38.思わぬ…失恋??
三学期が始まった。
フェリオは、新学期初日のサラ先生の表情が気になっていた。
自分が本当は女児であることをサラ先生は知らないと思っていた。しかし、侍女長エルザは、数時間ではあるがフェリオが女児の姿になれることまでサラ先生は知っていると言っていた。
『サラ先生は、ぼくのことをどう思っているのだろうか?』
フェリオは、普段と変わらず授業をし、自分やクラスメートと接しているサラ先生をなんとなく見ていた。
『個人的に話をしてみたいし、聞きたいこともあるけれど、学校では無理だよね。はぁ~。』
……
「フェリオくん、どうしたの?体調でも悪いの?」
いつの間に休み時間になっていたのだろうか、ジンクスが心配して話かけてきた。
「えっ?いや、別に大丈夫だよ。ちょっと考え事をしていたんだ。」
フェリオは慌ててそう答えた。
「フェリオくん、悩み事?オレも、フェリオくんが机に突っ伏してため息ついていたから心配していたんだ。いつものフェリオくんらしくないよ。何かあったの?」
アーロンもフェリオを心配していたようだった。
「何、何?フェリオくん、悩み事があるの?オレたち、相談にのるよ。」
クラスメートが集まってきた。
「いや、別に、たいした理由はないよ。ちょっと気になることがあるだけだから。」
ここでまた新な事実にフェリオは気付いてしまった。
自分を心配して集まってきたクラスメートは全員男児だった。
自分は、男児の姿で男児として学校に通っているから、当たり前と言えば当たり前かも知れないが、女児が一人もいない。
ちらりと、クラスメートの女児を見ると、女児は女児のみでいくつかのグループになって話をしていた。
「はぁ~。」
二学期末休みの間、半分くらい王女として過ごしていたフェリオは、複雑な気持ちになった。
女児らしく、王女らしくと言葉遣い等頑張ったが、一番の問題を発見してしまった気がしてきた。
自分は、いや、フィオナは、あの既に出来上がっている女児のグループに新たに入っていかなければならない。しかも、自分は、女児として同じ年頃の女児と女児っぽい会話をしたことがない。何を話せばいいのか分からない。
フェリオは、女児が普段何を話しているのかが気になり始めた。
『女の子って、何話しているんだろう?自分は女児のくせに女の子が分からない。グループに入っていくどころかどう接したらいいのかさえ分からない。』
「はぁ~。」
フェリオは、またため息をついた。まだ四、五時間程度しか女児の姿になれないフィオナが学校に女児として通うのはまだ先だ。だが、まだ先だからこそ、男女の違いがはっきりしてくる。男児は男児、女児は女児の同性の仲のいい子で既にグループが出来てしまっているだろう。フィオナは、どうしたらいいのだろうか?誰と仲よくしたらいいのだろうか?貴族だろうか?平民は、フィオナと友達になってくれるのだろうか?
フェリオは、憂鬱になってきた。
「フェリオくん、もしかして、あの中に気になる女の子でもいるの?」
「えっ?」
全然違うのだが、ジンクスの一言をきっかけに、フェリオの周りで男児たちが盛り上がる。
かわいいと思う女の子の話になり始めた。
「やっぱり、◯◯ちゃんが一番かわいいよね。」
「△△ちゃんもかわいいと思う。」
「……。」
男友達が次々と女の子の名前を言っている。
フェリオは、クラスメートの女児の容姿にはっきり言って興味がなかった。かわいいとか考えたこともなかった。なので、女の子の容姿で盛り上がる男友達に驚く。
『かわいい子?初等学校の一年生なのにみんな異性に興味持つんだ?』
男友達が言っている名前の女児を何人か見る。じっと見つめると、自分の視線に気付いた数人の女児の顔が赤くなった。顔の赤くなった女児は自分と目を反らす。
『へぇ~、みんなかわいいね。』
フェリオがそう思っていたら、アーロンが、
「フェリオくんは、五星の王子様だから、相手は四星以上じゃないとダメなんだよね。好きな女の子がいても、その子が三星以下なら難しいんだよね。」
「そうか、それでため息ついてたんだね、フェリオくん。」
「フェリオくんは、好きになってもその子に好きって言えないんだ。元気だしてね。フェリオくん。そのうちいいことがあるよ。」
「フェリオくん、頑張れ。」
「そうだよ、フェリオくん、元気出して。」
「えっ?あっ、うん?」
フェリオは、いつの間にか、好きな女の子がいるのに告白出来なくて悩んでいることになっていた。そして、叶わぬ恋として、失恋したことになっている。
全然違うのだが、周りの男友達が一生懸命自分を励ましてくれているので、とりあえず、『ありがとう。』と返事をしておいた。




