12.反面教師
自室に戻ったフェリオは
もう一度、落ちてゆっくり考えることにした。自分と、父と、母と、祖父母について。
先ずは、自分だ。
自分はずっと王子だと思っていた。
確かに、夜中時々男児の証がなくなっていたが、朝にはあるので、気にしなかった。
女の子だったんだ、ぼく。
まぁ、どっちでもいいや。男がいいと思ったことも、女の子になりたいと思ったこともないし。
王族の王子は、自分一人。いずれ祖父王の後を継ぎ、王となり、その責を負う。祖父王は、高齢だから自分はたぶん成人すればすぐにでも王位を継ぐだろう。
周りからそう言われているし、自分もそう思っている。
今は女性に王位継承権はないが、近いうちに女性にも王位継承権が持てるように変わるなら、祖父の言う通り自分は女性でも王となるだろう。
なら、自分は男でも女でも今までと全く変わらない。祖父の元で帝王学を学び、来るべき時に備えるだけだ。
祖父は、将来自分がどっちを選んでも困らないようにフェリオとフィオナの二人分を用意してくれている。
男女どっちでもOKなんて、よく考えたら、凄くいいことじゃないだろうか。お祖父様、グッジョブ。
次は、やはり父についてだ。
最初は自分の存在が悲しかった。でも、少し考えたら父に腹が立った。
今度は、冷静に考えてみよう。
父は、母をとても愛していたのだろう。それは分かった。
父は、母だけ特別だったのだろう。それも分かった。
だが
父は、王だ。
王子だった頃から次の王位を約束された王太子だったはずだ。
ならば、何故、最初から母のみを妃とし、母に子を持つ負担を強いた?
母を愛する故かも知れないが、母にとっても一人妃はプレッシャーになったはずだ。父がそんなことをしたせいで、母は双子を諦められなかったのかも知れない。
王なら、王族の義務を考えて行動すべきだ。父のせいで国が立ち行かなくなるではないか。
おそらく幼い頃から父は母しか見てなく、重臣たちの意見を聞かない我が儘な王子だったのだろう。
祖母の言葉を思い出した。
「エドガーを許してあげて。私が悪いのよ。」
祖母は、そう言って父を庇った。祖父もイーデアルの祖父もだ。
みんな父ではなく、自分の責任だといった。
…甘い。甘すぎる。祖父たちも祖母も父に甘い。父の行動を己らの責任として、悲しんでいる。だが、自分に呪詛をかけた時、父は既に成人した王であった。大人だ、大人である。にも関わらず、そんな身勝手な行動をし、亡くなった。父は大人になっても正しい判断が付かない子供だったのだ。
父の行動は、王として許されない。そんなことも分からないなんて父は、愚王だ。自分は絶対父のようにならない。
フェリオは父を反面教師に位置付けた。
よし、自分は、周りをよく見、重臣の意見を聞き、そうして正しい判断ができる大人になろう。そうだ、そうしよう。
………あれ?どこかで聞いたことがあるぞ………そうだ、今日、確か、お祖父様が同じようなことを言ってたな?いや、今日だけでなく、普段からそう言っているぞ。父上にも同じ事を言ったのだろうか?なら、何故父には伝わってないのだろう?
父は、ポンコツだったのか?
フェリオの父に対する評価は、とても低くなった。
でも、でも、もし父が若いころから周りの意見を取り入れて行動する男だったなら、どうだったのだろうか。
フェリオはシュミレーションしてみることにした。
先ずは、母上を愛していたとしても、エリアノーラ様を第二王妃として迎えただろう。
母上は、双子を授かって後、亡くなり、女児の自分だけが生き残る。
父上は、母上亡き後、エリアノーラ様との間に五星の王子たち(仮に二人くらい)をもうけたとする。
王族は次世代も安泰。自分に弟たちはいるが異母兄弟。母上は亡く、父も、祖父と祖母も周りだって、みんなみんなエリアノーラ様の五星の弟王子たち(仮)を大切にするだろう。そして、王位継承権のない女児の自分は、四大公爵家のどれかに降嫁させられる。
……イヤだ。ぼっちの上に、結婚相手も選べないなんて。
父がポンコツでよかった。そうでなければ、今頃自分はぼっちで肩身の狭い思いをしているはずだ。
父が父自身のために取った身勝手な選択(予想、勝手に確定)は、結局、今の自分にとって一番いい選択になっている?気がしてきた。あれ?今の自分はまさかのベスポジ?なのかも?
……。
底辺だった父の評価は上がった。




