【閑話:2】27.サラに苦労する学長 3
次の年、サラ先生は学長を辞任されました。そして、学長に返り咲いた私。副学長を務めた一年間で体重と髪が少し減った気がします。でも、見た目はそれほど変わらないので、私の気のせいかもしれません。
サラ先生には、ご希望通り一年生のフェリオ王子殿下のクラスの担任になっていただきました。私たち初等学校職員も、初等学校教育管理局も、もちろん叔父上のセドリック・レリ・ヨーデキール先生も誰もサラ先生に異を唱える者はいませんでした。
無事に今年の入学式が終わり、ほっとして学長室で少し休んでいるところにサラ先生がいらっしゃいました。私は、慌てて立ち上がり、サラ先生に席を譲ろうとしました。
「要りませんわ。そんな席。お話があってここにきたのよ。フェリオ王子殿下が初等学校の間は王族特別扱いはなしで、みんなと平等に扱ってほしいそうですわ。今すぐ、そうする許可を下さい。」
「私の一存で許可するのは無理です。初等学校教育管理局の許可を頂かないと。」
「そう言うと思ってましたわ。今すぐ、管理局に確認をとって下さい。なんなら私が行ってもいいですわよ。その方が早いかしら。」
「いいえ。サラ先生のお手を煩わせるまでもございません。私が今すぐ行って参ります。ええ。すぐに行ってきます。私は以前、そこで働いてましたので、知り合いもいます。必要な書類もあちらで用意致します。」
「そう?じゃあ、超特急でお願いできるかしら?」
「はい、お任せ下さい。今すぐ行って参ります。」
私は後のことを副学長に任せると、急いで初等学校教育管理局に行きました。昔同期だった彼を呼び出し、先にサラ先生のご希望を伝えました。彼は、私の書類の提出を待たずにバタバタとあちこちに連絡して回っているようでした。
私は応接室で書類を作成し、再び彼に会い、書類を手渡すと彼は、
「明日まで待ってくれないか?許可が降り次第こちらから連絡する。」
「よろしく頼む。」
「ああ、任せろ。王族に関することだから、かなり上の承認が必要だが急いでご希望に添えるようにする。」
前回、私と同じように痛い目をみた彼の迅速な対応に感謝し、初等学校教育管理局を後にしました。
翌日、彼の言葉通り、異例の早さで許可が下りました。サラ先生には、すぐにそのことを伝えました。とても喜んでいただけたようで、私もひと安心しました。
……
あれから、三ヶ月半。今日、無事に一学期末終業式を迎えました。
サラ先生のクラスは、
一学期中間テストで、クラス全員がほぼ満点という開校以来の快挙を成し遂げ、学年順位は、ダントツ一位。他の一年生のクラスのクラス平均点は、ほぼ例年通りでしたので、テストが簡単だったわけではないようです。
凄すぎます、サラ先生。いったいどのような授業をすれば、クラス全員の学習能力が向上するのでしょうか?凡人の私では、きっとたどり着けない境地なのでしよう。そう、神、神ですか?サラ先生。あなたは神なのでしょうか?願わくば、私の髪もどうにかして欲しいくらいです。薄毛になったように感じるのは、気のせいと思いたいです。
「私のクラスの子供たちが、一学期に誕生日だった子全員の合同誕生日パーティーをしようと計画してますの。素敵でしょう?なので、三の月の二週目全部授業をなくして、準備とパーティーをしますわね。オヤツも許可しましたわ。オヤツもお弁当みたいなものですから。子供たちには、もう許可した後ですが、一応聞きますわね。学長の許可って必要かしら?」
「いえ、大丈夫です。サラ先生のご指導が素晴らしいのは、中間テストで証明されています。子供たちの計画ですか?自分たちで企画するとは、とても一年生とは思えないほど優秀なクラスですね。」
「あら、そう?じゃ、自由にするわね。」
「はい。わざわざご報告ありがとうございます。」
事後報告、大歓迎です。むしろ、いつでもそうしてください。私だけでなく、他の職員も皆、サラ先生に異を唱える者なんておりませんから。
「素晴らしいお誕生日パーティーだったわ。特にフェリオ君のパフォーマンスは素敵でしたわ。」
よかったです。サラ先生。王子殿下も子供たちもきっと満足されていることでしょう。
「来週から授業再開だけど、勉強なんかつまらないって思われないか心配だわ。」
ご冗談を、サラ先生のクラスの子供たちに限って、そんなことを思う子はいないはずです。
…そして
一学期の期末テストでもサラ先生のクラスの順位はダントツ学年トップ。クラス全員好成績を修めたのでした。




