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113.祖父に相談 2

夕食後、フェリオは、祖父のところに行った。

祖父は、いくつかの資料をフェリオに手渡した。


「お祖父様、これは?」


「本当は、来年、そなたが王太孫として立った後に話そうと思っていたのだが、いい機会だからそなたも知っておくがよい。」


「はい。読ませていただきます。」


フェリオは、渡された資料に目を通した。

資料には、フェリオの全く知らないことが書いてあった。

フィオナの魔力量が通常の王族五星よりも多い考えられる理由。

祖父たちの魔力量について。

イーデアル領海域に他国の船が往来している回数の推移と原因、その対策について。

一通り目を通したフェリオは、祖父を見た。


「フェリオ、その資料に書いてある通り、そなたの魔力量が通常の王族系五星より多いのは、MRの違う男女の双子だったからだと考えられる。そして、そなただけでも生きて生まれてこれたのは、そなたの父がまだ胎児のそなたに魔力制御を教えていたからだろう。そなたの両親は、そなたたちが無事に生まれてこれるように守ろうとしていた。」


「はい、お祖父様。」


「そなただけでも生きて生まれてこれたのは、奇跡的なことだ。まさに紙一重の差と言っても過言ではない。そなたは、その奇跡に感謝し、精一杯生きるがよい。そして、わしらの魔力量だが、四星以下の老化による魔力量の減少とほぼ同じ量だけ減少しておる。そなたが成人する頃には、わしの魔力量は、若い頃の半分以下だ。そなたには、出来るだけ早く王位を継いでもらいたい。」


「はい。お祖父様。」


「イーデアル領海域の他国の船が現れるようになったのは、約9ヶ月前。ちょうどその頃そなたの叔父カルロス殿がイーデアル領から王都に戻った時期だ。カルロス殿は、成人後、そなたの曾祖父などの親族とイーデアル領を守っておったが、昨年末月次期公爵として父親の仕事を引き継ぐために王都に戻ったのだ。」


「はい。カルロス叔父上は、以前、12の月と1の月しか王都にいませんでした。ぼくが五歳くらいの頃、いとこのレリーリアラたちは王都で暮らすようになりましたが、カルロス叔父上だけはイーデアル領に残っていました。王都にはナシュル叔父上がいました。カルロス叔父上が王都に戻られてからは、イーデアル領にいるのはナシュル叔父上です。」


「イーデアル領には、フィオナが静養していることになっていた。フィオナのMRは公表してなかったが、双子の兄フェリオが五星なので、皆、五星の王女と思っていただろう。体の弱い五星王女を次期イーデアル公爵家当主と一族が守っていると他国首脳たちはそう考えていたと考えられる。

イーデアル領は、そなたも知っての通り豊かな土地柄故に、五星が常に守っていないとすぐ他国の脅威に晒される。そなたの曾祖父の時代は、常にイーデアル公爵家には、三~五人の五星がいた。そして、必ず五星が領を守っていた。

そなたの曾祖父は、五星だが高齢で体調もよくない。五星王女の静養先を守っているのがカルロス殿とナシュル殿では、他国の印象が全く違う。

フィオナが王都に戻ったと公式に発表した直後は、イーデアル領海域の他国の船が急に増えたこともその影響と考えられる。来年からエリアノーラがわしらに代わり国外代表となるが、ナシュル殿だけではイーデアル領は守れぬ。そなたの祖父ゴルディオ殿は、来月から月の半分自領に戻られる。そして、今年いっぱいで子息のカルロス殿に爵位を譲られ、自領に戻られる予定だ。」


「ぼくは、イーデアル領がそんな事になっているとは知りませんでした。イーデアルお祖父様は、ぼくの立太孫の式典はいらっしゃらないのですか?」


「いや、爵位を譲られた後も暫くは王都と自領の両方を往復することになるから大丈夫だ。そなたの後見人は、ゴルディオ殿だ。しかし、数年後は自領のみとなるだろう。留守中に何かあっては困るし、老体に移動は疲れるからな。」


