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53.ノーストキタ領訪問 1

一学期が終わった次の日、フェリオのお誕生日パーティーが開かれた。去年よりもさらに友達が増えたフェリオは、パーティーを楽しんだ。


そして、その日は早めに休み、次の日の早朝、ミューラと共にノーストキタ領に向けて出発した。

ノーストキタ領までは、馬車で約二日、初日の夕方にノーストキタ公爵家がいつも利用する宿に泊まり、次の日の早朝には、宿を出発、夕方~夜にノーストキタ領に到着する予定だ。


「フィオナちゃん、エリアノーラには、女の子を連れて帰ると連絡しているわ。今回、毎日限界までフィオナちゃんの姿でいてもらいますわね。」


「分かりましたわ。フィオナの姿を保てなくなりそうなら早めに言いますわね。ノーストキタ公爵様は、私のことを?」


「知らないわ。フィオナ王女様は、未だイーデアル公爵家で静養中って思っているはずですわ。」



ノーストキタ公爵家に着くと、ノーストキタ公爵自ら出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ。お母様。」

と言ったまま、フィオナを見て固まっている娘のエリアノーラをミューラは一瞥し、

「今、戻りました、エリアノーラ。お迎え、ご苦労様です。紹介しますわね、私が後見人を務めているフィオナ王女殿下ですわ。挨拶しなさい。」

ぼ~っと突っ立ったままだったノーストキタ公爵は、慌て膝間付き、

「お初にお目にかかります、フィオナ王女殿下。北の公爵家ノーストキタ当主エリアノーラ・マ・ノーストキタと申します。遠路はるばるのお越し、ノーストキタ家当主として光栄に思います。」

そう言ってフィオナに挨拶をした。


「エリアノーラ、王女様は、お疲れですわ。早く屋敷の中にご案内しなさい。」

「はい、申し訳ありません、お母様。フィオナ王女殿下、こちらにどうぞ。」


母親のミューラに急かされ、エリアノーラは慌ててフィオナを本宅に招き入れた。


ノーストキタ公爵家の本宅に着いたのは、夜遅い時間だったので、フィオナたちは、エリアノーラと少し話をすると客室に案内された。

王都から出ることも、二日間も馬車に揺られることも、自分の部屋以外で寝ることも、全部初めての体験で、少し疲れたフィオナは、フェリオの姿に戻って、椅子に座って本を読みながらくつろいでいた。


すると、突然、ノックの音が聞こえて、ノーストキタ公爵がフィオナのいる客室に入ってきた。


「失礼します、フィオナ王女様。エリアノーラです。どうしてもお尋ねしたいことがあり、直接お伺い致しました。よろしいでしょうか?」


「えっ?」

フェリオは、驚いた。


「えっ?フェリオ王子様?ですわよね?フィオナ王女様は?えっ?えっ?」

エリアノーラも驚いていた。


そこに、ミューラが慌てて入って来た。

「エリアノーラ、フィオナ王女様のいるお部屋に勝手に入ってはなりません。あなたは何て無礼なことをするのですか。」


「申し訳ありません、ミューラ大叔母様。まさか急に来られると思わず、いつも通り過ごしてました。」


「フェリオ王子様の責任ではありません。私が一番最初に、絶対王女様のいるお部屋に入ってはならないと言うべきでした。まさか娘がこんな無礼なことをするなんて思いませんでした。申し訳ありません。」


ミューラはため息を付くと、

「フェリオ王子様に謝罪しなさい、エリアノーラ。」

と言った。


「はい、お母様。申し訳ありません、フェリオ王子様。ですが、何故フェリオ王子様がここに?フィオナ王女様は、どちらに行かれたのですか?」


「どこにも行ってません。そちらにいらっしゃいます。」

「えっ?フィオナ王女様?」


「はい。」

フェリオは、返事をした。


「まさか…」

バレてしまった以上仕方ないので、諦めたように頷くしかなかったフェリオとミューラ。


ミューラは、エリアノーラにフェリオとフィオナの話をした。


「フィオナ王女様は、この国の王となられる方なのです。分かったら、あなたもさっさと法の改正に賛成しなさい。」


ミューラがそう言う頃には、エリアノーラは、涙と鼻水が溢れ出て、半分聞いてないようだった。


「うぐっ、ぐずっ、わがりまじだわ。おがあざま。お可哀想にフィオナ王女様。うぐっ、ぐずっ、わだぐじも、王女様がお早くご自分の本当の姿を取り戻せるように協力致しますわ。」


エリアノーラがボロ泣きしながらフェリオの手を取ろうとしたので、フェリオは、慌ててティッシュを渡した。



「うぐっ、ぐずっ、ずぴっ。ちーん。」



「きったないですわ。エリアノーラ。お化粧が最悪ですわよ。その汚い手で私の王女様に触らないで。」


ぼろぼろ泣いている娘に、母親のミューラは容赦なく厳しい一言を放った。

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