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31.新しい部屋

二学期末休み、フェリオは、新しい部屋に引っ越した。

といっても、少し移動するだけで、荷物は全て運び込まれていた。


祖父と祖母に呼ばれていたので、先に祖父のところに行く。

祖父と二学期末休みの予定を確認する。午前中はフェリオとして過ごし、午後からフィオナとして過ごすものだった。

午前中、フェリオの姿で勉強と剣術の稽古。

フィオナ(実際はいない)は自室で自習。

午後、フェリオ(実際はいない)は自室で自習。

フィオナの姿で、マナーレッスン(言葉遣い等)、魔法の練習。


今度は、祖母のところに行くと、フィオナの姿になるように言われ、着替えを渡される。別室に移動し、フィオナの姿になり、フェリオの服からフィオナの服に着替える。部屋着のような簡単な服だったのですぐ着替え終わる。祖母の侍女を呼ぶ。

侍女は、フィオナに女児用のドレスを着せて、鬘と軽く化粧をし、フィオナを祖母のところに連れて行ってくれた。


祖母のところには、見たことのない侍女たちがいた。

「紹介しますね、フィオナ。侍女長エルザとあなた専用の侍女と護衛ですよ。」

代表して侍女長が挨拶をし、フィオナ専用侍女と護衛の紹介をしてくれた。


祖母のところを後にしたフィオナは、侍女たちに連れられ、部屋に移動した。

フィオナの部屋の前には更にたくさんの侍女がいた。


「「「「お帰りなさいませ、フィオナ王女様。」」」」

侍女たちが一斉にそう言って、礼をとる。


「王女様、こちらでございます。」

フィオナの部屋に入る。侍女たちがぞろぞろとついてくる。

控え室に入ると侍女長エルザが他の侍女を紹介してくれた。

侍女長エルザとフィオナ付きの侍女と護衛のみ、フィオナの部屋に入る。他の侍女は控え室で待機だった。


侍女長エルザがフィオナに話かける。

「フィオナ姫様、姫様とフェリオ王子殿下が同一人物とお伺いしております。このことを知る侍女は、私達のみです。フェリオ王子殿下の侍女も知りません。」


「えっ?あっ、やっぱりそうなの?ぼくの侍女は知らないみたいな感じだったんだ。だから、ぼくは誰も知らないと思ってた。どうやって二重生活をしたらいいか困ってたんだ。ちょっと安心したよ。」


「フィオナ姫様、王女殿下とあろうお方が『ぼく』はいけません。お言葉遣い等、淑女としてのマナーは、この私が姫様にお教えすることになっております。これから先、間違っても『ぼく』などとご自身をお呼びにならないようお気をつけ下さい。」


「はい。」

侍女長エルザにいきなり注意されてしまった。


エルザは、部屋の説明をしてくれた。

基本的にフェリオの部屋と同じだったが、内装は全然違っていた。

フェリオの部屋は、男児の部屋らしく、グリーンをベースとしたシンプルな色合いと模様の壁紙とナチュラルカラーの家具だった。

フィオナの部屋は、ピンクと白のフリフリレースの空間が広がっていた。

衣装室は、フェリオの倍の広さ。ずらりとドレスが並んでいた。

フェリオの部屋にある更衣室は、フィオナの部屋では化粧室のようで、衣装室同様、フェリオの倍の広さ。コスメ品が並んでいた。


フェリオとの違いにフィオナは驚いたが、

『どうしてだろう。嫌じゃないかも?』

と思ってしまった。


そう言えば、フェリオの時は、女児の服(特にドレス)を着るのは嫌だった。

でも、フィオナになってみると、女児の服も、フィオナの部屋も嫌じゃないし、かわいいと思ってしまう。


フィオナがなんとなくフェリオの時と違う感覚になってしまうことに、違和感を覚えていると、

「姫様、如何なさいましたか?」

突然、侍女長エルザに声を掛けられ、はっっと我にかえり、慌てて、

「あっ、何でもないよ。じゃなかった。えっと、何でもないですわ?かな?」

そう答えると、

「フィオナ姫様、姫様のデビューはまだまだ先ですね。」

エルザの言葉に、また少し凹んだフィオナだった。

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