103.イーデアル親子 1
家に帰ったレリーリアラは、夕食後に父と祖父の元を訪ねた。
そして、前回と今回、フィオナ王女様に会って自分が感じたことを正直に話し、ノーストキタ公爵様に伝えて欲しいと頼んだ。
レリーリアラが自室に戻った後、レリーリアラの父カルロスは、ゴルディオに尋ねた。
「父上、レリーリアラの言うことは、本当ですか?私は、あのノーストキタ公爵様やウエスターナル公爵様が子供っぽいなどと信じられません。あのお二人は、威厳があり、とても怖い存在です。」
「お前はまだフィオナ王女様に会ったことがなかったな、カルロス。レリーリアラの言うことは本当だ。私は、ノーストキタ公爵様が泣き虫かどうかは知らないが、おそらくフィオナ王女様の前ではそうなのであろう。少なくとも庭園でフィオナ王女様と一緒にいた時の話はレリーリアラの言う通りだ。」
「では、本当に、フィオナ王女様の魔力は…。」
「ああ、あのノーストキタ公爵様ですら足元にも及ばない。今は亡きエドガー陛下の呪詛を僅か七歳で打ち破ったほど膨大だ。フィオナ王女様の魔力に触れた五星は、その膨大な量と極上の質の魔力に盲目になりそうになる、それほど恐ろしい魔力だ。私がミューラ様に魔法の先生をお願いしたのもそのためだ。男があの魔力に触れるのは危険だ。ウエスターナル公爵は、フィオナ王女様の魔力に触れ、皆の前で王女様の魔力をべた褒めしおったぞ。その上、恥ずかし気もなく王女様の側に置いてくれ、と言い、私をいとこ兄上と呼びおった。男ほどではないが、女性ですらそうなるみたいだな。ミューラ様は、王女様に会ってすぐ王女様の後見人を申し出、ノーストキタ公爵様は、王女様の前では泣き虫で子どもっぽくなられるようだ。」
「フェリオ王子様の時とは違うのですか?」
「ああ、フェリオ王子様の時は、膨大な魔力量とは感じるが、普通の五星と同じ質だ。フィオナ王女様の時のように盲目になることはない。」
「では、フィオナ王女様は、女性として女王陛下となられる方がよいのですか?」
「いや、本人の希望次第ではあるが、私は男性として王になっていただきたい。」
「何故ですか?王女様の時の方が魔力も質も王子様の時よりも上なのですよね?」
「次世代を考えるならば、王女様では困るのだ。フィオナ王女様には五星のお子を必ず授かっていただかなければ、この国の王族系五星がいなくなってしまう。四星以下でも魔力量に個人差があるように、五星にも個人差がある。五星の個人差は倍と半分などと言う生易しいものではない。この国を長年守り支配してきた王族系五星魔力量は、我々公爵系五星より、少なくても三倍以上ある。ノーストキタ公爵様の魔力量は、西の公爵家の三人の五星を合わせたよりもまだ多い。ノーストキタ公爵様に五星の子がいない以上、次世代の王族系五星を得ることが出来るのは、フィオナ王女様だけだ。もし、フィオナ王女様に五星の子が授からなければ、フィオナ王女様がこの国を守れなくなった途端、この国は滅亡するだろう。男性として複数の妃を娶り、必ず五星のお子を得ていただきたいのだ。」
「フィオナ王女様が女性として生きることをお選びになり、四星の男性が王配殿下になった場合、二分の一の確率でこの国は滅びてしまうのですか?」
「五星のお子が授からなければ、そうなるであろう。いや、その次の世代を考えれば、お子が五星でも女性なら、また同じように必ず五星のお子を得てもらわなければならない。」
「では、ミューラ様がレリーリアラに、フィオナ王女様にお仕えする覚悟があるかと問う理由は。」
「フィオナ王女様が女性として生きることをお選びになったとしても、レリーリアラにフェリオ王子様のお子を産んで欲しいと言う意味だろう。この国のためにな。そうすれば、私に何かあった時に、イーデアルをエリアノーラ様とフィオナ王女様が守ってやると、そう言う意味だと考えられる。」
「フィオナ王女様が女性として生きることになった場合、フェリオ王子様はどうなるのですか?まさか、レリーリアラは、未婚のままフェリオ王子様のお子を生むことなるのですか?レリーリアラは、そのことを。」
「知らずにお仕えすることを選んだのであろう。ミューラ様が謎のアドバイスをしてくれたと言っていた。ミューラ様は、おそらく、フェリオ王子様とフィオナ王女様が同一人物とは言ってない。全く意味が分からない謎のアドバイスとはおそらくフィオナ王女様を落とせとでも言ったと考えられる。レリーリアラは、女性の自分が女性の王女様を落とせなんて言われても意味不明なのだろう。」
