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【閑話:3】36.幼い二人の恋心 1

『まただわ…』

七歳になったばかりのマリアンヌは、うんざりしていた。

父が異母弟のカルロスを叱る声が聞こえてくる。


マリアンヌの父親は、東西南北四大公爵家筆頭、東の公爵家イーデアルの次期当主ゴルディオ・マ・イーデアル。父は、近い将来祖父から爵位を譲られ領地に戻る予定ではあるが、祖父はまだまだ元気。父は、次期当主のままもうしばらく王都で王宮仕事だろう。


『お父様なんて、早く領地に行けばいいのに。』


父は、何かにつけて口煩い頑固な男だった。


『口答えはしてはならぬ、父の言う通りにせよ。』

父は、問答無用で命令し、従わせ、ああしろ、こうしろと行動の一つ一つに口出ししてくる面倒くさい男だった。


「はい、お父様。」

マリアンヌは、必ず『はい』と返事するように命じられていた。


でも、どちらかと言えば自分は第一子にしては、まだマシだと思っている。

父は、一つ年下の異母弟カルロスにマリアンヌ以上に厳しく接していた。

「カルロス、お前は四星とは言え、イーデアル家の嫡男だ。他家に侮られてはならぬ。魔法も勉強も剣術もその他も全てにおいて他家の四星には負けないように努力しろ。」

「はい、父上。」

異母弟もマリアンヌ同様、必ず『はい』と返事をしていた。


第一夫人のマリアンヌの母も第二婦人の異母弟の母も、父に意見することは許されず、父の独裁だった。


『はぁ~~。』マリアンヌは憂鬱だった。

来週王宮で催される、エドガー王子殿下の七歳の誕生日パーティーに出席することになっていたのだが、父から、『エドガー王子殿下に近付いてはならない。』と言われていたのだ。


『王子殿下に取り入ろうと、まとわりつく輩は見るに耐えない。お前は、最低限の挨拶だけにしろ。間違っても殿下に気に入られるな。』


訳が分からない。王宮で催されるパーティーは、今回だけでなく、他にもいくつかあった。だが、父は、全てマリアンヌが行くことに反対した。

そのせいで、マリアンヌは未だ王宮のパーティーに行ったことがなく、友人の令嬢たちの話題についていけない。

別に王子殿下に気に入られたいとは思っていない、友人たちのようにパーティーに行ってみたいだけなのに。


「わかったな、マリアンヌ。」

父にそう言われると、

「はい、お父様。」

マリアンヌは、そう答えるしかなかった。

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