第4話 神隠しの真相。神斗の正体
プライベートが少しバタバタしていたので、更新が遅れました。すみません(´;ω;`)
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「始まりは、この地域の結界が弱まった事からなんだ。結界は、“妖魔指定都市”って呼ばれる場所か全国にある“禁足地”にしかないんだけど、この地域は政府から妖魔指定都市に認定されてるから、結界が張られていたんだよ。でも、百年は持つ筈の結界が弱まって来たんだ。まだ五十年しか経っていないのに」
「じゃ、狐の妖魔はこの弱った所を突いて中に入り、神隠しを起こしたって事?」
「そういう事になるね。僕達《異能者》は封妖魔財団っていう財団に所属していて、各地の妖魔退治や倒せない敵の場合は封印、あとは結界の維持なども努めてるんだけど、今回はいきなり結界が弱まり始めたんだ。普通は少しずつ弱まって行くから大事になる前に対処するんだけど、突然だったから間に合わなかった。だから僕は結界が弱まった原因と結界の張り直し、それから弱まった隙間から入り込んだ妖魔の対処を任されてここに来たんだけどね」
神斗はロングコートの埃を払いながら、蒼太に説明をする。
「そうなんだ。その結界が弱まった原因ってなんだったの?」
「そうだね。二つ原因があったんだけど、一つは結界の内部からの干渉。それから二つ目は、結界外からの“妖力”による圧力によってかなりの負荷が掛かった事だと思う。ここの地域の結界は全国でもかなりの強力な物だったから、相当の“妖力”が掛かった事になる。妖魔だとしても相当な上位の妖魔じゃないとこんな事は出来ないはず何だけど、財団ではそんな妖魔を見つけられなかったんだ」
「見つからなかったって事は、妖魔じゃないって事?」
「その可能性もある。人為的に引き起こされたか、“妖力”を自在にコントロール出来るかなりの上位種が現れたかのどっちかだね。でも、今は狐の妖魔を倒したし良しとしようかなとは思うけど。さすがに戦うと疲れるからね。それより、早く蒼太のお兄さんの所に行こう。蒼太も早く帰らないと」
そう言うと、神斗は陽太がいる教室に向かって歩き出す。蒼太はそのあとを追うようについていった。
蒼太と神斗が教室に戻ると、まだ陽太は眠っている。
「しかたないよ。あの仕掛けはかなり効き目があるからね。でもあと数時間したら目を覚ますと思うよ。でも悪かったね、こんな時間まで居させちゃって」
神斗がそう言ったので蒼太はスマホで時間を確認すると時間は午前零時を回っていた。
「うそ! 早く帰らないと。怒られる」
蒼太は、スマホを見て顔から汗が引いた。
両親はコンビニに行ったものだと思っているため、これほどまで遅くなるとは思ってはいないだろう。
蒼太は急いで陽太を起こすが、全く起きる様子はない。
「蒼太。お兄さんはしばらくは起きないと思うよ。これは僕にも責任があるからお兄さんは僕が送っていく」
「どうやって、運ぶの?」
「それはこの子を使えばいいのさ」
神斗はそう言うと、指をぱちんと鳴らす。
鳴らした音と共に煙がどこからか現れて、煙が薄くなると何かがそこにいた。
「紹介するよ。こちらは夜斗。狼の妖魔さ」
灰色のたてがみに、赤い瞳を持っている狼が威厳を保つ様に神斗のそばに控えていた。
《ワレハ、ヤト。 ヨウロウゾクノオサニシテ、ジントサマニツカエルモノ。ヨロシクタノム、ソウタドノ》
そうたどたどしい日本語を話すと、夜斗は蒼太に頭を垂れた。
プライドが高そうに見えて、そうでもないらしい。
夜斗は、眠ったままの陽太を咥えて放り投げると背中でキャッチした。
その時、陽太からグエッと言う声が漏れた様な気がしたが、蒼太は気にしない事にして学校を後にする。
