14.入学の日
次の日から初等学校に入学するまでの間、フェリオは今まで以上に積極的に魔法の勉強に励んだ。もちろん、他の勉強も剣術も一生懸命取り組んだ。
体内の魔力を無駄なく効率よく巡らせる。
ゴルディオはフェリオに丁寧に教えてくれた。
フェリオは見違えるほど上手に魔力を使うことが出来るようになった。
勉強も体力にも自信を持って入学式の日を迎えた。
今までも普通に真面目に頑張る子だったので
同級生にフェリオより優秀な子供はいなかった。毎年、入学前学力テストで主席だった者が新入生代表の挨拶することになっているが
今年はフェリオが挨拶を任されていた。
フェリオは堂々とみんなの前で挨拶をした。
入学式が終わると、新入生は自分のクラスに戻って明日からの授業の説明を受けることになっていた。
一年生は、1クラス40人の5クラスあり、入学前の筆記テストと体力テストの結果とMR保持者や男女の数等々各クラス平均が同じになるように分けられていた。
初等学校の三年間は、貴族だろうが平民だろうが皆平等という決まりだった。
教室に移動し、自分の座席を探していたフェリオに同じクラスの知らない男の子が声をかけた。
「おい、お前、王子様なんだろう?新入生代表の挨拶なんて凄いな。オレ、勉強苦手なんだ。今度オレに教えてくれよ。」
そう言って手を差し出す男の子に、フェリオが『いいよ。』と答えようとした瞬間、貴族の子息と思われる男の子が、その子を殴り飛ばした。
「貴様、平民の分際で王子殿下に馴れ馴れしく話かけるなんて失礼だぞ。しかも、王子殿下に『お前』などと許せぬ。」
突然殴られた男の子は、床に倒れて泣き出した。
辺りが騒がしくなり、担任の先生が慌てて飛んできた。
「みんな、静かにしなさい。何があったのですか?」
近くにいた別の子供が先生に報告する。
「アーロン君がジンクス君を殴って泣かせました。」
「アーロン君、どうしてそんな乱暴なことをしたのですか?」
「こいつが王子殿下を『お前』と呼び、馴れ馴れしく話かけたからです。」
みんなの視線がパッとフェリオに向けられる。
フェリオは、殴られた男の子を慰めて立たせようとしていたところだった。
「王子殿下、そんなヤツにお優しくする必要はありません。おい、貴様、王子殿下に近付くな。また殴られたいのか?」
ビクっと怯えた男の子が
慌ててフェリオと距離を取り、泣きながら答える。
「オレ、、、ぼくはお兄ちゃんから『初等学校の間は貴族も平民も平等で、誰でも友達になれる』って聞いていたんだ。違ったの?ごめんなさい。」
更に泣きながら謝る男の子に、先生が答える。
「ジンクス君、あなたのお兄さんの言うことは、間違ってません。ですが、王族だけは特別なのです。確かに、初等学校の間は、皆平等ですが、王族には常に敬意を払わなければならないのす。」
「そんな…。オレ、知らなくて…。」
「分かったか。お前は殴られて当然なんだ。貴様らも、王子殿下に失礼のないようにしろ。」
貴族の男の子がそう言った途端、周りの子供たちがフェリオから離れる。
『えっ?待って、待って。ぼく、ぼっちになっちゃう。』
慌ててフェリオは、先生に言う。
「先生、ぼくも、初等学校はみんな平等って聞いて入学しました。王族も、平等ではいけませんか?ぼくはみんなと仲良くしたいと思ってます。」
「王子殿下、規則ですので、私の一存ではお答え出来ません。ですが、殿下のご希望は学長をはじめとする責任者に報告しておきます。少しお時間をいただいてもよろしいですか。」
「大丈夫です。でも、その間だけでも、ぼくをみんなと同じに扱ってもらってもいいですか?」
「ですが…」
返事を渋る担任の先生にフェリオは、
「王族を特別扱いしなければならない規則があるなら、ぼくはそれを利用しようと思います。わがまま王子が『自分を特別扱いするな。みんなと同じにしろ。』と命令した、というのはいかがでしょうか?」
いたずらっ子のような笑みを浮かべてそう言ったフェリオに
「分かりました。殿下のおっしゃる通りに致します。ですがこのことは、殿下のご命令ではなく、殿下のご希望に私が同意したことにしていただけますか?…フェリオ君。」
担任の先生は、呼び方を『殿下』から『フェリオ君』に変えて答えてくれた。
名前で呼ばれたフェリオは嬉しくなって
「はい、先生。」
と元気よく返事した。




