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ウィザードオブバージン  作者: チャンドラ
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サイコキネシス

 西宮を助けた次の日から早速、魔法の実技の授業が始まった。

「いいか! お前たち、杖に魂を込めろ! そして唱えろ! サイコキネシスと。そうすれば、物体を動かすことができる」

 俺たちは先生から配られた、古い木で作られた魔法の杖を使い、サイコキネシスの使い方の授業を受けていた。

 魔法は初めて使いものは大抵、魔法の杖を使用する。

 なくても魔法を発動させることができるが、それはある程度慣れないと難しい。


 --サイコキネシス

 魔法のことを詳しくない人でも一度は耳にしたことがあるだろう。

 念じることによって、物理的なエネルギーを発生させて、物体を動かす能力のことである。

 当然俺も使える。杖なしで。

 しかし、ここはクラスで程々にできるくらいに見せるために適度に手を抜くことにした。


「すげぇな、佐々木もうそこまでサイコキネシス使えるのかよ!」

 佐々木の方を振り向くと、あいつはテニスボールをサイコキネシスで自由自在に動かしていた。

 ほう、確かにすごい。テニスボールを宙に浮かせ、頭の周りでぐるぐると回転させたり、まるで魔球のようにテニスボールをぶれさせている。

「佐々木はアークミー量こそまだ未熟だが、コントロールが上手いようだな」

 感心した様子でマリー先生は褒めた。

 小さい頃とはいえ、俺もサイコキネシスを使いこなせるようになるまで、少々時間がかかった。

 基本的にこの魔法高校に入学する前に、誰かに魔法の訓練を受けるなんてことはほとんどない。

 理由は二つある。


 一つ目は魔法を教える人材が不足していること。

 少しずつ魔法使いという職業が普及したとは言え、そこまで日本にいる魔法使いの数は多くはない。

 もし、家庭教師等で魔法使いを雇おうものならかなりの額になる。


 二つ目は中学生以下の年齢の者が魔法をしようすると暴走するという警告を政府が出しているからである。

 精神的にまだ未熟な中学生以下の年齢の者は自信の魔力をコントロールすることができず、魔法を暴走させることがある。これは実際に事例がある。

 大半の生徒は魔法に関することは座学で勉強してくるだろうがほとんどのものは魔法を入学時は使えない。


 --だが、俺は違う。俺は幼少の頃から『ある人』に魔法の基礎を叩き込まれた。

 一般の生徒が優れた魔法使いとして成長できるかは入学してからの頑張りと才能といったところだろう。


 俺は他の生徒がどんなもんか気になり、俺は辺りを見渡した。

 すると、鈴鐘と目が合った。ふんっとソッポを向かれた。

 相変わらず美人なのに愛想がないな。

「サイコキネシス」

 鈴鐘は杖を持っている手に力を込め、呪文を唱えた。

 テニスボールはゆっくりと鈴鐘の胸のあたりまで浮かび上がり三秒ほど宙で静止した後、ポトンと地面に落ちていった。

 初めてにしては中々上手いな。俺は手を抜いて足元までしかテニスボールを浮かしてなかったせいか、鈴鐘は少しばかり勝ち誇った顔をしている。


 よし、ちょっとからかってやるか。

 俺は力を抜き、呪文を唱えた。

「サイコキネシス」

 俺は頭の位置までテニスボールを浮かし、数回ほどバウンドさせた。

 あまり目立ちたくないが、みんなの視線が佐々木に向いているから大丈夫だろう。

 鈴鐘の方を見ると、ぐぬぬ......と悔しそうな顔をしている。

 俺はドヤ顔をしてやった。

「わぁ! 藤嶋くん、すごいね!」

 西宮が大きな声で俺を称賛してきた。

 おい、西宮君? 

「おー! えっと、藤原君? もすごいサイコキネシス使えるんだな!」

 佐々木の近くにいた、生徒が俺の苗字を盛大に間違えてくれた。

 おいおいおい。俺は藤嶋ですよ。

 確か、佐々木といつもつるんでるややロン毛の癖毛で頭のこいつの名前は樋渡一徹ひわたりいってつだったか。

「ほう、藤原。お前もなかなかやるようだな」

 ちょっと先生? あなたも俺の名前間違ってますよ?

 俺はすぐにサイコキネシスを解除し、物凄く疲れたフリをした。

「た、たまたまですよ。あははは」

 俺は愛想笑いをした。

 マリー先生は訝しげな眼で俺の方を見ている。やばい、ばれただろうか。


「ねぇ、藤嶋くん。僕にサイコキネシスのやり方教えてくれないかな? 上手くできなくて......」

 西宮は上目使いでまるで小動物のような可愛らしい眼でお願いしてきた。

 くそ、怒る気が無くなっちゃったじゃないか。

「お、俺で良ければ」

「うん、ありがとう!」

 この学校で西宮は俺の技量をある程度知っている。

 友好関係を持っておいて損はない。

 すると、マリー先生がパンと手を叩いた。

「いいか。お前ら。一学期の目標としてこのテニスボールでラリーできるようになってもらうからな!」

 すると、明石が質問をした。

「ラリーというのは?」

「うむ。見本を見せたほうがいいか。佐々木、杖とテニスボールを持って、私から離れた反対側の位置に立ってくれ」

「はい」

 佐々木はマリー先生が指定した位置に移動した。

「よし。それじゃ、佐々木はサイコキネシスを使って私にボールを投げてくれ。思いっきり力を込めてもいいぞ」

「だ、大丈夫なんですか?」

「もちろんだ」

 マリー先生は腕を組みがら。大胆不敵な笑みをした。

「分かりました。それじゃ行きます。サイコキネシス!」

 佐々木は思いっきり声を張り上げ、テニスボールにサイコキネシスをかけた。

 中々の速さでテニスボールをマリー先生の方に投げた。

 時速は百二十キロくらいだろうか。

「サイコキネシス」

 マリー先生はノーモーションでサイコキネシスを使い、テニスボールを佐々木に投げ返した。

 テニスボールは時速の二百キロを軽く超えてるんじゃないかという凄まじい速さで佐々木の横を通り抜けていった。

「本来なら、佐々木がまたサイコキネシスでテニスボールを投げ返し、私が投げ返す。その繰り返しだ。これがラリーだ。分かったか?」

 実に恐ろしい力を持った先生だ。

 俺でもサイコキネシスであの速度のテニスボールを投げれるのか分からない。俺以外の生徒はマリー先生のすごさに唖然としている様子だった。

「一学期までにサイコキネシスラリーが三十回以上できるようになること。ボーリングくらいの重い物でも持ち上げれるようになることが。目標だ。できなかった奴は補習あるから覚悟しておけよ!」


 補習か。さすがにそれはやだな。

「藤嶋くん、僕大丈夫かな?」

 不安そうな顔で西宮が訊いてきた。

「心配するな。お前なら大丈夫だ。俺ができるだけ分かりやすく教えてやる」

「あ、ありがとう」

 西宮。俺はお前を見捨てはしない。

 それにお前がいないと俺は一緒にラリーをしてくれそうな人がいないからな......

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