学校からの帰り道。堂々と夜斗が陽太を運んでいるが、蒼太は人目が気になってそわそわする。
「すごく気になるんだけど、夜斗って周りの人からはどう見えてるの?」
「ああ、それは夜斗の力で人がおんぶしている様に見えてるはずだよ」
神斗はあっけらかんと答えるが、蒼太は目の前の状況に違和感を感じて仕方がない。
時刻はいつの間にか一時を超え、両親に怒られるのを覚悟に家路を急いだ。
「もうそろそろつくのかな? さっきから心配そうだね」
「そりゃ、そうだよ。帰ったら確実に怒られるもん」
神斗は少し笑って「大丈夫。僕が何とかしてあげるから」そう言うと歩みを進めていく。
そして、家の前に着いたが蒼太は気が気ではない。
神斗が笑いを堪えながらいたので少し腹が立った。
「本当に大丈夫だよ。今から僕が蒼太の両親を眠らせて記憶も変えるから。」
「そんな事出来るの?」
「もちろん!」
神斗が家のドアを一回ノックする。その瞬間風の様なものが家を包みこみ、弾けた。
「これで大丈夫だよ。」
「何だか魔法みたいだね……。今でも現実か夢かわかんないよ」
「あはは。そうだろうね」
神斗は笑いながら、言葉を続けた。
「それからさ、ちょっと考えていた事があるんだけど蒼太、これから夏休みだよね? だったらさ、僕を手伝ってくれないかな? 僕も一人だと大変なんだよね。財団も派遣してくれればいいけど、今人手不足だし。良ければ蒼太の“妖力”の使い方も教えてあげるよ。まぁ、無理にとは言わないからさ」
蒼太は、悩んだ。でも興味もある。狐の妖魔には恐怖しかなかったが、よくよく考えると小説の様なファンタジーの世界に自分自身が入り込んでいる事に喜びを覚えたのも事実である。
「わかった……いいよ。その代わりあんな妖魔は出てこないよね?」
「多分大丈夫だと思うよ。こっちに来てすぐに結界を張り直したから出て来ても、蒼太でも倒せるぐらいの妖魔しか出てこないと思う」
「僕も戦えるようになるの?」
蒼太の心の中には、一つの思いがあった。
自分を変えたい。ただ、それだけ。
「もちろん。“妖力”の制御や放出を覚えれば必ず戦えるようになるよ。僕みたいに妖魔を使役する事も出来るしね」
神斗は夜斗を見ると微笑んでいる。
夜斗も神斗に顔を近づけると嬉しそうにグルゥと鳴く。
「それじゃ、ゆっくり休んで。明日は体がまだだるいだろうから明後日の朝九時に生神神社で待ってるよ。夜斗、お兄さんを部屋まで運んであげて」
神斗がドアを開けると、夜斗は家の奥に消えていった。
「神斗、今日は本当にありがとう。まさかこんな事になるなんて思ってなかったよ。ボクの知らない事はまだまだあるんだね。」
「そりゃそうだよ。僕も知らない事だらけだからさ。でも蒼太、訳わかんなくなってるんじゃない? いきなり狐の妖魔とか《異能者》とか封妖魔財団とか意味わかんないもんね」
神斗は笑っている。
「確かにわからない事だらけだけど、受け入れていこうかなと思って。こっちに転校してきた時にそう決めたんだ。そうしないと自分自身を保てなさそうだし」
「そっか。それでいいと思うよ。でも少しずつでいいんじゃないかな? 一気に受け入れたら疲れるからね。少しずつ、少しずつ。ね?」
「うん。ありがとう」
二人が話終えると、夜斗が玄関から出てきた。
「じゃ」そう言うと、神斗は夜斗と共に暗闇に消えていく。
「少しずつ……か」そう呟くと、蒼太も家に入る。
誰もいなくなった深夜の道路には生暖かい空気だけが残った。
第4話 読んで頂きありがとうございます!
ついに神隠しの真相と神斗の正体がわかる回でした!
次の第5話も宜しくお願いいたしますm(__)m
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