「お祖父様にお願いがあります。ぼくに、いえ、フィオナに国政を手伝わせて下さい。ぼくは、いえ、私は、まだ子供ですが、この国を守りたいのです。国外代表ですが、エリアノーラ・マ・ノーストキタ公爵様と一緒にフィオナの名前を入れてもらえませんか?私もお手伝い出来ることはしたいのです。」


「そなたは、学校があるだろう。初等学校の間は、国政など気にしなくてよい。子供は他に学ぶことがたくさんある。イーデアル領のことはそなたの祖父とエリアノーラに任せていればよい。」


「学校に行っている間は、学校の事に集中します。平日は習い事もいつも通り頑張ります。ですが、休日と学期末休みは習い事を全てなしにして下さい。もちろん運動会など休日にある学校行事には、参加します。ですから、学校がお休みの時は、国政を学ばせて下さい。それで学校の成績が下がるようでしたら、国政から外してもらってかまいません。お願いします。」


「フィオナには、中等学校くらいから国政を手伝ってもらおうとは思っておる。だが、初等学校では、まだ早い。子供は学校の方が大切だ。もう少し待つがよい。」


「もう一度言います。私に国政を学ばせて下さい。学校の勉強も剣術も魔法も今まで通り頑張ります。学校がお休みの時だけでいいのです。今、家庭教師の先生に習っている高等学校の学習は、今年中に全て終わる予定です。お願いします。」


「ダメだ。初等学校を卒業するまで待ちなさい。中等学校からだ。」


「…そうですか。私のお願いは聞いてもらえないのですか。」


フェリオから物凄い魔力が溢れ始める。同時に姿がフェリオからフィオナに変化する。フィオナに変化した体からフェリオとは比べ物にならないほどの魔力が溢れ出す。


「最後にもう一度お聞きします。お祖父様。高等学校の学習なら、今年中に終わります。何故、国政を学ばせてもらえないのですか?子供だからですか?ですが、私の魔力は、既にお祖父様の2倍以上あります。ウソか本当か感じてみますか?私は、フェリオとは違います。私の魔力量は、フェリオの1.3倍くらいあります。」


フィオナの魔力量がフェリオより多いとは分かっていた。フェリオの魔力量は七歳の頃父親エドガーの魔力量を越えた。今のフィオナの魔力量は、そのフェリオの1.3倍あると言う。


「分かった、分かった。わしが悪かった。そなたの言う通りにする。だから、もうその魔力は抑えてくれ。王宮が壊れてしまう。」


「最初からそう言えばいいのですわ。でも、せっかくだからお祖父様に私の魔力を感じてもらえばよかったかしら?本当にその資料通りの魔力量かどうかを。」


ニコッっと笑ったフィオナに、祖父王ジャンはひきつった。フェリオとフィオナは全然性格が違う。もちろん、少し違うとは妹ミューラや姪のエリアノーラから聞いていた。

だが、少しどころではなく全然違う。この性格はまさに五星王女様だ。妹ミューラの幼い頃に似ている。いや、今も妹ミューラの性格は変わらない。だが、それは妹だけではない。有無を言わせない高圧的な性格は五星なら普通だ。フェリオが大人しい性格なのだ。そう、フェリオなら間違ってもそんな事は言わない。フェリオなら『大丈夫ですか、お祖父様。申し訳ありません。』と言うだろう。幼い頃からフェリオは素直で優しい子供だった。後見人を妹に任せたせいでフィオナの性格が妹に似てしまったのだろうか?それとも魔力量の増加が性格を変えるのだろうか?


