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第2話 蒼太と少年。

第2話目でございます。


まだ、バトルシーンには入りません。


第3話には、バトルシーンが入ると思います。

 



 蒼太は、冷蔵庫で冷やしてあった麦茶を取り出して一気に飲み干す。

 飲んだ麦茶の冷たさが身体全身に広がり、蒼太は身体から籠った熱が引いていくのを感じた。

 そのまま、麦茶を二、三杯飲むとまた、母親から声が掛かる。


「ねぇ、ちょっとお使いを頼みたいんだけど」


 母親から、悪魔のような言葉が。


「いいでしょ? 今夜使うのにどうしても味噌が足りないのよ」


 そう言いながら母親は、いつの間にか蒼太の後ろで冷蔵庫を明けながら、中を確認している。


「いやだよ。帰って来たばっかりなのに」


蒼太はそう愚痴ったが、母親は聞く耳を持たない。


「お願い、もう夏休みに入ったんだし暇でしょ? それより早く行ってきて。そうね、余ったお金で何か、アイスでも買ってきていいから。ついでにお母さんのも買ってきて」


 いくら拒否しても、蒼太には拒否権はない。

 マシンガンの様に言葉を()()と、蒼太にお金を手渡してくる。

 蒼太は、この家では母親が絶対である事を思い知らされる。

 また、あの灼熱の中を行かなければならないのかと思うと、憂鬱でならなかった。





 外に出ると本当に暑い。

 わかってはいたが、思わず口から出てしまう。

 どうやら、帰って来た時よりも暑くなっている様に感じる。

 息をする度、暑い空気が肺に入ってくる事に、思わず蒼太は顔をしかめたが、そのまま自転車に跨がるとスーパーに向かった。


 自転車で風を切ると、幾分かはマシである。

 蒼太は道沿いに自転車を漕ぎ進めると、視界に神社が入ってくる。

 少し、遠めのため蜃気楼の様にメラメラとした中に見えたので、蒼太の目には神秘的に見えた。

 しかし、この神社こそが、最近に起きた神隠し事件の現場なのである。

 スーパーに行くにはどうしても前を通らないといけないため、蒼太は足に力を込めて、すぐに過ぎ去ることに決めた。

 もう少しで鳥居の前を通ろうかという時に、蒼太は思わず鳥居から見える神社の境内を見てしまった。

 そこには、夏に着るにはおかしい黒のロングコートを着た人が立っている。

 年の頃は、蒼太より二、三は上だろう。

 その少年は、真っ直ぐに境内を見つめ立ち尽くしている。

 蒼太はその少年を見たとたん、言いようもない感覚に襲われる。

 でも、何故だろう。今日、体育館で感じた感覚とは違う何かだ。

 無理にでも表現するとすれば、どこか優しく感じるのである。

 蒼太は、少年に目を奪われたが自転車は進んでいるので、いつの間にか神社の前は通り過ぎ、大通りまで来ていた。


 この大通りまで来れば、スーパーは目と鼻の先である。

 蒼太は大通りの横断歩道を渡り、反対側にあるスーパーの駐車場に入っていく。

 そして、お目当ての味噌とアイスを二人分購入すると、スーパーを後にした。

 帰り道、また神社の前を通ったが、もう少年の姿はもうなかった。

 しかし、何だったんだろうか。体育館に続き神社でも。

 蒼太は、少し不安に思ったが家につく頃にはもう忘れていた。




 家に着くと、母親は晩御飯の準備をしている。

 母親に味噌と残ったお釣を渡して、アイスを冷凍庫に仕舞うと、蒼太は自分の部屋で横になることにし、二階へ上がり自室に入った。

 当然部屋の中はサウナの様になっていたが、クーラーのリモコンを押し、ベッドに横になると目を瞑る。

 そして、いつの間にか眠りに落ちていった。



 母親の呼ぶ声がする。

 ベッドから身体を起こすと、部屋の時計は夜の七時を回っていた。

 蒼太は自分の部屋から出ると、階段を降りていく。

 一階のリビングに入ると、テーブルには晩御飯が並んでいて、父親と母親は席に着いており、蒼太も自分の席に着く。


「いただきます」


 そう言うと、ご飯を食べ始める。

 父親と母親は、ご飯を食べながら会話をしていた。


「お父さん、知ってる? 神隠し事件の事」


「ああ。新聞にも載ってたからなぁ。しかし、気味の悪い事件だな」


「そうよね。しかも誰もまだ見つかってないみたいだし。心配になるわね。最近は小さな女の子もいなくなったみたいだから」


「そこの神社でだろ?」


 父親はそう言うと、ビールを一気に飲み干す。


「そういえば、昔聞いた事があったな。この辺りがまだ村だった頃、あの神社で神隠しが起こったって」


「その時は、神隠しあった人は帰って来たの?」


  母親は、箸を動かすのを止め真剣に話を聞いていた。


「いや。誰も帰って来なかったそうだ。まぁ、親父に聞いた話だけどな。親父も親父に聞いたらしい。蒼太からすれば、ひいじいさんって事になるな……。それよりさ、陽太はどうしたんだ?」


