101.レリーリアラの憂鬱 6
レリーリアラは、唖然とした。
目の前にいるのは、王国No.1魔力を持ち、王都に戻って僅か1ヶ月半で四大公爵家第一位の権限を得、その他王国外交代表や、バードット殿下の全てを引き継ぎ、僅か3ヶ月少しで国王陛下に次ぐ王国No.2の地位となったあの話題のエリアノーラ・マ・ノーストキタ公爵様だ。
何だろう、この方は。フィオナ王女様の言う通り、本当に泣き虫で子どもっぽい。泣きながら、王女様に抱きついて、王女様の魔力で癒されている。
レリーリアラは、驚いて、唖然として、只今絶賛混乱中だ。自分の想像していたノーストキタ公爵様と全く違う本物を見て信じられない気持ちでいっぱいいっぱいだ。
「王女様、ありがとうございます。癒されましたわ。椅子に座ってお話でもしましょうか。って、えっ?誰?」
漸く目の前のレリーリアラに気付いたノーストキタ公爵様は、とても驚いているみたいだった。
「ノーストキタ公爵様、紹介しますわ。私の従妹でお友達のレリーリアラ・マ・イーデアル様ですわ。」
「初めまして。レリーリアラ・マ・イーデアルと申します。」
「ああ、あなたがあのレリーリアラ様ですわね。お母様からお話は聞きましたわ。私、エリアノーラ・マ・ノーストキタと申しますわ。」
エリアノーラは、フィオナの方に再び振り向くと、小声で、
「王女様。お友達はいつからここにいましたの?」
と聞いた。
「えっ?最初からいましたわ。ここにくる前、ノーストキタ公爵様に声をかけた時もいましたわよ。私たち一緒にお話ししていて庭園まで散歩することになりましたの。」
「最初から…。では、さっき、私が王女様に抱きついた時も…。」
「ええ、ずっと側にいましたわよ。」
「ええ~~っ、言ってくださいよ。王女様。私、凄く恥ずかしいですわ。」
エリアノーラは、かぁ~っと真っ赤になってうつむいた。耳まで真っ赤っ赤になっている。レリーリアラは、思った。フィオナの言う通りかわいい方だと。
「『私たち』って言いましたわ。気付いてないと思いませんでしたわ。それに、ノーストキタ公爵様は、いつも通りですわ。」
「それは…、普段、みんな、侍女とか護衛とかお付きの者を連れてますでしょ?だから、目的の本人しか見てなかったと言うか、本人しか目に入らなかったのですわ。習慣みたいなものですわ。それに、いつも通りではありませんわ。私、いつもは真面目で威厳のある大人の女ですわ。引きこもりイメージを払拭するためにも皆の前では風格漂う大人の女を演じていますわ。」
「へぇ~~~。」
「あっ、信じてませんわね。酷いですわ。王女様。私は、大人の女ですわ。」
「とりあえず、椅子に座ってお話ししませんか?」
「そうでしたわ。レリーリアラ様も行きましょうか。」
自分を見ながらまだ赤いままの顔で照れ笑いするノーストキタ公爵を見て、改めてフィオナの言う通りの方だとレリーリアラは思った。
…
「先程は、お恥ずかしい所をお見せいたしましたわ。レリーリアラ様。母があなたとお約束しました通り、私もあなたに協力いたしますわ。もちろん、あなたにその気があれば、ですが。今度あなたのお祖父様とお父様とお話しすることになってますのよ。いいお返事をいただけますことを期待してますわ。」
「…はい。」
「何のお話しですの?」
「そのうち分かりますわ。でも、まだどうなるか分かりませんので、いいお返事がいただけましたら、レリーリアラ様からお聞きになって下さい。」
「分かりましたわ。ところで、ノーストキタ公爵様、お約束の方は、本当に放っていて大丈夫なのですか?」
