2.想像の人たち
「お祖父様、実は…」
七歳の誕生日をきっかけに起きている自身の不思議な現象について祖父に話した。
フェリオの話を黙って聞いていた祖父だったが、
「そうか、分かった。そなたのその不思議な現象について、大事な話がある。だが、少し長くなる。明日ゆっくり話すこととしよう。」
「分かりました。明日改めてお伺いいたします。」
自室に戻ったフェリオは、
『お祖父様は、ぼくの体のこと知っていたんだ。どうしてだろう?誰にも言ってない夜中のことなのに。』
疑問に思った。
もしかして、アレがなくなってしまうのはぼくだけでなく、夜になると男はみんななくなるのかな?何となく自分の剣術の先生であるドジルが夜中に女装している姿を想像した。ドジルは王宮騎士団の団長を務める30歳くらいの屈強な男だった。王国屈指の剣術の腕前で、フェリオだけでなく騎士団の団員にも稽古を付ける優れた剣術先生だ。ただ、稽古の時、いつも上半身裸。おそらく己の肉体(特に自慢の腹筋)に自信があるのだろうが、胸毛がヤバい。ドジルは少々(かなり)毛深い男だった。
『おえっ。』
キモい。キモ過ぎる。自分はなんでドジルで想像してしまったのだろう。フェリオは後悔した。
もしかして、父上もそうだったのかも知れない。だから、お祖父様はぼくが言わなくても知っていたんだ。父上と自分と、そうだお祖父様だって。王族の男子に起きる現象なのかも知れない。…たぶん?
今度は祖父の女装姿を想像した。
『ない。ないです。お祖父様。』
祖父は、口髭顎髭を蓄えた老王だ。何故か眉毛も長い。
キモい。祖父もキモいと思ったフェリオ。
「ごめんなさい。お祖父様。」
心の中で『キモい。』と思っただけなのに何故か口に出して謝ってしまった。
『そうだ。父上だ。父上の女装姿はきっとイケてたに違いない。』
会ったことのない父を思った。
『…父上。ぼくは、父上とお会いしたかった。父上とお話して、それから、それから、ぼくと一緒に遊んで欲しかった。』
父は、祖父から王位を継承したが、フェリオが生まれてすぐに病気で亡くなったと聞いている。
急に淋しい気持ちになってきた。
『父上。父上。』
父が恋しくなり、涙が溢れてきた。