48.新学年 SIDE:ドルザッグ1
『あれ?ここは何処だろう?』
失神していたドルザッグはぼんやりと意識を取り戻しつつあった。
暖かい優しい魔力に包まれている。ぽかぽかとした心地よい魔力だ。
『女の子?誰だろう?凄くかわいい。』
見たことのないとてもかわいい女の子がオレを見ている。オレを心配してくれているみたいだ。この魔力は、この女の子の魔力だろうか?暖かくて凄く安心する。オレはしばらくこのかわいい女の子の魔力に微睡んでいた。
…魔力?そうだ。オレは、王子殿下の怒りの買い、魔力を拘束されてしまった。殿下の魔力は恐ろしいほど膨大で、どうすることも出来ずに失神してしまった。王子殿下に謝罪しなくては。
ぱっと目を開けると、オレの目の前にいたのは、フェリオ王子殿下だった。殿下は、オレの手を握り、魔力を送ってくれていた。あの優しい魔力は、殿下の魔力だったのだ。
殿下は、とても悲しそうな表情をしていた。
『えっ?涙?』
殿下は、目に涙を浮かべている。オレのことをそんなに心配してくれていたのだろうか?
「気付いた?良かった。ごめんね。ぼく、怒って思わず魔力を拘束しちゃったんだ。遣り過ぎたって思ってる。本当にごめんなさい。」
「いえ、殿下。悪いのはオレいやぼくです。ぼくが殿下の友達を傷つけてしまったから。殿下がお怒りになったのはぼくが悪かったからです。申し訳ありません。あの二人は大丈夫でしたか?」
「あっ、うん。大丈夫だよ。ぼくの方こそごめんね。失神してしまうほど君を傷つけてしまった。」
「いえ。大丈夫です。殿下はぼくに魔力を送ってくれていたのですね。ありがとうございます。」
「うん。ぼくのせいだから。」
ニコッと笑ったフェリオ王子殿下がオレには…
さっきのかわいい女の子に見えて、ドキドキしてしまった。
殿下は…
男児にしては少し長めの髪。
女児が騒ぐほどの中性的な甘い顔のイケメン。
笑ったお顔は…かわいい女の子みたいだ。
って違う。何を考えているんだ、オレは。殿下は、男だ。男がかわいい女の子に見えるなんて。オレはどうかしている。失神した影響なのだろうか?
ブルブルと頭を振って赤くなった顔を誤魔化す。
『殿下は、オレのために魔力を送ってくれていた。
殿下は、オレのために心配して手を握ってくれた。
殿下は、オレのために心配して目に涙を浮かべていた。
殿下は、殿下は…』
って違う。いや、違わないけど。オレは何を考えている。殿下は男だ。男を好きになってはいけない。いや、別に男友達を好きなのは普通なのか?いや、好きにも色々種類が。
頭の中はぐちゃぐちゃ、胸はどきどき。
オレは、殿下を…男を好きになってしまったのだろうか?
いやいやいやいや、ないないないない。
「どうしたの?大丈夫?」
「大丈夫です。ありがとうございます。えっ?」
頭を下げたオレは、自分が体操服を着ていることに気付いた。
「えっ?何で?」
「あっ、制服なら、汚れちゃったから、保健室の先生が着替えさせてくれていたよ。体は拭いてくれていたけど、シャワー浴びた方がいいかもよ。汚れた制服は、ここだよ。」
バスケットにはオレの濡れた制服が置いてあった。
「水洗いだけだから、家でちゃんと洗ってもらってね。」
オレは、失神して、失禁して、着替えさせられたようだ。
恥ずかしくて、顔が真っ赤になった。
「えっと、保健室の先生とぼくだけしか見てなかったから安心して?」
殿下の一言で、オレはますます赤くなってしまい、しばらく立ち直れなかった。