 父親は、蒼太の隣の席を箸で差しながら母親に聞いている。


「陽太は、部活で遅くなるって。さっき電話があったわ」


 母親はそう言うと、止めていた箸を動かし始めた。


「そうか、大変だな」そう呟くと、父親も食事の続きを始める。


 蒼太は、両親より先に食べ終わると食器をシンクに持っていき、水に浸ける。

 食器を水に浸けたら、冷凍庫から買ったアイスを持ってソファーに座り、スマホをいじっていると玄関から「ただいま」と言う声が聞こえてきた。


 蒼太には、陽太と言う兄がいる。年齢は十七で高校二年だ。


 陽太は、重たそうなショルダーバッグを肩に掛けたままリビングに入って来ると、一目散にソファーに腰を降ろした。


「はぁ~疲れた。練習キツすぎだろ」


 陽太は、転校した先の学校でも、サッカー部の部活に入っている。

 性格も社交的なので、違和感もなく馴染めているそうだ。

 陽太はおもむろに立ち上がると、「シャワー浴びてくる」そう言い残して、お風呂場に消えていった。



 陽太がお風呂から上がり、晩御飯を食べている頃。

 蒼太は、同じリビングでまだスマホをいじっていた。

 なんとなく、動画を見ていたら陽太から話し掛けられる。


「蒼太、この後さ暇だからコンビニ行かね?」


「あー。うん。いいよ、何もする事ないし」


「何か、買ってやるよ」


 そう言うと、陽太は残りのご飯をかきこんだ。




 コンビニに出発する前、リビングの時計は午後九時を回っていた。

 流石に、日の長い夏でも辺りはもう暗くなっている。

 蒼太と陽太は、家から外に出るとコンビニに向かって歩き出す。

 コンビニは、スーパーとは逆方向なので神社の前を通る心配もない。

 位置的には、蒼太の通う小学校の少し行った所にあるので徒歩で行けば、十五分程である。

 しかし、兄弟二人とも自転車を持っているのに陽太は、歩いて行こうと言い出したため、今、二人して歩いている。


「なぁ、蒼太。学校はどうだ?」


 陽太が父親の様な事を聞いてくる。

 陽太と蒼太の兄弟仲は悪くはない。むしろ仲はいい方だと思う。


「まぁ、ぼちぼちかな」


「そっか。何かあったら言えよ」


「うん。ありがと」


「そういえば、夏休みどうすんだ? 何かやる事ないのかよ」


「特に決めてないなぁ。前の学校の友達に会いに行くぐらい」


 兄弟で夏休みの予定を話していると、目の前には小学校が見えてきた。

 夜の学校というのは、何とも言えない雰囲気がある。

 スマホを見ると九時半を回っているため、教職員も帰宅している様で、学校には一切の灯りはついていない。

 気持ち悪い学校を横目に蒼太達は、学校の横の道を歩いている。

 蒼太は歩きながら、校舎を見上げると視界の端に青い光の様なものが見えた。


「何だ、あれ。なんか青く光ってんぞ」


 陽太もその光を見たらしく、二人は学校の横で立ち止まった。

 こんな時間に誰なんだろうか。まだ、教職員が残っているのだろうか。

 蒼太はそんな事を考えていると、陽太はとんでもない事を言い始めた。


「なぁ、蒼太。ちょっと学校に入ってみようぜ。さっきの光、気になるしさ」


「えーっ、やだよ気持ち悪いし。第一、セキュリティとか絶対に掛かってるよ」


「大丈夫だって。ほんの少しだけだからさ」


 そう言うと、陽太は小学校の校門の方に歩いていく。

 ここに一人でいるのも怖かったので、蒼太もしぶしぶついていく事にした。

 校門の前に立つと、学校は不気味な程に静かだ。

 陽太は少し開いた門の隙間から学校の敷地内に入っていく。

 蒼太は、何故、元から少し門が()()()()()()()気にはなったが、陽太の後をついていった。


「どっか、窓とか開いてねぇかな?」


「そんなに都合よく開いてないでしょ」


 陽太はしきりに、窓ガラスを開けようとする。

 蒼太がそろそろ戻ろうと声を掛けようとしたら、ガラガラと音をたて窓が開いた。


「よっしゃ! 蒼太、開いたぞ」


 そう言って、陽太は校舎の中に入って行った。

 蒼太は、呆れながら後に続く。

 どうやら、開いた窓は教室の窓の様だった。

 机の間を抜け、廊下へと出る。

 学校の中は、外とは違い夜にも関わらず蒸し暑い。

 廊下は月の光で照らされていて、ライトもいらない程だった。


「蒼太、さっきの光があったのは三階か?」


 陽太は額に浮かんだ汗を拭いながら尋ねてくる。


「そうだけど、まだ行くの? そろそろ出ようよ」


 そう言っても、陽太は聞く耳を持たず「もう少しだけ」と言いながら階段を探していた。

 蒼太は溜め息をつきながら、階段の場所を教え登り進めていく。

 三階に辿り着くと、一階のよりも更に暑い。

 廊下の先には、非常灯が妖しく周囲を照らしている。


「この辺りだろ。さっき光ってたところは」


 兄弟が辿り着ついた先は、理科室だった――。



 陽太が理科室の戸を開く。



 その瞬間、何か煙の様なものが噴き出して来た。

 その煙は陽太と蒼太を包み込み、煙を吸った陽太はいきなりその場に倒れ込んだ。


「陽太兄ちゃん!?」


 そう、声を掛けても陽太は目を覚まそうとしない。

 陽太の身体を揺り動かしていると、煙が充満した廊下の奥からコツコツと歩く音が響く。




「へぇ、この煙を吸っても起きてるなんて、珍しい事もあるんだね」




 この声と共に姿を表したのは、夕方神社で見た黒いロングコートを着た少年だった。


「お兄さんは、大丈夫だよ」


 少年は、蒼太に近づき陽太の様子を見ながらそう呟く。


「でもさ、この状態だとちょっとまずいんだよね。だからさ、君にも少し眠ってもらうよ」


 そう言うと、蒼太の首もとに衝撃が走った。



 意識がなくなる瞬間――。



 蒼太の目に映ったのは不気味に微笑む少年と、倒れた兄の姿だった――。





読んで頂き、ありがとうございます!


第2話は、1話の倍以上になりました。


第3話では盛り上がるシーンをお届けできると思います。


引き続き、よろしくお願いしますm(__)m

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