50.新学年 SIDE:ドルザッグ3
その日の夜、父上が帰るまで、一族も使用人もみんな待っていたらしい。オレは一人、地下室で謹慎していたのだが、家には隠居した祖父母、叔父上、叔母上等、フラインダー侯爵家一族のほとんどが集まっていたらしい。
父上が地下室にきた。
「父上。ぼくは…」
「ドルザッグ、イーデアル公爵様が円満解決して下さった。フェリオ王子殿下のおかげだ。フェリオ王子殿下が、自分が悪かったから皆を処分しないで欲しいとイーデアル公爵様におっしゃったそうだ。お前は、明日、殿下にも同級生にも先生たちにも全ての方々に謝罪しろ。お前は、己の軽率な行いを反省し、二度とあのようなことをするな。お前の行動一つ一つに一族の全てがかかっているのだ。分かったな。」
「はい。父上。申し訳ありませんでした。」
オレは殿下に感謝し、再び涙が溢れてきた。
次の日、オレは、みんなに謝り歩いた。
フェリオ王子殿下は…いや、フェリオくんは、自分が悪かったと言って許してくれた。
そして、他の四星三人やフェリオくんの友達に謝るのについてきてくれて、一緒に謝ってくれた。
フェリオくんは、優しい。
フェリオくんは、親切だ。
フェリオくんは、笑うと…かわいい。
いやいやいやいや、まてまてまてまて。
フェリオくんは、男だぞ。男がかわいいなんて、失礼だよな。
でも、男なのに、髪の毛が少し長いせいか、女の子みたいに見える。そう、あの夢で見たフェリオくんによく似た顔の女の子。あの女の子は、ほんとめちゃめちゃかわいかった。あ~あ、フェリオくんが女の子だったら良かったのに。
オレは、午後に移動した教室で、ぼんやりとフェリオくんを見ていた。
「どうしたの?ドルザッグくん。」
「えっ、あっ、フェリオくんの髪の毛、少し長いなぁと思って。」
オレは慌てて誤魔化した。
「ああ、これ?ぼくは短くしたいけど、フィオナが困るから。」
「えっ?フィオナって?」
「双子の妹だよ。最近、王宮に戻って来たんだ。体が弱いからまだ学校には来れないけど。妹が学校に来るようになったら、仲良くしてあげてね。」
『妹~~。しかも、双子。フェリオくんの女の子版来た~~。やっぱり男より女の子だ。』
「是非、妹王女様をオレに紹介して下さい。」
「えっ?あっ、うん。まぁ、いいけど。でも、フィオナが学校に通うのはまだ先だよ。」
「フェリオ様、私もフィオナ王女様にお会いしたいです。イーデアル公爵領の本宅でお預かりしていると聞いているのですが、一度もお会いした事がないのですわ。」
レリーリアラ公爵令嬢が話に入って来る。
「えっ?そうなの?」
「そうですわ。本宅に行っても、フィオナ王女様のいる三階全て立ち入り禁止なのですわ。絶対に三階に行ってはいけないと、見張りまでいますのよ。」
「へぇ~~、徹底しているね。でも、フィオナはまだ公式ではイーデアル公爵家で静養中だから、王宮に戻ってきてるのは内緒だよ。」
「「分かりました(わ)。」」
ウインクしてそう言ったフェリオくん、かわいい。
妹王女様が学校に通うのはまだ先みたいだし、男でも…ありかな?
そう思って、フェリオくんを見たら、
「うん?何?」ニコッ。
フェリオくん、ヤバいです。その笑顔。本気で好きになりそうです。




