第三話
「ところで、消費税の逆進性以外には、どんな逆進性があるの?」
「いっぱいあるけどね。そうだね。有名なところでは、薄利多売のビジネスモデルにおける逆進性かな」
「薄利多売?」
「エミィ知っている~」
エミィはパパと家電量販店に一緒に言ったときに習っていた。
「たしか、取り扱う商品の量を増やして、商品一つあたりのコストを抑えて、商品を安く大量に売って儲けることだよねぇ」
「その通りだよ。つまり、薄利多売のビジネスモデルの逆進性は、『商品量[個数]』と『商品一つあたりのコスト[円]』が逆進性の関係にあるわけだ」
「なるほど~」
エミィとママは納得する。
「でも、消費税の逆進性ってどうして発生するの? フェイクニュースだと収入に対する生活必需品の購入金額の割合が低所得者が多くなるからって言っていたけど、真実の話の中には、理由の説明が出てこないわ」
「そりゃ、定義の話をしているわけだから、理由は出てこないよ」
「それじゃあ、理由を教えてね」
「OK。愛するママのために教えちゃうよ」
「エミィも知りたい」
「もちろん。愛しいエミィちゃんも、一緒に教えちゃうよ」
エミィは喜ぶ。
「消費税に逆進性が発生する理由は、非課税品目があって、所得が増えれば、増えるほど、非課税品目に振り分ける金額が多くなり、それに加えていろいろインセンティブがあるからだよ」
パパがそう言うと、エミィもママも首を傾げる。
「非課税品目ってなに?」
エミィが尋ねる。
「消費税を課税しない品目のことだよ。課税の対象としてなじまないものや社会政策的配慮から、課税しない品目があるんだよ」
「非課税品目があるから、逆進性が発生するなら、非課税品目をなくしたらいいんじゃないかしら」
ママが尋ねる。
「銀行に預金するとかまで、消費税を課税するのかい? そもそも銀行に預金するのは消費じゃなくて、貯蓄だから、課税する対象にはなじまないでしょ」
「でもなんで、所得が増えると、非課税品目に振り分ける金額が増えるの?」
エミィが尋ねる。
「非課税品目と言うのも変なんだけど、貯蓄関係にお金を回すと、当然消費税はかからないよね。貯蓄は基本、収入の少ない人より、収入の多い人の方が貯蓄にお金を回せるよね」
「そっか、貯蓄率が高い高所得者の方が消費税の負担率が下がるんだね」
エミィが言った。
「そうだよ。エミィちゃんは賢いねぇ」
エミィは褒められて喜ぶ。
「問題はそれだけじゃないんだよ。例えば、財布にお金を取っておく、財布貯金は非課税だよね」
「そもそも取引じゃないしね」
ママはそう言うと笑う。
「そう、でもホームレスやネットカフェ難民ができる。数少ない貯蓄だね。で、彼らよりちょっと裕福になると銀行預金ができるようになる。場合によっては給料が銀行振込の場合もあるね」
「そうねぇ」
「財布預金より、銀行預金の方が、利便性もよく、しかも、少ないけど、利子も付く。大分、財布預金より有利だよね」
「まあ、そうねぇ」
「かろうじて、銀行預金ができる人たちよりもう少し裕福になると、生命保険や個人年金とかにお金をかけたりできるようになる」
「確かにそうねぇ」
「生命保険で掛け捨ての場合は、貯蓄性はないけど、いざって言うときは、銀行預金より大きなリターンが期待できる。個人年金も銀行預金より利率が良い貯蓄となる。そして、裕福になると裕福になるほど、その掛け金は大きくなり、リターンも大きくなる」
「まあ、それはそうだけど、それと非課税とどう関係あるの?」
「そりゃ、保険料は非課税だからだよ」
「え! そうなの?」
「ちゃんと自分が払っている保険料を確かめようね。
エミィちゃんは、まあ、そういうもんだと覚えておいて」
パパがそう言うと、エミィは頷く。
「確かに大事な保険の掛金まで消費税がかかるの変よね。買物と違うんだし」
「ホームレスやネットカフェ難民には、無縁だけど、保険に入れる人たちはそういう人たちより恵まれているし有利だということだね」
「ちょっと低レベルな話だけど、そうね」
「さらに言うとね。株式投資や債券投資というものもあるよね。銀行預金や保険や個人年金より、よりハイリターンが望める」
「もしかして、それも非課税?」
「ピンポーン。当たり!さすがママだねぇ」
「と言うことは、なんだか良く解らなけど、お金持ちほど、税金を払わなくてよくて、さらにお得な使い道があるって言っているように聞こえるんだけど」
「その通りだよ。基本的に資本主義社会は、金持ちに有利に作られているんだよ。それに輪をかけて金持ちに有利にする仕組みが消費税ということなんだよ」
ママは絶句する。
「そんな酷い税制度を放っておいて良いの?」
エミィが尋ねる。
「パパは、間違っていると思うよ。だから、消費税に関する発言の場があったら、消費税減税、できれば、廃止をして欲しいと思っていると言ってきた。エミィちゃんが大人になる前にそうなったら良いと思っている」