表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/710

24.SIDE:ジンクス

 オレの名前は、ジンクス。

1の月から初等学校の一年生になったんだ。

入学前、オレと同じ一年生に、この国の王子様が通うらしいというウワサを聞いた。


 入学式の日、新入生代表挨拶で呼ばれた子の名前を聞いて、この子がウワサの王子様かと興味を持ったんだ。


 式が終わって自分の教室に移動するとあの王子様がいた。

オレは嬉しくなって、早速話しかけたが、途中でいきなり貴族の子に殴られた。

理由を聞いたら自分も悪かったと思ったし、王子様フェリオ君のおかげで仲直りも、友達も出来た。

 入学式以降、クラスの他の子たちとも仲良く出来ているし、この前行った初めての遠足も楽しかった。


 二の月の終わり頃、いつも仲良くしているアーロン君がフェリオ君に、誕生日パーティーの招待状が届いたと言っていた。

そして、同じクラスの貴族の令息令嬢たちも、届いた、届いたと騒ぎ出した。

 オレは、羨ましいのと、仲間外れにされたような気持ちになって、自分も行きたくなったんだ。

 フェリオ君も、クラスの平民の子たちも誕生日パーティーに呼べないのか王宮の担当の人に聞いてくれたけど、結局、平民はダメだった。


 だけど、代わりに、クラスみんなで一学期に誕生日のクラスメート全員の合同誕生日パーティーをすることになったんだ。

オレたちは、クラスみんなで、手作りパーティーの準備をした。

 教室を飾ったり、オヤツを用意したり、誕生日の子一人一人に色紙を書いたりと準備は思ったよりたいへんで、時間もかかった。早めに準備を進めたおかげでパーティーにはなんとか間に合った。


 パーティーのメインに、誕生日の子一人一人が自己紹介をして、趣味や特技を披露するというものがあり、誕生日の早い子から順番に披露した。

変顔をしてみんなを笑わせたり、趣味で作った作品を見せたり、色々だった。

一番最後は、フェリオ君だった。


 フェリオ君は、魔法が得意だと言った。

忘れていたわけではないが、やっぱり王子様なんだなぁと思った。

 フェリオ君は、魔法で、右手に炎を、左手に水球を出した。

みんなそれだけでも感心していたのに、フェリオ君はその炎と水球を空気中でぶつけた。

その瞬間、水は弾けて、天井で雲みたいな固まりになり、教室中に雪が降ってきた。

キラキラと光り輝き落ちてくる雪に触るとすぐに溶けてなくなった。

雪の量は極僅かだったけど、とても綺麗だった。


「フェリオ君、凄い。」

オレは、そう言ってフェリオ君の側に駆け寄った。


 フェリオ君は照れくさそうに

「ジンクス君、ありがとう。お礼だよ。」

そう言って、オレがたまたま手に持ったままだった飴玉を空中でわたあめに変えて、オレに渡してくれた。


「甘い。美味しい。」

一口食べたオレを見てクラスの他の奴らも集まってきた。

みんなフェリオ君にわたあめを作って欲しいと言って騒ぎ出した。

フェリオ君は、残っていた飴玉で虹色のわたあめを作って、スティック状のお菓子でくるくると一口サイズに巻き取り、クラスメートに渡していた。


「みんな、並んで。ジンクス君、手伝ってもらってもいい?」

フェリオ君は、スティック状のお菓子をオレに手渡した。

オレは、そのお菓子を受けとると、フェリオがやっているようにわたあめをくるくると巻き取りクラスメートに渡してあげた。


「ジンクス君、ぼくの大きくして。」「あっ、ズルい。オレだって大きいのがいい。」「ぼくは、青色のところがいい。」「オレ、赤。」など、みんな好き勝手に騒いでいた。


「うるさい、お前ら、みんな平等だよ。文句言うな。ちゃんと並んでよ。」

オレがそう言うと、クラスメートは大人しく並び始めた。


 フェリオ君は、ニコニコしてそんなオレたちの様子を見ながら、自分の前に並んでいるクラスメートにわたあめを渡してあげていた。


 ふと、気が付くと、

何故か、フェリオ君の前は女の子ばかりが並んで、オレのところには、男ばかりが並んでいた。


『えっ?オレってもしかしたら女の子に嫌われているのかな?』

心の中でそう思ってがっかりしていたら、どうも顔に出ていたらしく、男友達たちが集まってきた。


「そうがっかりするなよ、ジンクス。フェリオ君は王子様だ。女の子は王子様の方がいいに決まってる。オレたちで我慢しろ。」

「そうだぞ、ジンクス。オレたちがいる。」

「フェリオ君は、いつもぼくたちと遊んでいるから、たまに女の子たちが集まってもいいじゃないか。」

ニヤニヤしながら男友達たちがオレにちょっかいをかける。


「オレは、別に。オレのところが男ばかりなんて気にしてないし。」

「あっ、やっぱり、こっちに女の子がいないことを気にしてるな。安心しろ、本当は、オレたちだってフェリオ君がいい。女の子でなくてもな。」


「何だと、この野郎。」

「あはは。お前だってそうだろ?他の奴らよりフェリオ君の方がいいだろ?」


「まぁ、それは、そうだけど。」

「フェリオ君が作ったわたあめ美味しいな。ジンクス、早くまだの奴らにも取り分けてやってくれよ。」


「うん。分かった。」

オレのところにいる男友達たちも、楽しそうだ。オレも楽しい。


 クラス全員合同誕生日パーティーは、大成功だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