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第六話

「それじゃあ、先ほどのママの質問に答えようか」

「えっと……。私なんて質問したっけ」

 エミィとパパは笑う。

「エミィもおぼえてなーい」

「ちゃんとメモしているよ。『どういう風に軽減税率制度の対象品目を決めるのが正しいの?』かだね」

 パパはメモを見ながら言った。

「つまり、その質問の答えは、軽減税率制度じゃ、逆進性を改善できないから、正しい方法がないってわけね」

 ママが言った。

「いや。それは、早合点だね」

 パパがそう言うと、エミィもママも驚く。

「でも、さっき、軽減税率制度では、消費税の逆進性を改善できないって言ったばかりじゃない。嘘吐き!」

 ママが怒ると、パパが苦笑する。

「ごめん。ごめん。舌足らずだったね。さっきは、政府が消費税の逆進性対策ではなく、低所得者対策として軽減税率を設定しているから、消費税の逆進性を改善できないって言ったんだよ。さっきも言った通り、消費税の逆進性対策と、低所得者対策は完全に別なものだから、低所得者対策で設定された軽減税率では、消費税の逆進性の改善はできない訳だよ」

「だから消費税の逆進性対策として軽減税率を設定すれば、消費税の逆進性を改善できるってわけね」

「その通りだよ。ママ」

「でも……」

 ママは少し考え込む。

「具体的にはどうしたら良いのかしら」

 ママがそう言うと、パパがこける。

「逆進性は、低所得になると消費税の負担率が高くなり、高所得になると消費税の負担率が低くなるんだから、高所得者の負担率を高めるようにして、低所得者の負担率を下げるように軽減税率を設定すれば良いんだよ」

「なるほど~」

「エミィ。良く解らない」

 エミィは悔しそうに言った。

「消費税の逆進性は、低所得者に不利で、高所得者に有利だって言ったよね。だから、高所得者の有利な部分を削って、低所得者の不利な部分を穴埋めするんだよ」

「なるほど~」

 エミィも納得する。

「でも、それってどうやるの」

 エミィとママが同時に言った。

 全員笑う。

「方法論は、一つしかないけど、方向性は二通りある」

「方向性が二つあるってどういう意味」

「消費税の負担率のコントロールをどうするかだよ。消費税の逆進性を放置しておくと、低所得者の消費税の負担率が高く、高所得者の消費税の負担率が低いわけだよね」

「そうねぇ」

「で、消費税の負担率をコントロールした結果、低所得者から高所得者の消費税の負担率をフラットな感じにするか、累進性があるようにするかだね」

「なるほど~。所得に関係なく、全員の消費税の負担率を同じにするか、低所得者の消費税の負担率を低くして、高所得者の消費税負担率を高くなるようにするかの、二通りあるってことね」

 ママが言った。

「それは、逆進性対策をする人に考えてもらうことにするか」

 パパが言った。

「パパは、どっちが良いと思っているの?」

 ママが聞いた。

「どっちと言っても、消費税は廃止した方が良いと思っているけど」

 エミィとママは笑う。

「そう来たか。廃止ではなくて、どうしても消費税を使う場合は、どちらが良いと思う」

「そりゃ、累進性がある方が良いに決まっている。ビルドイン・スタビライザーとしての機能を持たせないとね」

「なるほどね」

 エミィとママが言った。

「それじゃあ、逆進性対策をするために消費税の負担率のコントロールする方法についてだね」

「やっと消費税の逆進性対策の核心だね」

 エミィが言った。

「高所得者の負担率を高めるのはいたって簡単。贅沢品の消費税率を高くすることだね」

「そうねぇ。物品税でも課税対象になっていたわけだし。ということは、低所得者の負担率を下げるためには、生活必需品を軽減税率の対象にしたらいいのね」

 ママはこう言ったが、パパは苦笑いをしている。

「おしい! ある品目を軽減税率制度の対象にするのは正しいけど、生活必需品を軽減税率の対象にしても意味ないかな」

「どうして!」

「生活必需品は、確かに低所得者にとっても必要だけど、高所得者にとっても必要だからだよ。生活必需品を軽減税率制度の対象にしても、すべての所得層の消費税の負担率を下げちゃうからね」

