102.レリーリアラの憂鬱 7
レリーリアラは、只今絶賛混乱中だ。
今自分の目の前で子どもっぽいわがままを言ってじたばたと引き摺られながら会議に行った大人たちは、全員五星の国の重鎮だった。
親が子を叱るよりも、先生が生徒に注意するよりも、レベルが低い。そう例えるなら、初等学校程度の年齢の幼い子ども同士の兄弟喧嘩みたいなものだ。しないといけない宿題の前に先に遊びたいとわがままを言う弟に、自分だって遊びたいが宿題が先、自分も我慢するからお前も我慢しろ、お前だけ遊ぶなと怒る兄。そんな感じだ。
自分たちは、この国は、あの方々に守られている、そう思うと、真剣にイーデアルの将来を考えるのが、馬鹿馬鹿しくなってきた。なんとなく、なるようにしかならないでいいように思えてきた。
「ごめんなさい。レリーリアラ。私が庭園に誘ったばかりにお話どころでなくなってしまったわ。せっかく会いに来てくれたのに。」
王女様のせいではないのに、しゅんと項垂れるかわいい王女様。
「いえ、王女様。いろんな方々のいろんな一面を見ることが出来ましたわ。私、お祖父様のあのような姿を初めて見ました。ノーストキタ公爵様とも初めてお話し出来ましたし。私、大人の五星の方々は、なんとなく近付き辛い怖いイメージでしたが、全然違いましたわ。」
「本当?また遊びに来てくださる?」
「はい。王女様。私もまた王女様にお会いしたいですわ。」
「嬉しい。ありがとう。(ニコッ)」
…かわいい。フィオナ王女様が一番かわいいわ。真っ赤になっていたノーストキタ公爵様もかわいい方だったけど。
レリーリアラは思った。
今日の短い時間に、フィオナ王女様、ノーストキタ公爵様、国王陛下、祖父、ウエスターナル公爵様と五人の五星に会った。まだ八歳で、四星の公爵令嬢の自分にとっては全員雲の上の存在。その中で、一番膨大な魔力を持ち、一番大人で、一番優しくて、一番かわいくて、一番守ってくれそうで、一番一緒に側にいたいと感じる存在は、フィオナ王女様だと。
そう、なるようにしかならないのならば、自分は、フィオナ王女様の側にいたい。五星の方にお仕えするなら、フィオナ王女様がいい。まだ二回しか会ったことがない。けれど、フィオナ王女様が王宮でどんな存在なのかよく分かった。
王族に関する法の改正で、フィオナ王女様の降嫁はなくなった。改正前の慣例通りならば、フィオナ王女様の降嫁先は、イーデアルかノーストキタ。だが、両公爵家とも法の改正を望んだ。みんな、フィオナ王女様が好きなんだ。大人があんな風に子どもっぽくなってしまうのは、みんなフィオナ王女様の側にいたいと思っているからなんだと。フィオナ王女様にこの国を守って欲しいと思っているのだと。
レリーリアラは、将来、フィオナ王女様にお仕えすると決めた。ミューラ様の謎のアドバイスは、やっぱり謎のままで未だによく理解出来ない。だが、フィオナ王女様にお仕えすれば、ミューラ様の言う通りフィオナ王女様が全て守ってくれるような気がしてきた。
家に帰ったら、父に言おう。私は、将来、フィオナ王女様にお仕えしたい。もし許されるなら、一生独身でも構わない。フィオナ王女様のお側にいたいと、レリーリアラはそう決意した。




