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ウィザードオブバージン  作者: チャンドラ
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生徒会長

 俺は魔法の杖を右手に持った。魔法の杖は術者の魔力をコントロールしてくれる自転車でいう補助輪の役目をしてくれる。

 それゆえ、魔法使いの卵達にとっては必須アイテムである。

 まぁ、俺には必要ないのだが。魔法の杖は長い時時間を掛けて育った樹木から作られている。


「ウィンドボール」

俺は呪文を唱えた。風魔法はあまり得意じゃないので練習がてらウィンドボールの魔法をすることにした。

魔法の杖から、緑色の魔法陣が発生し、風の塊が生まれていった。

頭の中で台風を思い浮かべた。


木々が台風によって折れそうになっている様子。

アナウンサーが台風に苦戦しながらリポートしている様子。

 そして、台風によってミニスカートを履いているお姉さんがパンチラした様子を思い浮かべた。


 風の塊が大きくなった。大きさは佐々木のサンダーボールくらいに留めておいた。


「すごい! すごいよ、藤嶋君!」

西宮が褒めてくれた。嬉しい。

 しかし、西宮が褒めたせいでクラスみんなの視線が俺に集まった。

 マリー先生も俺のほうを見ている。

「すげー、藤原! 佐々木と同じくらいの大きさじゃね?」

「藤原、やるぅ!」

 俺を褒めてくれる声がちょくちょく聞こえた。結構嬉しい。だがしかし。

 俺は藤嶋なんだが。


「ははは、たまたまだよ」

風の球だけに。なんつって。さてとそろそろ魔法を解くか。目立ちたくないしな。

すると、風の球が勝手に動き出した。クラスメートたちの方へ近づいた。


「わわ!」

 風の球が当たりそうになったクラスメートは驚いている。しかし、すんでのところで当たらない。その後も他の生徒の当たりそうになりつつもギリギリのところで風の球は避けていく。


 これは……?

俺はウィンドボールを解除した。

風の球は消えた。


「すごい、 藤原君! もうあんな自在に操れるなんて!」

「今度教えてよ!」

 次々と俺から教えを請おうとする者が近づいてきた。ぶっちゃけそれなりにいい気分だが、俺は藤嶋である。


「あれれ〜勝手に球が動いちゃったな。多分、もうできないや。あはは、あと俺、藤嶋だから.......」

 お茶を濁しつつ、自分の名前を覚えてもらうように努めた。


 俺はマリー先生の方へ目をやった。

 ふっと勝ち誇ったようにマリー先生は微笑んでいる。くそ、あの先公......

