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【閑話:2】25.サラに苦労する学長 1

 私は、クーロス・レリ・カイノート。

王立王都第一初等学校の学長を勤めています。

カイノート伯爵家の次男として生まれた私は、高等学校を卒業後、王国初等教育管理局の局員として働いていました。

十年前に王立王都第一初等学校の副学長に任命され、さらに五年前には学長に任命されました。

学長に任命されてから、特に何の問題もなく、平穏無事の日々を過ごしていました。ところが、一昨年、王立王都第一高等学校魔法学部魔法医療学科の教授サラ・マ・ヨーデキール先生が我が初等学校に転勤を希望されたのです。


 サラ先生と言えば、

あらゆる部門の魔法学の権威ヨーデキール一族本家の侯爵家が誇る天才三姉兄妹の末子で、魔法医学の第一人者。

この国の魔法医学研究には欠かせない人物のはず。

なぜそのような方が我が初等学校に、しかも、担任教師を希望されてるとは。


 私は、サラ先生の対応に困りはて、サラ先生の叔父上、王立王都第一高等学校学長セドリック・レリ・ヨーデキール学長先生に相談に行きました。


 セドリック学長先生は、

「私も、姪が何を考えているのか分からないのだよ。おそらく、何か研究のためだと思うのだが。以前も研究であっちこっち渡り歩いていたのだよ。

反対はしたのだか、睨まれてしまって、恐くてたまらないのだ。姪には、逆らいたくないんだ。申し訳ないが姪の言う通りにしていただけないか?王国学校教育管理局の許可なら、既にとってある。」


ため息をつきながら、本当に申し訳なさそうにそうおっしゃるセドリック先生に私はもう断ることができなくなりました。


「分かりました。ですが、担任の教師ではサラ先生の研究に支障が出るかも知れませんし、サラ先生の研究の都合等で、学年の途中で担任の教師が突然代わったとしたら子どもたちが混乱します。」

「う~む。」


「ですので、学長になって頂くのはいかがでしょうか?

私が副学長になって、サラ先生の研究と学長業務をサポートいたします。そうすれば、サラ先生は思う存分ご研究に励むことができます。サラ先生の研究は将来のこの国のためにも必要ですので。」

「う~む、だが、サラは担任教師を希望していてな…。しかし、カイノート殿のおっしゃることももっともだ。お任せしよう。但し、もう一度言っておくが、サラは担任教師希望って言ってたぞ。私は、そう言ったからな。後は全て貴殿にお任せするからな。」


 なぜ、そんなに念を押すのか、その時の私は分かりませんでしたが、相談に乗ってくれたセドリック学長先生にお礼を言い、高等学校の学長室を後にしたのでした。


 初等学校に戻った私は、早速サラ先生に学長になって頂くための書類を作成し、王国初等教育管理局に提出し、返答を待ちました。

そして、1ヶ月以上待たされましたが、返答を頂きに王国初等教育管理局に行きました。

以前の自分の職場だったとはいえ、10年も経つと顔ぶれがだいぶ代わってました。

しかし、まだ知っている者もいたので、その者と話をしました。


「お前、凄いな。あのサラ・マ・ヨーデキール先生に逆らうなんて。しかし、お前の推薦書に書いてあったことはもっともだった。ずいぶん揉めたが、結局、サラ先生に学長になって頂く許可が下りた。だけど、オレはどうなっても知らないからな。」

学生時代からの同級生、就職先でも同期の間柄。以前の一緒に過ごしたあの頃と同じように私に遠慮なくそう言う彼。


「はぁ?お前こそ、何を言ってる?サラ先生がオレの下とか絶対ないだろ。だいたい、オレがここにいたときから、サラ先生は有名だった。まだお若くあられたのに魔法医学の天才だった。そのようなお方がオレの下で初等学校の担任とかあり得ないだろ。学長でも畏れ多いくらいだ。」

「今はあの頃よりも更に権威を上げておいでだ。サラ先生のご専門分野魔法医学だけでなく、学校教育に関してもな。叔父上のセドリック・レリ・ヨーデキール高等学校学長先生の他にも、ヨーデキール一族の中には教育統括管理局の役員だっているしな。姉君もお父上の跡を継ぎもうすぐ魔道具研究所の所長になられる。そのようなお方のご希望を無視するなんて、オレなら無理だ。」


「じゃあ、オレはどうしたらよかったんだよ。」

「分からん。だから、なかなか返答ができなかった。一応、許可だけは下りた。お前の好きにしろ。」


 どうして、彼がそんなことを言うのか疑問を感じながらも、私はサラ先生を学長にお迎えする準備を整えました。

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