「うーん。それじゃあ、どうしたら良いの?」

「その質問に答える前に、生活必需品に関して言えば、生きていく上で必要な物に税金をかけるなんて、いかがなもんかと、僕は個人的に思うんだよね。だから、消費税の逆進性対策とは別に考えても、生活必需品を軽減税率制度の対象に、非課税や税率ゼロにしてもいいんじゃないかなと僕は思うよ」

「そうよね。生活必需品に税金なんてそぐわないわ」

「エミィも、そう思う」

 パパもママもエミィの頭を優しく撫でる。

「それでは、低所得者の消費税の負担率を下げたいんだけど……。あまり良い例ではないけど、ヒントになる例を挙げると、軽減税率制度の対象に新聞が選ばれているね」

 エミィとママは頷く。

「ネット情報のあまり確度の高いわけじゃない情報だけど、低所得者は新聞を買わない、買っても一紙のみなのに、高所得者は複数紙購入しているっていう情報があるんだよ」

「それじゃあ、低所得者のためにならないよ。高所得者が得しちゃうもん」

 エミィが言った。

「その通り! エミィちゃん偉い。良い子だねぇ」

 エミィが喜ぶ。

「つまり、新聞を生活必需品かどうかの議論はあるかもしれないけど、新聞を軽減税率制度の対象にすると消費税の逆進性は悪化するんだよ。だから軽減税率制度の対象品目には、相応しくないっということになるね」

「なんで、新聞を軽減税率制度の対象にしたのかしら」

「さっきも言ったけど、僕の推測では、消費税増税の文句を言う人の口に蓋をするためだよ」

「そんなズルい」

 エミィが言った。

「でも、この話で分かったわ。低所得者層が購入して、高所得者層が購入しない品目を軽減税率制度の対象にすればいいのね」

 ママが言った。

「その通り! つまり、贅沢品とは逆の品目。つまり廉価品。高級品の代替品が存在する廉価品が軽減税率制度の対象品目にすると良いんだよ」

「やった! これで、消費税の逆進性は、コンプリートだ」

 エミィが喜ぶ。

「あと、もう少し頑張ってね」

 エミィは首を傾げる。

「例えば、食料品が軽減税率制度の対象になっているけど、適切かどうか、どう思う?」

「生活必需品だから、非課税でもいいんじゃないかしら」

 ママが言った。

「でも、食料品の中には、パパが高所得者の消費税の負担率を上げるって言っていた贅沢品もあれば、低所得者の消費税の負担率を下げる廉価品も混在しているんじゃないかなぁ」

「えらい! エミィちゃん良く気が付いたね」

 パパはエミィの頭を撫でる。

「つまりね。食料品には、廉価品も贅沢品も混ざっているから、食料品という大きなくくりで軽減税率制度の対象にしていいわけじゃないんだよ」

「政治家ってそんなことも気づかないのかしら」

 ママが言った。

「気づいていないんだろうね。残念だけど」

「それじゃぁ、食料品という大きなくくりじゃなくって、食料品をさらに細かい品目に区切って、軽減税率制度の対象にするか、しないか検討しないといけないってことだね」

 エミィが言った。

「消費税の逆進性を解消するという観点で見ればね。そして、ママが言ったように、生活必需品だから非課税にするというのも一つの正解かもしれないよ」

「あら、エミィちゃんばかり褒めるから、私の言ったことなんて忘れていると思ったわ」

 ママが言った。

「そんなわけ、あるわけないじゃないか~」

 パパが慌てながら言った。

「それじゃあ、まとめだね」

 エミィが言った。

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