「大丈夫でないかも知れませんわ。お迎えが来てしまいましたわ。」
「「えっ?」」
フィオナとレリーリアラが振り向くとざわざわとたくさんの大人が歩いて来ていた。一番前を歩くのは、そう国王陛下だ。フィオナとレリーリアラの祖父イーデアル公爵もいる。
国王陛下が怒鳴った。
「何をしておる、エリアノーラ。お前がいないと会議が始まらないではないか。早く来い。」
「ヤバいわ。結界張っちゃお~。」
「こら。結界なんぞ張りおって。おい、イーデアル公爵、ウエスターナル公爵なんとかしろ。」
「「無理でございます。」」
「ええい。役に立たぬ二人よのう。何しに一緒に来たのだ。わしがもう少し若ければこの程度の結界すぐ破れるのに。フィオナ、この結界を解いてくれ。フィオナ、フィオナ。」
「ごめんなさい。ノーストキタ公爵様。結界、解きますわね。」
「えっ、待って、待って、王女様。ああっ。」
パリン。
エリアノーラの結界は、解かれた。
『えっ?フィオナ王女様がノーストキタ公爵様の結界を解いたわ。』
結界を解くためには、結界を張った相手よりも強い魔力を持つ必要がある。ノーストキタ公爵様が張った結界は、祖父も西の公爵様も国王陛下でさえ解けなかった。国王陛下は、フィオナ王女様に結界を解くように頼んでいた。そして、五星の方々は皆、それを当たり前のように受け入れている。それは、今、ここにいる五星の方々の中で、フィオナ王女様が一番強い魔力を持ち、皆、そのことを知っていることを意味する。
「酷いですわ。王女様。」
「阿呆。酷いのはお前だ。お前のせいでみんな待っておる。早く来い。何が自分やれ。また今度だ。少しは自分の立場を考えて申せ。この馬鹿娘が。」
「フィオナ王女様。助けて下さい。国王陛下が酷いですわ。私を馬鹿馬鹿と言うのは、お母様一人で十分ですわ。」
「阿呆。お前がフィオナの方が大事とか言って会議に来ぬからわし自ら迎えにきたのだ。わしだって会議なんかよりフィオナと一緒にいる方がいいわ。自分だけ逃げるな。早くこい。馬鹿娘。」
「かわいい姪に向かって、阿呆阿呆、馬鹿馬鹿なんて酷いですわ。助けて下さい、王女様。王女様~~。」
「いってらっしゃい。ノーストキタ公爵様。頑張ってくださいね。」
「そんな~~。王女様~。王女様~~。」
ノーストキタ公爵は、国王陛下に引き摺られて行った。
「フィオナ王女殿下、お友達のご令嬢とお話中でしたか?ご機嫌麗しく何よりですな。私もご一緒してもよろしいでしょうか?」
「おい。何を言っておる。ウエスターナル公爵。王女様もここにいるレリーリアラも私の孫だ。レリーリアラは、カルロスの娘だ。」
「おおっ、そうであったか。ならば二人とも私の孫みたいなものだな。おおっ、こちらの孫も母親似か。良かったな、孫よ。ゴルディオとカルロスに似なくて。」
「どういう意味だ。相変わらず失礼な男だ。行くぞ。」
「お前一人で行け。私は、孫たちとここでお話するのだ。会議は、バラドックに私の代わりに出席するように言っておいてくれ。頼んだぞ。いとこ兄上。」
「はあ~?馬鹿なこと言ってないで早く来い。レリーリアラ、王女様を頼むぞ。」
「はい。お祖父様。」
「おう。私のこともお祖父様と呼んでよいぞ。孫よ。なんなら、お父様でも、お兄様でもよいぞ。」
「いい加減にしろ。早く来い。」
「嫌だ。私は、王女様たちと一緒にいる。王女様~。孫よ~。」
ウエスターナル公爵は、イーデアル公爵に引き摺られ、去って行った。




