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100.レリーリアラの憂鬱 5

二学期末休み最初の日、レリーリアラはフィオナ王女様に会うために王宮に行った。


今回は、フィオナ王女様がレリーリアラを出迎えてくれた。フェリオ王子様は、勉強中らしい。


「フィオナ王女様は、エリアノーラ・マ・ノーストキタ公爵様にお会いになられたことはございますの?」

レリーリアラは、それとなく聞いてみた。


「ええ、私、以前ミューラ大叔母様と一緒にノーストキタ領に視察に行ったことがありますのよ。その時に、ノーストキタ公爵様が領内を案内してくださいましたわ。でも、ノーストキタ公爵様が王都に戻られてからは、お忙しいようでほとんどお会いしてませんわ。」


「ノーストキタ公爵様は、どのようなお方ですの?」


「ミューラ大叔母様によく似てますわ。見た目と、後、性格も少し。ですが、全然違うところがありますのよ。ミューラ大叔母様と違ってノーストキタ公爵様は、とても…」


「とても?」


「泣き虫な方ですわ。」


「えっ?泣き虫って?」


「初めてお会いした日に、ぼろぼろ泣いてましたわ。ミューラ大叔母様は、ノーストキタ公爵様に『泣きすぎて化粧が最悪。きたない』って冷たく言ってましたわ。その次の日は、お話し中にぽろぽろ泣き出して、なかなか泣き止まないので困りましたわ。」


「とても意外ですわ。ノーストキタ公爵様は、王都に戻られて僅か3ヶ月くらいで、四大公爵家第一位の権限や、王国外交代表、王弟陛下の全てを引き継がれましたわ。西の公爵家の五星を二人同時に魔力で従わせたとも聞きましたわ。私、怖い方かと思ってましたわ。」


「私も聞きましたが、その方が意外ですわ。とてもお優しくて、泣いて、笑って、すぐどこかに行っちゃうし。子どもっぽくて、かわいい方だと思ってましたわ。」


「泣き虫で子どもっぽい?想像出来ませんわ。」


「ええっと、そうですわね。後は…、ナイスバディでしたわ。」


「えっ?ナイスバディ?」


「一緒に温泉に入りましたの。私、温泉って初めてでしたわ。ミューラ大叔母様もノーストキタ公爵様も、ぼ~んと出て、きゅっっと絞まってとても羨ましく思いましたわ。体型もそっくりの母娘ですわ。私もいつかあんな風にぼ~んと出てくれるのかしら?自分の幼児体型に落ち込みましたわ。」


「うっ、幼児体型…。」

誕生日の遅いレリーリアラはまだ八歳。当たり前だがフィオナと同じく幼児体型だった。


「だっ、大丈夫ですわ。大きくなったら、そのうち、出る所は出てきますわ。…たぶん。」


「そうですわよね。大きくなったら、そのうち、出てきますわよね、きっと…。いつくらいから出てくるのかしら?」


「さぁ?分からないですわ。そのうち…ですわよ。たぶん。」


「……」


「……」


「……」


「……」


「きっ、気分転換に散歩でもしましょうか?王宮を案内いたしますわ。」


「えっ、ええ、いいですわね。ありがとうございます。」


気まずい空気になってしまった元凶、「幼児体型」を忘れるために、二人は散歩に行くことにした。


フィオナは、外の空気を吸うために庭園に案内しようと歩いていたら、ノーストキタ公爵を見かけた。

ノーストキタ公爵は、お付きの者を10人くらい従えて歩いていた。

「ノーストキタ公爵様。」

フィオナは、声をかけた。

「フィオナ王女殿下。」

お付きの者は、全員が一歩下がり跪いた。

「ノーストキタ公爵様、お久しぶりですわ。最近、お忙しいみたいですわね。ミューラ大叔母様からお話は聞いていますわ。」


「そうなのですわ。お母様ったら、私の許可なくどんどん仕事を持って帰ってきては私に丸投げしますのよ。『あなたの魔力でしたら、こんなの朝飯前ですわよね。期待してますわ。おほほほ。』とかなんとか言って私の返事も聞かずに去っていきますのよ。私、泣きそうなくらい忙しいですわ。」


ノーストキタ公爵は、振り返ると、お付きの者たちに、

「あなたたち、お先にお行きなさい。私は、少し遅れるって言っておいて。」

と言うと、お付きの者の一人が慌てて、言った。

「ノーストキタ公爵様、もうすぐ国王陛下とのお約束のお時間です。陛下をお待たせする訳にはまいりません。」


「いいのよ。少しくらい。フィオナ王女殿下の方が大切よ。文句があるなら、自分でやれって言っておいて。」


「しかし…」


「うるさいわね。さっさとお行きなさい。私は、少しフィオナ王女殿下と一緒にいますわ。王女様、私と行きましょう。」


「ノーストキタ公爵様、お仕事ではないのですか?私たちと一緒にいて本当によろしいのですか?」

お付きの者達がとても困っている顔をしていたので、フィオナはノーストキタ公爵に尋ねた。


「いいのですわ。このまま放っておきたいくらいですわよ。」


「私たちは、庭園に行くつもりですが、ノーストキタ公爵様も一緒に行きますか?」


「庭園。いいですわね。行くわ。行きますわ。あなたたち、私、庭園に行きますわ。国王陛下には、また今度ねって言っておいて。さっ、行きましょう、王女様。」


ノーストキタ公爵は、フィオナたちと一緒に庭園に向かって歩き出した。ノーストキタ公爵は、ニコニコと上機嫌に見える。レリーリアラは、驚いていた。最初に見かけた時は、お付きの者を従えて堂々と歩いていた。背筋を伸ばし、真っ直ぐ前を見、急いでいるのかやや早足で颯爽と歩く姿を格好よく思った。ところが、フィオナが声をかけた途端にぱぁ~っと笑顔になったかと思うと、国王陛下とのお約束の時間を放置して自分たちと庭園に向かっている。真面目なのか不真面目なのかよく分からない方だと思った。


庭園に着くと、ノーストキタ公爵は、いきなりフィオナに抱きついた。


「聞いて下さい。王女様。お母様ったら、酷いのよ。私、最近、忙しいから少しだけノーストキタ領に戻ってお休みしたいってお願いしたのよ。温泉にでも入って、リフレッシュしたかったのですわ。そしたら、お母様、なんて言ったと思いますか?」


「さぁ?分かりませんわ。」


「侍女に予定表を持って来させて、私に突き付けましたのよ。そして『見なさい、エリアノーラ、あなたの予定表ですわ。そんな時間ありませんわ。残念ですわね。おほほほ。』お母様のせいで私がこんなに忙しいのに『おほほほ。』って酷いと思いませんか?私、泣きましたわ。」


「確かに、ミューラ様は、やり過ぎですわね。」


「でしょ?お母様は、昔からそうなのですわ。私が頑張ってやっても出来て当たり前。全く褒めることもなく、次々にやらせ、出来ないと五星なのに、五星でしょとかなんとか言って怒り出すのですわ。私だって好きで五星に生まれたのではないですわ。王女様、私を慰めてください。」


ぽろぽろぽろぽろ涙を流しながら、エリアノーラは、フィオナに抱きついていた。


「いいですわよ。椅子に座りますか?それともこのまま?」


「このまま、王女様に抱きついていたいですわ。」

フィオナは、そのままエリアノーラに優しい魔力を送り始めた。

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