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【閑話:3】37.幼い二人の恋心 2

エドガー王子殿下の誕生日パーティー当日になった。

最初に父に連れられ、王子殿下に挨拶をして以降、マリアンヌは父との約束通り王子殿下に近付かなかった。


親に連れられてきた貴族の子息令嬢たちの挨拶が一通り終わったのか、殿下は子供たちに囲まれていた。その中には、マリアンヌの友人たちもいる。

『私だけ近付いてはいけないなんて、つまらないわ。』

マリアンヌは一人テラスに出て、悲しい気持ちになった。

『お父様なんて大嫌い。お父様のせいで、私、仲間外れよ。』

来春の1の月から王立初等学校に通う予定のマリアンヌは、学校に行っても自分一人仲間外れになってしまう気がして、目に涙がたまってきたのを溢れ出さないように必死で我慢していた。



「一緒に遊ばないか?」

突然声をかけらて、驚いて振り返ったマリアンヌの前にエドガー王子殿下が一人いた。

「鬼ごっこをして遊ぶことになった。鬼は、オレだ。みんな逃げたぞ。オレと一緒にみんなを探すのを手伝ってくれないか?」

ニコニコと笑って手を差し出す王子殿下の手を、マリアンヌは父の言い付けを忘れて取ってしまった。


「行くぞ。」

マリアンヌと手を繋いだまま、エドガー王子殿下は駆け出した。

そして、次々と子供たちを捕まえていく。

マリアンヌは、楽しかった。厳格な父に常に令嬢らしく淑女らしくと厳しく育てられたマリアンヌは、他の子供たちと遊ぶ時、いつも一歩引いて、無邪気に走り回って遊んだりしなかった。


「捕まえた。あはは。また捕まえたぞ。よし、次はあの者だ。」

また走り出そうとするエドガーに遊び慣れてないマリアンヌはもう限界だった。

『楽しい。楽しいけど、もう無理、走れないわ。』

「殿下、お待ち下さい。私、もう走れませんわ。」


はぁはぁと一生懸命呼吸しながらそう言ったマリアンヌにびっくりしたエドガーは慌てて、

「あっ、すまない。夢中になってついお前のことを考えずに走ってしまった。許してくれ。」

「いえ、殿下。殿下についていけない私が悪いのです。申し訳ありません。」


「いや、悪いのはオレだ。ちょっと待っててくれ。」

エドガーは近くにいた子供に声をかけ、何かを話し、マリアンヌのところに戻ってきた。


「あの者に鬼ごっこは終わりだとみんなに言ってもらうことにした。もしよければ、オレと一緒に来ないか?さっき無理をさせたお詫びに王宮を案内しよう。」

エドガーは再びマリアンヌの手を握ると、ニコニコと笑って、今度はゆっくり歩き出した。


エドガーとマリアンヌはいろんなことを話しながら歩いた。

「今更だが、お前の名前は?」

「マリアンヌ・マ・イーデアルと申します。」


「あっ、お前、ゴルディオ・マ・イーデアル次期公爵のところの。」

「はい、そうです。」


「そうか、さっき挨拶に来てくれた時、ゴルディオが恐くてお前の顔をよくみてなかった。すまない。」

「父が恐いのですか?」


「オレの魔法の先生だ。だが、魔法だけでなく、オレのすることとに一々説教をする。父上や母上、行儀作法の先生より口煩いぞ。」

「お父様は、殿下にまで説教をするのですか?」


「ああ、会えば必ず何か文句を言われる。だから、出来るだけ目を合わさず、大人しくすることにしている。」

「うふふ、私もです。父は何かと煩いのでそうしてますわ。」


「そうか、お前もか。苦労するな。あっ、いや、すまない。お前の父親の悪口ではないのだぞ。」

「わかってますわ。それだけ聞けば父が殿下にどう接しているのか想像つきますもの。」


「そうか、なら、安心した。お前の父親のことを悪くは言わないぞ。オレは。しかし、お前はゴルディオに全く似てないな。カルロスはゴルディオにそっくりなのに。」

「私は母親似ですので。」


「よかった。」

「えっ?」


「いや、オレはまたよけいなことを。ゴルディオにもしょっちゅう思ったことをすぐ口にするなと怒られるのに。」

「はい?」


「お前をとてもかわいいと思ったのだ。名前で呼んでもいいだろうか?オレのことは、殿下ではなく、エドと呼んでくれ。」

「私のことは、お好きなようにお呼びしていただいて結構ですが、殿下のことを愛称ではお呼び出来ません。」


「え~~~。」

露骨にがっかりするエドガーを見て、マリアンヌは少し笑ってしまった。


「じゃあ、エドガーって呼んでくれ。」

「殿下を呼び捨てにできませんわ。」


「殿下なんて他人行儀じゃないか。イヤだ。名前で呼んで欲しい。」

「エドガー様ではいけませんか?」


「う~~、『様』なんて要らないが、マリアンヌを困らせたらダメだからそれでいい。」


「うふふ。」

「あはは。」


幼い二人はあっという間にとても仲良くなり、初等学校を卒業する頃には、マリアンヌは、エドガーの婚約者の第一候補と言われるようになった。

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