 俺のウィンドウボールにサイコキネシスをかけやがったな。


 そんな憂き目にあいつつ、今日の実技の授業は終わった。

梅組の戻る際、松組の教室の前を通ったのだが、松組と思わしき生徒の会話を聞いた。どちらもギャルっぽい風貌をしている。

 それでも松組の生徒だからアークミー量は中々高いのだろうが。


「うちのクラスさ退学する人多くない? まだ一ヶ月ちょいしか立ってないのに二人退学者出るなんて普通じゃないよね」

「だよね。あの真面目そうな谷内がヤって退学とかマジやばいよね〜」

 松組の生徒が不純異性行為で退学したのか。珍しいこともあるもんだな。

 俺はさほど気にせず教室に戻った。


 席に着いた。鈴鐘が仏頂面で自分の席に座っていた。

「あなた、才能あるのね。本当......腹が立つわ」

 本当に腹が立ってそうな顔をしてんな。そう言いたかったが言わないことにした。

「たまたまだ。偶然できただけでもう一度できるとは限らないさ」

 あくまで自分の実力を隠すようにした。

「その余裕ぶりが気にくわないのよね」

 うわぁ......めっちゃ嫌われている。

「よーし! みんなホームルームを始めるぞ!」

 マリー先生が教室に入ってきた。もう少しで帰れるな。帰ったら何しようか......ゲームでもするか。

 帰ってからの楽しみに胸をときめかせていた。

「明日も実技の授業あるからみんなしっかり休んでおくようにな。それと鈴鐘、藤嶋。放課後、職員室まで来てくれ」

 マジか......勘弁してくれ。バックレようかな。

「言っておくがばっくれたらただじゃ置かないからな」

 くそ、心を読まれたか。

 前の戦いの時といい、マリー先生は心を読むというトンデモない魔法が使えるようだな。

 まぁ、そんないつでも使えるってわけでもないと思うが。


 ホームルームが終わった後、俺と鈴鐘は職員室へと向かった。

「はぁ、なんでまたあなたと一緒に......」

 鈴鐘は心底うんざりしているようだった。

「俺だって今日は早く帰りたかったつーの」

「なら帰ればいいじゃない」

 鈴鐘は冷たく言い放った。

「そんな恐ろしいことができるか」

 それができたら苦労はしない。マリー先生のに力を隠していることを知られているという弱みを握られているのだから。


 鈴鐘と雑談? しているうちに職員室に到着した。

 俺と鈴鐘は先生のところに向かった。マリー先生はパソコンで何やら調べ物をしているようだった。

 穴が開くくらい画面を凝視している。

「お疲れ様です。マリー先生」

 パソコンに夢中なマリー先生に鈴鐘は話しかけた。マリー先生はこちらの方を見た。

「ああ、すまん。ちょっと夢中になりすぎていた」

「それでマリー先生。何の用でしょうか?」

 俺はすぐさまマリー先生に要件を訊くことにした。

 頼みごとならとっとと終わらせて帰りたい。

「ちょっと付いてきてくれるか?」


 そう言われ、俺と鈴鐘はマリー先生についていった。

「入ってくれ」

 とある部屋に入るように促された。この部屋は......生徒会室?

「失礼します」

 俺は挨拶をして生徒会室に入った。

 部屋の中には正方形に机が並べられており、真ん中の席にはメガネをかけた背の低い短めの整った顔立ちの女子生徒とスラリとした体格で背の高い黒髪の男子生徒が座っていた。男の方は顔は個人的にややイケメンな気がする。


「マリー先生、待ってましたよ。それで......この生徒たちは?」

 男の方の生徒が訊いてきた。直感的に俺はこの生徒が只者ではないことが分かった。

「この二人は私の生徒の藤嶋暢と鈴鐘凛奈だ。今回の件で役に立つんじゃにないかと思って連れたんだ」

 今回の件? どういうことだ?

「先生、今回の件とはどういうことですか?」

 俺が質問する前に鈴鐘の方が先に質問をした。


「最近、うちの生徒が次々と不純異性行為で退学されてるのは知ってる?」

「ええ、まぁなんとなくわ。松組で噂になってましたから」

 鈴鐘が答えた。俺も廊下でそんな話を聞いたがそれがなんだというのだろうか

「そう。ここ最近うちの一年から三年までの松組の生徒を中心に、次々と不純異性行為で退学している。退学した生徒に訊いても覚えていないといい何も言おうとしない。さすがにこれは何かあるんじゃないかと思ってな。単刀直入に言うとあなたたち二人に事件の調査に協力して欲しいんだ」

 まじか、うわぁメンドクセェ......なんとか断りたい。


「えっと、なぜ僕たちなんでしょうか?」

 俺はマリー先生に質問した。返答次第ではお断りさせていただこう。

「お前ら二人が一番、梅組で優れているからだ」

 そんな理由なのか。ふと、鈴鐘の方を見ると少し微笑んでいた。こいつが笑うとは珍しいな。

 中々かわい......

 目があうとすぐに元の仏頂面に戻った。やっぱり可愛くないなうん。


「なるほど......そういうことであれば私は協力させていただきます」

 鈴鐘は協力する気満々か。

「悪いですが僕はお断りします。俺なんかより佐々木の方が優れていると思いますし」

 俺はあくまで逃げ腰のスタイルで行くことにした。

「だめだ。お前は絶対に協力しろ。お前の力は必須だ」

 マリー先生はものすごい怖い顔で言ってきた。


「先生、彼はそんなにすごい生徒なんですか?」

 男の方の生徒が興味津々という顔をしている。

「ああ、授業を見てて思った。こいつの潜在能力は半端じゃない。必ず役に立つ」

 鈴鐘は悔しそうな顔をして俺の方を見てきた。

 おいマリー先生、俺は持ち上げるのは止めてくれ。

 どんどん引き下がれなくなるだろう。


「そういえば紹介が遅れたね。僕は生徒会長の渋谷綾しぶたにりょうだ。二人とも協力感謝するよ」

 おい生徒会長さん。何勝手に協力するってことで話を進めていらっしゃる?

「私は副会長をやってます。泉五十鈴いずみいすずと言います。どうぞよろしくお願いします」

 泉さんは礼儀正しくお辞儀した。


「言っておくがこの二人は学園の生徒の中でも五本の指に入るくらいの実力を持っている。対人戦闘においては私でも勝てないかもしれない」

 ほう、マリー先生がそこまでいうとは。さすがに強いのだろうか......

 正直なところ手合わせをしてみたいという気持ちが起こりそうになった。


「おいおい藤嶋。さすがに止めた方がいいぞ。学校がボロボロになるからな。また掃除はしたくないだろう?」

 この......また、心を読みやがった。

 鈴鐘のみがキョトンとした顔をしている。

「ふふ、面白いですね、藤嶋くん。まぁそれは後でということで、みんなで事件の解決を目指していこうか!」

 渋谷さんは不敵な笑みを浮かべながら事件解決を促した。

 やれやれこの生徒会長、マリー先生以上に面倒くさそうだ。

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