第一話 神隠しと少年。
どうも、こんにちは。ひつじと申します。
他の作品も書いていますが、こちらの作品は
バトルものに、なっております。
楽しんで下さると、嬉しく思います。
今回は、始まりの事件を中心にさせてもらいました。
バトルは、もう少し先になると思います。
――雨が、しとしと降っている。
もう梅雨も明けたというのに、ここ数日は雨が止む気配はない。
鬱屈とした雰囲気の空に加えて、夏独自の気温が不快感をよりいっそう高めている。
日本中の国民が不快に思う灰色の空の下、ここ生神神社に、一人の少女の姿があった。
少女は、赤いレインコートを着て、黄色い長靴を履いている。
その手には、レインコートと同じ色の傘が握られていた。
不快な湿度と気温にもかかわらず、少女は楽しそうに笑っている。
「あめ、あめ、ふれふれ、かあさんが~じゃのめでおむかえうれしいな~。ぴっちぴっち、ちゃっぷちゃっぷ、らんらんらん~」
幼稚園で習ったのか、雨の童謡を歌いながら一人でカタツムリと遊んでいた。
しかし何故、少女が一人で神社にいたのかは、あずかり知らない所である。
大方、幼稚園の友達にカタツムリが沢山いるよ。とでも言われたのだろう。
そんなこんなで少女が一人遊んでいると、鳥居の近くにある狛犬の辺りから、声が聴こえてくる。
《オイ……ソコノワッパ……コエガキコエテルカ……》
声が聴こえて、上機嫌だった少女は、急に怖くなり家に帰ろうとする。
しかし、神社を出るにはその声がした所を通らないといけない。
少女は怖いながらも意を決して、走り出した。
少女が狛犬の横を通り過ぎる瞬間――。
少女の身体は何者かに引っ張られ、姿を消した。
持ち主を失った傘が、風に吹かれて転がっていく。
その傘の色が、灰色の空の下では異様に映えて血の様に妖しく見えた。
梅雨時の様に長く続いた雨も止み、夏らしい気候を取り戻した頃、少年が真夏の日射しが照りつく通学路を歩いていた。
(何でこんなに暑いわけ? 身体が溶けそうだ)
少年は心の中でぶつぶつ愚痴っている。
少年が住んでいる地域は、日本で一番大きい湖の側に位置するので、湖から吹く風のおかげで比較的他の地域よりも涼しいはずなのだが、例年続く異常気象のせいでこの地域も他の地域と遜色ない気温になってしまっている。
でも、そんな事は少年にとって知るよしもないことだった。
なぜなら、他の地域から引っ越して来たばかりだったからである。
しかし、よりによってなぜ、小学六年の夏に転校しなければならないのか。
少年は、自分の運命を思わず、呪ってしまった。
そのまま元の学校に通っていれば、素敵な夏休みが送れたのに。
友達もいて、幸せだった。
それが、今はこの様だ。
それでも、少年は気持ちを切り替える事にした。
そうしないと、自分自身が保てないというのも一つの理由である。
少年は、そんな事を考えながら一学期の終業式に向かうため、暑い通学路を歩いて行った。
夏の体育館は、うだるような暑さだった。
全国共通の校長の長話を聞かされる身にもなって欲しい。
少年は目を閉じて無心になることにする。
そうすれば、少しは暑さも校長の長話もましになるだろうと考えた。
そうして、目を閉じた瞬間――。
何が心臓を撫でるような感覚に陥った。
(何なんだろ。この気持ち悪い感覚は。寒気がする)
そう思っていると、この感覚はいつの間にか治まっていた。
閉じた目を開くと校長の話は終わっていて、教頭が夏休み中の注意事項を話している。
もうそろそろ、終わりらしい。
この後は、教室で帰りの会をして終わりだ。
しかし、さっきの感覚は何だったんだろう。とても気持ち悪くまだ鳥肌が立っている。
少年は、腕を擦りながら残りの話を聞いていた。
行きと同じ道を帰ると、家が見えてくる。
世間一般の目からすると、やや大きい家になるのだろう。
そもそも、この家は父親の親。つまり、少年の祖父母の家だった。
でも、この地に引っ越す事が決まって祖父母はこの家に住むといいと、言ったそうだ。
二人は、同じ地域の少し小さな家に引っ越した。
少年の祖父は、この地域の地主らしく何軒か家を持っていたのである。
「ただいま」
少年が帰ると、中から「おかえり」と声が帰って来た。
廊下を通ってリビングに入ると、母親はテレビを見ている。
「ねぇ、蒼太。この事件知ってる?」
母親は、身体はそのままに顔をこっちに向けて訊ねてきた。
少年の名前は、蒼太と言うらしい。
少年――。もとい、蒼太はテレビを見るとニュース番組が流れている。
よくよく見てみると、どうやらこの地域で連続行方不明事件が起こっているらしい。
今までの行方不明者に、関連性はなく、年齢も性別もバラバラだ。
一番最近の事件は、雨の降り続いていた時に五歳の女の子が行方不明になっている。
行方不明になった現場は、生神神社。
名前は、篠宮灯華ちゃん。
テレビのワイドショーなどでは、この地域の名前をとって、生神連続神隠し事件と名前が付けられたらしい。
テレビを、見ていると母親が「怖いわね。蒼太も気をつけなさいよ」とゼリーを食べながら話してきた。
本当に心配しているのかと、蒼太は少し疑問に思った事を母親に悟られない様に心の中で呟いた。
このお話は、昔から思い描いていたものでした。
この度、この様に形に出来て嬉しく思います。
初心者丸出しでお恥ずかしいですが、今後ともよろしくお願いします。




