔法も母を満足させれない出来損ないなんだろう。幼い私はそう思いました。


大きくなった私は、母が私に厳しく接する度に反発しました。母が他の五星のことを話すだけで苛立ちました。五星なんか大嫌いだと思いました。従兄エドガー王子の婚約者候補なんて、絶対嫌だと思いました。


五星は、他の五星の魔力を測りたがります。己の魔力に自信があるからだと私は思っています。悔しいですが、母の魔力は、私よりも上です。ですが、私は元王女の母の娘です。王族の五星、伯父の国王陛下や、従兄のエドガー王子よりも下かも知れませんが、他の四大公爵家の五星の誰よりも上です。そう、筆頭公爵家東のイーデアルよりもです。

なのに、母を満足させれない。



母が嫌い。大嫌い。

私を認めようとしない母が嫌い。

弟たちには優しいくせに。孫たちにも優しいくせに。他のみんなに優しいくせに。

私にだけ厳しい母が嫌い。


私は、成人して父から爵位を譲り受けるとすぐノーストキタ領に引きこもりました。



ある日、母が領地に戻ってくるという連絡がありました。10日ほど領地に滞在するらしいのです。母は、王都で新しく王宮仕事を引き受けたばかりだと聞いていました。私は、何故母が戻るのか疑問に思いました。そして、母は、母の他に子供を一人一緒に連れて帰ると言うのです。先日九歳になったばかりの女の子で、母はその子供の後見人になったと、そう言うのです。


九歳と言えば、王孫王子フェリオ殿下と同い年。王子殿下と同い年の女の子の後見人なんて、その娘を王子殿下の婚約者に推すつもりなのでしょうか?誰?どこの娘なのかしら?フェリオ王子殿下の婚約者候補なら四星以上。四大公爵以外、伯爵家以上の家柄の四星の九歳になったばかりの女児。おそらく一人か、いたとしても二人くらいまで、数は少ないはず…。

ですが、

『…全く検討がつかないわ。』

引きこもりの私は、考えるだけムダなほど全然分かりませんでした。


『さすがに、よくないわね。少しはお母様の言う通り、王宮仕事しないといけないかしら…。』

少しだけ自分の行動を反省し、母と子供を迎える準備をしました。


母が帰ってきました。母は、本当に女の子を連れて来ていました。

「お帰りなさいませ。お母様。」

『別に帰って来なくても構いませんでしたのに、何しにいらしたのですか?』とイヤミの一つでも言おうと思ったのですが、あまりにもフェリオ王子によく似た顔立ちのその女の子を見て、私は、絶句してしまいました。


母は、私を一瞥し、

「今、戻りました、エリアノーラ。お迎え、ご苦労様です。紹介しますわね、私が後見人を務めているフィオナ王女殿下ですわ。挨拶しなさい。」

母に言われて、ぼ~っと突っ立ったままだった私は、慌て膝間付き、

「お初にお目にかかります、フィオナ王女殿下。北の公爵家ノーストキタ当主エリアノーラ・マ・ノーストキタと申します。遠路はるばるのお越し、ノーストキタ家当主として光栄に思います。」

母が一緒に連れて帰った王女様に挨拶をしました。


「エリアノーラ、王女様は、お疲れですわ。早く屋敷の中にご案内しなさい。」

「はい、申し訳ありません、お母様。フィオナ王女殿下、こちらにどうぞ。」


母に急かされ、私は慌てて王女様を本宅に招き入れたのでした。

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