「あら、嫌だわ。フェリオの服って少し大きいわね。ウエストぶかぶかでズボンがズレ落ちそう。仕方ないわね。」


フィオナは、フェリオの姿に戻った。


「お祖父様、もう一度ゆっくりこの資料を見てもよろしいでしょうか?」


祖父王ジャンは、いつものフェリオに安心した。フィオナは怖い。魔力量も多いが質が普通の五星と違う。上質で在るがゆえにフィオナの感情が魔力に乗ってくる。不快感を魔力に乗せられると怖くて逆らえない感覚になった。拘束されてもいないのに。そして、睨まれると威圧感がある。笑った顔は、息子の妃マリアンヌにそっくりで甘く優しい顔立ちなのに。


「ああ、ゆっくり読むがよい。」


「ありがとうございます。お祖父様。」


やっぱり、いつものフェリオは礼儀正しい優しい子供だ。フィオナになるとどうして性格が変わってしまうのだろうか。フェリオを見ながら祖父王ジャンは思っていた。

フィオナの魔力は、膨大で極上だ。逆らうことは不可能だと感じた。魔力だけではない。フェリオとそっくりなのに、印象が全く違う。フィオナの強い目力は、安心感と威圧感の両方がある一方で、笑った顔は蕩けるように甘い。フィオナに逆らう者はいない気がしてきた。

祖父王ジャンは、だんだんフィオナの婚約者候補は、フェリオ同様四星以上なら誰でもいい気がしてきた。きっとその男は、かわいそうにフィオナに逆らうこともちょっと意見するなんてことも出来ないだろう。気の毒なことだ。フェリオとフィオナの婚約者候補は白紙に戻すのが一番いい。そうしよう。


「フェリオ、そなたが母の実家であるイーデアルを心配する気持ちは分かった。フィオナの名前を国外代表に入れるのは、フェリオの立太孫の式典の時でよいだろうか?式典には、国外の方々もお招きする故、その時にフィオナを他国の国賓の方々に紹介しょう。

フェリオとフィオナの婚約者候補も全て白紙に戻そう。」


「はい。お祖父様。ありがとうございます。」



フェリオが部屋を出て行った後に祖父王ジャンは思った。

フェリオとフィオナがもし本当に双子の兄妹なら、フェリオはフィオナに勝てないだろう。

妹ミューラが言っていた言葉を思い出す。フェリオとフィオナが同一人物とまだ知らなかった時だ。


『フェリオ王子とフィオナ王女ならフィオナ王女を選ぶ。フィオナ王女が王位望むなら、あの子の膨大な魔力に触れた五星は、あの子の側であの子の治める国を見てみたいと思うでしょう。そう、例えフェリオ王子を廃してでも。』


妹は、フィオナに王位継承権を与えては危険だと言った。


『あの子の魔力はこの世界を支配する。そんな可能性を秘めた大きな魔力を持った子です。あの子の魔力に触れた五星は、皆、あの子の言うことに従うでしょう。』


祖父王ジャンは、反省した。フェリオには、王子か王女か成人するまでにゆっくり選んでよいと言った。どうせ同一人物なのだから、フェリオとフィオナのどっちが王位を継いでも同じと思っていた。王子か王女かを選び、片方は、病死でも、大病を患い静養中でも、その時に決めたらいいと思っていた。フィオナをイーデアル公爵家で静養中とした時と同様だと簡単に考えていた。


『同一人物』と知っているからこそ、そう思っていた。


だが、フェリオにはフェリオとフィオナを同一人物と知らないでフェリオを大切に思う人たちがいるだろう。初等学校の同級生などがそうだ。そして、フィオナもだ。今はまだ静養中となっているがフィオナが学校に通い始めたら、フィオナにも友達等が出来るだろう。


フェリオとフィオナを同一人物であることは極秘事項だ。

父親の呪詛、死産した王子の隠蔽、そして本当は存在しない双子の兄フェリオ。法を変えたのもフィオナが問題なく王位を継承できるようにするため。全て公表出来ることではない。

そう、二人は同一人物ではなく別々の人物と考えないといけない。

そのうち、フィオナが国政に携わるようになれば、フィオナの存在は、どんどん大きくなっていくだろう。どう対処すればよいのか分からなくなってきた。ジャンは自分だけでは手に負えないと感じた。

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