39.思わぬ…広がり 1
10の月の月末、フェリオの学校は、音楽発表会があった。
各クラス毎に、課題曲と自由曲を歌い、最期に学年全員で色々な楽器を演奏するのだ。
音楽発表会は、保護者も見に来る。
二人の祖母が来てくれることになっていた。
当日、たくさんの貴族のご婦人たちが鑑賞していた。
フェリオの二人の祖母たちも、貴族のご婦人たちに混じって鑑賞していた。
『お聞きになりました、奥様。フェリオ王子殿下には、好きな女児がいるらしいですわよ。』
『ええ、聞きましたわ。同じクラスでMRが三星以下の女児らしいですわね。』
『そのうわさなら私も聞きましたわ。好きな女児を見つめ、ため息をついていらしたらしいですわ。』
『そうそう、周りの男児たちで、フェリオ王子殿下をお慰めしたらしいですわよ。』
『まあまあ、フェリオ王子殿下のご学友は皆お優しいですわね。』
フェリオの恋話は、貴族のご婦人方のいい話のタネになっていた。
そう、そのタネの提供者は、彼女達の娘達。
フェリオのクラスメートの女児達だった。
フェリオが知りたいと思った女児達の話の内容は、『フェリオ王子様』だった。フェリオがため息をつき、机に突っ伏していたことだった。そして、フェリオは、女児達を見つめ、またため息。王子様に見つめられた女児達が顔を赤くすると、王子様は、ニコっと笑い、また女児達を見つめた。恥ずかしくなった女児達がフェリオから目を反らしたのも無理はない。
フェリオ本人は、全くそんなつもりはなく、ため息の理由も全然違う。
しかし、あることないこと、うわさ話はどんどん広がっていく。
自然と二人の祖母の耳にも入ってくる。
「王妃様、フェリオ王子様には好きな女児がいるみたいですわよ。」
「ええ、複雑ですわ。フェリオは、男児と言えば男児ですから。」
「王妃様、フェリオ王子様は、男児ですわ。それに、エドガー陛下とマリアンヌは初等学校に入る前から仲良くしてましたわ。」
「あの二人はそうでしたわね。フェリオのお相手は三星以下らしいですので、残念ですわね。」
「ええ、三星以下ではご側室さえも無理ですわ。お諦めするしかないですわね。」
「側室と言えば、フェリオには複数の妃をと言う者が多くいますのよ。」
「王族の王子様は、フェリオ王子様だけと言うことになってますから、公式では…。」
「ええ、あのうわさ話ですわね。ほぼ間違いないらしいですわね。」
貴族の女性達は、うわさ話が好きであった。
自分の子どもたちの音楽発表会よりも。
二人の祖母たちは、フェリオの発表中は、きちんと聞いていたが、周りのご婦人たちはずっとうわさ話で盛り上がっているようだった。
『子どもたちの発表中は、お静かにお願いいたします。』
サラ先生のアナウンスで漸く静かになったほどであった。
フェリオの恋話は、祖父の国王ジャンにも届いた。
王妃からだが。
「フェリオの相手は、だいたい決まっておる。可哀想だか、諦めてもらうしかない。しかし、フェリオの相手を勝手に決めるのもなんだか可哀想になってきたな。将来の王妃になる者なので、フェリオと年齢が近く侯爵家以上の二、三人くらいを限定して考えていたが、もう少し範囲を広げるとするか。」
フェリオの婚約者候補は、伯爵家以上で四星以上ならば、年齢制限なし、人数制限なしと大幅に拡大した。




