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46.新学年

フェリオは、初等学校の二年生になった。

クラス替えがあり、一番仲良くしていた、ジンクス、アーロンとは違うクラスになった。

そして、サラ先生も。サラ先生は、担任クラスを持たない二年生の学年主任の先生になっていた。


初等学校の二年生になると、午前中は各クラス毎の授業だが、午後の授業は選択授業で、MR毎に別れての魔法の授業か、体育の授業だった。


フェリオは魔法の授業を選択したが、五星は一人なので四星の児童と一緒に授業を受けることになった。

二年生のMR四星の児童は、四人。

フェリオの叔父カルロス・マ・イーデアル次期公爵の長女で、フェリオの従兄妹レリーリアラもその内の一人だった。


「フェリオ王子様、お久しぶりですわ。初等学校の三年間、普通のクラスでは同じクラスになることはおそらくないと思いますが、MR別魔法授業はご一緒ですわね。よろしくお願いいたします。」


選択授業を受けるため移動した教室で従妹のレリーリアラ公爵令嬢に話しかけられた。


「ああ、レリーリアラ。久しぶりだね。一年生の時は、クラスが違ったからあまり会わなかったね。こちらこそよろしくね。」


レリーリアラの後、後の三人の四星が挨拶してくれていた、その時、

「「おーい、フェリオくーん。」」

廊下から教室の窓に身を乗り出し、アーロンとジンクスがフェリオを呼んだ。

「いたいた、フェリオくん。今年は同じクラスになれなくて残念だったね。来年はまた同じクラスになりたいな。…えっ?うぐっ?」


アーロンとジンクスの異変にフェリオも気付く。


「貴様ら、ライラック子爵家のアーロンと、誰だか知らないが、王子殿下を廊下から呼んだ上に、その言葉遣いは何だ。」


フラインダー侯爵家嫡男ドルザッグが二人を魔法で締め上げていた。


「止めろ。ぼくの友達に何をする。」


友達を魔法で傷つけられたフェリオは、ドルザッグの魔法の源である彼の魔力を自分の魔力で拘束した。

アーロンとジンクスを締め上げていたドルザッグの魔法はすぐに解けたが、フェリオは、魔力拘束を止めない。


「うっわぁぁ。」

魔力を拘束されたドルザッグはうめき声をあげてうずくまり、痙攣して倒れ立ち上がることも声を出し赦しを乞うことも出来ない状態になった。

フェリオから駄々漏れしている魔力に、近くにいる四星の三人の子供たちは、声を出すことも動くことも出来ない。


「フェリオくん、オレたちは大丈夫だから、もう止めて。」

「フェリオくん、フェリオくん。」

「フェリオくん、もう許してあげて。」

「フェリオくん、フェリオくん。」


廊下からジンクスとアーロンが必死でフェリオを呼ぶが逆上したフェリオに二人の声が届かない。


サラ先生が慌てて走ってきた。

廊下を走ってはいけません…なんて悠長なことを言っている場合ではない。


「フェリオくん、止めなさい。フェリオくん。」

既に大人の五星以上の魔力を持つフェリオに、四星半とはいえサラも近付けない。声も届かない。


サラは、仕方なく、魔法でフェリオを攻撃した。

自分に気付いてもらうための苦肉の策だった。


「…サラ先生?…ぼくは?」

サラに気付いて正気になったフェリオは、魔力拘束を解いた。

ドルザッグは、失神していた。失禁も。


残りの三人の四星の子供たちも失神していた。四人とも保健室に運ばれた。


フェリオは、二年生になって早々やらかしてしまった。


この事件は、学校から王宮に連絡がいき、フェリオの後見人、母方祖父のゴルディオは学校に行くことになった。


学長、副学長、サラ先生、ゴルディオ、ドルザッグの父親に加えて、その場にいた四星三人の子供の保護者、アーロンとジンクスの保護者で話し合うことになった。


初等学校は、皆平等、保護者も皆平等。しかし、王族は別。フェリオは、次期国王となる予定の大切なただ一人の王孫王子である。


「申し訳ありません、ゴルディオ・マ・イーデアル公爵様。私たちの管理が行き届かず、フェリオ王子殿下にはたいへんお辛い思いをさせてしまいました。」

学長、副学長が謝罪する。


「申し訳ありません、ゴルディオ・マ・イーデアル公爵様。フェリオ王子殿下を正気に戻すためとはいえ、魔法で殿下を攻撃してしまいました。如何なる処分も覚悟しています。」

サラ先生も謝罪した。


ドルザッグの父親のフラインダー侯爵は、廊下で土下座したまま、話し合い室にすら入って来ない。

「申し訳ありません。息子が王子殿下のご学友を傷つけたのが原因です。息子は、廃嫡し、謹慎させています。息子の不始末は私が負います。私を処分して下さい。」


「父上、本来なら我々の息子娘達が王子殿下をお止めするべきところ、王子殿下の魔力があまりにも大きく、子供たちの手には負えませんでした。子供たちにはもっとよく精進するように教育しますのでお許し下さい。」

ゴルディオの息子カルロス・マ・イーデアル次期公爵がその場にいた四星の三人の子供の父親を代表して謝罪した。


「イーデアル公爵様、息子アーロンは、フェリオ王子殿下と日頃より仲良くしていただいています。ありがとうございます。ここのジンクスの父親とも話し合いましたが、フェリオ王子殿下は、アーロンとジンクスを守っていただいたにも関わらず、殿下をお止めすることが出来ず、申し訳ありませんでした。」

ライラック子爵にも謝られた。


ゴルディオは、今回の事件の責任問題を問い、関わった者(保護者)に処分を下すために学校に行ったのだ。

王子殿下の友達を傷つけて、王子殿下の怒りを買い、魔力暴走を引き起こした。その責任は、ここに集まっている者全てが負う。全員がフェリオの後見人のゴルディオ・マ・イーデアル公爵が下す処分に従う覚悟だ。


「皆さん、顔を上げて下さい。私は、ここに来る前に、フェリオ王子殿下と話をしました。フェリオ王子殿下は、我を忘れて魔力で拘束してしまったことを反省しておられます。既にお気付きとは思いますが、殿下は五星でも桁外れの膨大な魔力をお持ちです。普段、あのように暴走したりはなさらないのですが、まだ子供故に殿下自身もその魔力に飲まれてしまったのかも知れません。

サラ先生、処分など、とんでもない。殿下の暴走をお止めしていただいて感謝しております。サラ先生がいなければ、フラインダー殿の子息だけでなく、その他の者たちまでどうなっていたか分かりません。

フラインダー殿、殿下は既にご子息に謝罪され、和解しております。廃嫡せず謹慎も解いてあげて下さい。

その他の子供たちも、殿下はご迷惑をおかけしたと謝っていらっしゃいます。処分なんて望まれておりません。殿下は、皆さんの子息ご令嬢と仲良くしたいと思っておられます。殿下をよろしくお願いいたします。

学長殿、子供同士のちょっとしたトラブルです。わざわざ皆に集まっていただくほどのこともなかったくらいです。皆さんも、それでよろしいでしょうか?」


「はい。学校側に異存はありません。ありがとうございます。イーデアル公爵様。」


「「「「ありがとうございます。イーデアル公爵様。」」」」


円満解決にすることで、話し合いは終了した。

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