「フィオナ王女様は、男女どちらをお選びになるのかは…。」
「まだ決めてないようだ。女児の姿を取り戻したといっても、まだ二年。漸く七時間くらいだ。一年前は、数時間だった。今もほとんど男児の姿で過ごされている。まだ子供でどっちも同じと言っておられる。成人する前にお選びになる予定だ。」
「まだ先の話ですね。ですが、国王陛下は、フェリオ王子様の婚約者候補を考えておられると聞いています。」
「ああ、おそらく来年くらいにフェリオ王子様とフィオナ王女様の婚約者候補が発表されるだろう。今、お選び中だが、レリーリアラも、西の公爵家の未婚の五星の二人も入るだろう。未婚の五星男性は、西の公爵家の次男坊だけだ。南の公爵家に嫁がれたシャルロット様に五星の男児を授かる可能性はあるが、年齢がフィオナ王女様のお相手には合わない。そして、フィオナ王女様は、西の次男坊をおそらく拒否なさるだろう。長男はまだいいが、次男坊の素行は目に余るほど悪いと聞く。レリーリアラの婚約者候補でもあるが、私もあの次男坊にこの国の王配殿下を任せたくない。五星は、その魔力故に自分勝手な自己中心主義になりがちだ。次男坊に生まれたあやつは、自家を守る自覚が最初からない。あやつの精神年齢は自己中心な子供のままだ。レリーリアラがあやつを嫌がっていることも知っている。」
「しかし、父上。私は四星です。イーデアル一族の五星は父上とお祖父様だけです。お祖父様の体調はよくありません。ほぼ寝たきりで、食事も満足に取れない状態です。そして、父上に万が一のことがあれば、私と一族全てを持ってしてもイーデアル領を守れません。法の改正でフィオナ王女様だけでなく、将来も五星の王女様が降嫁なさる可能性はほとんどありません。今、保留中ではありますが、イーデアルが五星を得るために私は西の公爵様の条件をのむつもりでいました。」
「西の公爵の条件をのみ、イーデアルが五星を得たところで、フィオナ王女様が五星のお子を得なければ、この国自体が危うい。ならば、レリーリアラの好きにさせてやれ。レリーリアラの言う通り、フィオナ王女様は我が孫ながらなかなかよいぞ。フェリオ王子様の女児版ではないぞ。フェリオ王子様の時とは魔力量も質も魅力も全く違う。お前もフィオナ王女様と会ってみたらいい。そうだ、今は二学期末休みだから、フィオナ王女様を我がイーデアルにお招きしよう。シーランも喜ぶだろう。明日、早速国王陛下に許可をいただくために申請するとする。お前はフィオナ王女様をお招きする準備をいたせ。フィオナ王女様とフェリオ王子様が同一人物と絶対に誰にも知られてはならぬ。細心の注意を払うのだぞ。お前の母親や、レリーリアラには特に注意しろ。」
「はい、父上。分かりました。シーラン義理母上に協力をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「そうだな。シーランには、私から話しておく。シーランは、レリーリアラがフィオナ王女様を選んだと言えばおそらく…」
「おそらく?」
「レリーリアラにフィオナ王女様を頑張って落とせと言いそうだ。」
「えっ?シーラン義理母上が、ですか?義理母上は、フィオナ王女様が女性と分かっていながら、レリーリアラにそう言うのですか?私には信じられません。」
「会えば分かる。まだ子供だが、これから大人の女性になってくると思うと恐ろしい。シーランのやつは、王妃陛下と一緒になって、フィオナ王女様のために王宮のお部屋をわざわざ改築し、まだ数時間しか女児の姿になれない頃からドレスなどを準備していたぞ。お部屋の広さは、フェリオ王子様の倍、衣装に至ってはおそらく倍以上だ。ほとんど男児の姿だと言うのに男の我らでは理解出来ぬほど楽しそうに衣装を選んでいた。ここ1、2年シーランのやつがしょっちゅう出かけておるのを知らないか?」
「はい、知ってます。」
「あれは、フィオナ王女様のためだ。王妃陛下と一緒になってフィオナ王女様を可愛がっている。最近は、それにミューラ様まで加わっている。フィオナ王女様は、あの三人のいい着せ替え人形のようになっておられる。国王陛下も私も男の我らはやり過ぎと思うが、怖くて口出し出来ない。」
「本当ですか?」
「ああ、ミューラ様は、フィオナ王女様の魔法の先生の仕事以外をご息女のエリアノーラ様に丸投げし、フィオナ王女様と一緒におられる。フィオナ王女様の魔法の勉強が終われば、そのまま王女様を王妃陛下のところにお連れし、三人で可愛がっているのだ。国王陛下も私も近付けない。一番気の毒なのはノーストキタ公爵様だがな。」




