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13.生きる

『母上は、ぼくたちがMRの違う双子だと分かった時、どんな気持ちになったのだろう…』


フェリオは、亡き母のことを思った。


祖父、祖母たちの話から

母が命をかけて自分たちを産もうとしてくれたのは分かった。


でも…

母は、怖くなかったのだろうか?

MRの違う双子はほとんど助からない。

僅な助かる望みにかけて双子を産もうとすれば

今度は母親の命が危険。

自分だったら、怖くてたまらない。自分も医師団の言う通り双子を諦めるのが賢明な選択だと思う。

なのに母は、父を説得してまで自分たちを産もうとした。


祖父の言う通り

王妃としての責任のためだろうか?

自分なら、そんなもの、くそっ食らえだ。次の子が授かりにくくなる?別に全くダメってことじゃないし。それにダメでも仕方ないことじゃないか。

 どうしても子供が必要なら父上が第二妃を娶ればいい。

いや、それ以前に女性は子供を生むためだけの存在ではない。

子供がいなくたって、王妃としての公務は出来る。それに、父上の近くで父上を精神的に支えればいいじゃないか。

父上は子供っぽい(予想、勝手に確定)し。


 ん?子供っぽい?はっ、母上は超子供好きだったのかな?

そう言えば、お祖母様が母上は子供が生まれてくるのを父上と一緒に楽しみにしていたと言っていたぞ。

そうか、母上は子供っぽい父上と超子供好きで双子を諦めることが出来なかった?とか?…いや、ないよね?



『もう、よく分からないや。』



父と母の気持ちは

結局、父と母にしか分からない。


祖父たちの話も

祖母たちの話も

父と母の気持ちを予想したものでしかないのだ。


正しいようで、そうでないこともあるかも知れない。

本人でもない限り、誰も本当はどう思っていたかなんて分からないのだ。


そして、誰も未来の出来事を知ることは出来ないのだ。

その時、一番いいと思った選択が、実はそうではなかったなんて分かるのは選んだ後だ。後悔しても仕方ない。受け入れて、また次の選択をすればいいのだ。


父と母だってそうだ。

たくさんの選択肢があったはずの父と母の人生で

父と母が選んだ道の結果が今の自分だ。もしかしたら後悔しているかも知れないし、満足しているかも知れない。


では、自分は、どうすべきなのか。



ぼくは、生きる。

自分の人生を自分らしく。男でも、女でも関係ない。ただ、精一杯。

自分を産む決断をしてくれた父母に感謝し、自分を育ててくれている祖父母に感謝し、自分を支えてくれる全ての人に感謝して、ぼくは生きていこう。


 そして、もし父と母がいる世界で両親に会えたなら、感謝の言葉を伝えたい。素晴らしい人生をありがとうと、胸を張ってそう言える人に自分はなりたい。



『よし、頑張るぞ。先ずは、自由に自分の本当の姿になれるように練習しよう。別に男で困ってないけど。女の子の姿になっても困らないようにしたらいいんだよね。女の子の姿で過ごすってどんな感じなんだろう。ちょっとドキドキするけど、楽しみだな。』


フェリオは、前向きな子供だった。


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