115.遠慮なくストレート
「申し訳ありません、お兄様。お忙しいところをお呼びして。」
「いや、よい。わしもお前に話したいことがあった。今は、少しだけしか時間が取れないが、夕方、お前に時間があればゆっくり話したいことがある。それまでに急いで今日の仕事を終わらせる。」
「はい。大丈夫ですわ。フィオナ王女のことですわよね。今朝、魔法授業の時に本人から少し聞きましたわ。」
「そうか。ならば話は早い。フェリオとフィオナをどうすればよいか困っているのだ。二人の魔力量と質が違うことは分かっていたが、フィオナの魔力量は、フェリオの魔力量の1.3倍あるらしいのだ。これから先二人をどう扱えばいいのか分からないのだ。」
「フェリオ王子の1.3倍ですか?まぁ、それくらいの差があるかも知れないですわね。私が初めてフィオナ王女に会ってからも彼女の魔力量は増えていますから。本人が言ってましたわ。フィオナ王女は体の成長に合わせて魔力量が増えますが、フェリオ王子の魔力量は、七歳の頃からほとんど変わらないらしいですわ。」
「何だと?初めて聞いたぞ。では、これから先、二人の魔力量は、どんどん差が広がっていくのか?」
「ええ、そうなりますわね。」
「ますます二人をどうしたらいいのか分からなくなった。わしは、出来ればフェリオの姿で王位を継いでもらいたいと思っていたのだ。優秀な王子のフェリオが王位を継ぎ、体の弱い王女のフィオナは半分静養しながらフェリオの補佐として王族に残る。わしの勝手な理想だが。」
「お兄様、勝手が過ぎますわ。私、お兄様に意見しようと思ってお呼びしました。」
「意見だと?わしは何か悪いことをしたのか?」
「昨日、お兄様は、フィオナ王女に何をおっしゃったのですか?もし、私が彼女の立場なら、遠慮なくお兄様の魔力を拘束して従わせますわ。
お兄様、王族は常に国一番の強い魔力を持つ必要があります。国王もですわ。歴代の国王は、息子が自分の魔力を越えれば息子に王位を譲りましたわ。父上もお兄様が成人後すぐ王位を譲りました。
フィオナ王女が言ってましたわ。お兄様は彼女が何度お願いしても全く聞かないで頭ごなしに否定して納得のいく説明をしなかったと。だから四回目くらい頼んだところでキレたと。本気でお兄様の魔力を拘束しようと思ったけど、お兄様の魔力量が自分の半分以下しかなかったから止めたと。
お兄様は、フィオナ王女に悪いことをした自覚がないのですか?子供とはいえ、フィオナ王女はこの国一番の魔力量を持つ者です。一人の王族五星として相応の扱いをすべきだと思います。」
「フィオナはまだ子供だ。子供が大人に口出しするからだ。」
「お兄様はいつまでフィオナ王女を子供扱いするおつもりですか?
言わせていただきますが、お兄様には、フィオナ王女を安心して学校に通わせるだけの魔力がないのですわ。フィオナ王女が心配して当然ですわ。お兄様には任せられないと判断されても仕方ないほどお兄様の魔力量は、少ないのです。
フィオナ王女が成人するまで後七年もあります。今でもお兄様の魔力量はフィオナ王女の半分以下しかないのです。後七年どうなさるおつもりですか?
イーデアル領の件ですが、イーデアルに次世代の五星がいないから他国の船が徘徊している、とは思いますが、それだけではありません。国王がお兄様だからですわ。来年からエリアノーラが国外代表となりますがエリアノーラだけではフィオナ王女が成人するまで守りきれるとは思えません。フェリオ王子の立太孫の式典でフィオナ王女を国外代表の一人としてデビューさせることは、早いとは思いません。むしろ、今すぐにでもフィオナ王女に王位を譲り、エリアノーラを摂政として国外にフィオナ王女の力をみせるべきと考えます。フィオナ王女を子供扱いしたいお気持ちは分かりますが、何かあってからでは遅いのです。
お兄様、お兄様に若い頃のような魔力はもうないのです。」
「……」
「言い過ぎましたわ。申し訳ありません。お許しください。お兄様。」
「…いや。わしに遠慮なくそう言うのはお前だけだ。そうだな。お前の言うことは、その通りだ。今のわしの魔力は若い頃の半分近くまで減っている。七年後は、半分以下だ。国王の魔力がこの程度しかないなら他国に国力が落ちていると思われても仕方ない。フィオナには、成人前に王位を譲ることも考えよう。わしはフィオナが成人するまであの子を守りたかったが、わしにはその力がないようだ。情けないことだ。」
「お兄様、私も若い頃よりも年々魔力量が減少しています。仕方ないことですわ。私も、ノーストキタ領にフィオナ王女を連れて戻った時ですが、私、エリアノーラに魔力を拘束され、従わせさせられましたわ。親子であっても五星ならそうするのが普通です。フィオナ王女の行動は五星なら当たり前のことですわ。
私は、王位はフィオナ王女が継ぐべきだと思います。次世代の王族を考えれば、フェリオ王子として複数の妃を娶り、必ず五星のお子を得ていただきたいと思います。
ですが、二人を別々の人物としたなら、フェリオ王子は、フィオナ王女には勝てません。本人の希望次第ではありますが、出来るだけ早い段階で王子か王女かを決め、決めた方の性で生活されることをおすすめします。
今は体の弱い王女となっていますが、フィオナ王女はこれから先どんどん大きな存在となっていくでしょう。今のベースはフェリオ王子ですが、フィオナ王女として王位を継承するなら、フィオナ王女がベースになる必要があります。婚約者のこともあります。初等学校のうちに男女どちらかを決めた方が私はいいと思います。」
「そうだな。本人の希望次第ではあるが、あまりゆっくりとあの子の成長を待つ余裕がわしにはないようだ。あの子を子供扱いしたことはわしが悪かった。もう一度あの子と話し合い、あの子のやりたいようにやらせてやることにしよう。ミューラ、お前とも夕方ゆっくりもう一度話そう。」
そして、仕事に戻ったジャンは、イーデアル公爵にも相談することにし、夕方、三人で再び話し合った。




