49.新学年 SIDE:ドルザッグ2
失神したことを心配してなのか、家からお迎えが来てくれた。
オレは家に帰った。母上がオレを待ってくれていた。
「母上、只今帰りました。ご心配をおかけして申し訳ありません。」
「ドルザッグ、学校から連絡がありました。あなたはフェリオ王子殿下のお友達を魔法で攻撃したために、王子殿下のお怒りを買い、王子殿下に魔力で拘束され、失神したと言うのは本当ですか?」
「はい。母上。その通りです。しかし、殿下はあの後ぼくに付き添って下さり、謝ってくださいました。殿下はとてもお優しい方でした。」
「あなたは何てことをしてくれたのですか。おまけに殿下に謝罪までさせたと言うのですか?」
「はい。母上。そうですが、如何なさいましたか?」
「あなたは事の重大さが分かってないようです。もうすぐ父上が戻られます。あなたは反省してなさい。誰か、ドルザッグを地下室に連れて行きなさい。出してはなりません。」
オレは使用人に連れられ、地下室に閉じ込められた。
入り口で使用人が見張っている。理由が分からない。
『オレは、そんなに悪いことをしたのか?』
確かにオレは殿下のお友達を魔法で締め上げたが、すぐに殿下に魔力で拘束され、魔法は解けた。殿下のお友達は怪我をしていない。むしろ殿下の魔力で失神したのはオレだ。失禁までしてしまった。オレも悪かったが、殿下も悪かったと謝ってくれた。それがそんなに悪いことだったのだろうか?
地下室に父上がきた。
「ドルザッグ、お前はフェリオ王子殿下のご学友を魔法で攻撃したと言うのは本当か?」
「はい、父上。ですが、ぼくはフェリオ王子殿下に魔力を拘束され魔法はすぐに解けました。そして、ぼくは失神してしまいました。失神したぼくにフェリオ王子殿下は付き添って魔力を送って下さり、謝ってくださいました。」
「なんだと。お前は殿下にそんなことまでさせたのか?お終いだ。我がフラインダー侯爵家はもう終わりだ。私は、イーデアル公爵様にも、一族にも顔向けできない。」
「えっ?どう言うことですか?」
「お前はまだ自分のしでかしたことが分からないのか?お前は次期国王になられる予定のただ一人の王孫王子フェリオ殿下のご学友を傷つけたのだぞ。それだけでも罪は重い。しかも、それにお怒りになられた王子殿下は魔力を暴走された。その時、殿下とお前の近くにいたのは誰だ。イーデアル公爵家のご令嬢をはじめとするお前の同級生の四星の三人と聞いている。」
「はい。その通りです。」
「殿下の魔力暴走でその三人も失神したのだぞ。幸い何事もなかったが、何かあったらお前はどう責任とるのだ。お前を廃嫡しても、フラインダー侯爵一族全てを差し出しても、とても贖えるものではない。」
「その三人も殿下の暴走をお止め出来なかったとして、保護者が責任を問われておる。そして、一番の問題は、殿下の暴走を魔法攻撃でお止めしたサラ・マ・ヨーデキール教授だ。」
「えっ?サラ・マ・ヨーデキール教授って?まさか、あの?」
「侯爵家の中でも一番格上ヨーデキール侯爵一族が誇る本家の天才三姉兄妹の末子、あの有名なサラ教授だ。お前の学校では、サラ・レリ・ワトソン先生だ。サラ教授は、殿下を魔法攻撃した者として処分されるかも知れぬ。」
「そんな…。」
「学長も、副学長も、殿下のご学友も全て殿下の魔力暴走の責任を問われておる。なのに、その元凶のお前は殿下に謝罪までさせたと言うのか。」
父上に怒鳴られ、漸く事の重大さに気付いたオレは必死で謝った。体がブルブル震え涙が溢れだす。
「申し訳ありません。父上、母上。ぼくはそんなに問題になっていると思いませんでした。」
「ドルザッグ、お前はここで謹慎していろ。今日の夜、殿下の後見人、イーデアル公爵様から今回の件の処分が下される。我がフラインダー侯爵一族は、処分を受け入れ、全てを差し出す覚悟でいる。」
母上が泣いている。使用人も、全ての者が下を俯いて泣いている。オレがしたことは、ここにいる全ての者を悲しませ、そして、一族や、サラ先生、学校、同級生、みんなに迷惑をかけてしまった。
「うわあああ。」
泣けば済む問題ではない。分かっている。分かっているがオレは泣くことしか出来なかった。




