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タッタッタッタッ・・・・・・・・ダン


バタバタバタバタ、バタン


勢いよく、ドアが開いた。


「ただいま、セラ。いい子、してたか」


大きな声に反応して、目が覚める。

目の前には、少年の顔。10歳位だろうか。

大きな目。整った顔立ち。

やんちゃそうだけど、将来絶対イケメンになるであろうな、なんて素直に思う。


「うん?どうした?」

少年は、私を抱き上げる。


(えっ、抱き上げる?私を、少年が??)


抱き上げられて見えた自分の体を見て、固まる。


記憶が甦る。そっか、私は「私」だったから・・・。

あの体に、私の意識が入ったってことか。


もう一度、自分を見下ろす。また、あの時よりも時間が経ったのであろう。体はまた、大きくなっていた。


「私は、今、何歳?」


疑問に思ったことが口に出ていた。


「そんなの5歳に決まっているじゃないか」

「・・・と、いうことは、あの時から3年経ったってことか」

ぶつぶつ呟く私を、不思議そうに見てくる少年。


「ところで、あなたは、誰?」


「まだ寝ぼけてるのか、セラ。兄ちゃんのこと忘れるなんて、悲しいぞ!」

ぎゅうぎゅうっと抱き締めてくる。

苦しい。

足をバタバタさせて抵抗する。


「苦しいから、離して‼」


苦しいながらも、大きな声で喚くと、すぐに放してくれた。

一歩離れる。その目には、困惑が見てとれた。


シーンと静まり返る部屋。神獣が側に寄ってくる。


「ど、どうしたんだよ、セラ。一体どうしたんだよ、変だぞ」




この時、私は選択に迫られた。

一般的な転生小説なら、きっとそのまま、この少年がいう「セラ」として過ごしていこうとするだろう。

それもいいかもしれない、新しい自分を作り上げればいい。

でも、それって、どこかで、世界の常識とのズレが生じないだろうか。変人に見られるのは、御免だ。

だったら、最初から、自分の状況を言って、受け入れてもらうほうがいい。もし、受け入れてもらえないなら、次、考えればいい。これは、私の夢の世界だから。



「私は、セラじゃなくて。ナナオだよ。こことは、違う世界から、来たんだ」


「は。な、何言っているんだよ。セラ」

「だから、私は、セラではないっていっているでしょ」

少しきつめに言ってしまった。


兄と名乗った少年は、意味がわからないといった様子だ。


その時、階下から呼ぶ声が聞こえた。

「おーいっ、ラルク。昼飯にするぞ。セラ連れて降りてこい」


ラルクは、一目私の方を向いた。が、くるっと、後ろを向くと、勢いよく部屋を飛び出していった。


「イルト兄さん―、セ、セ、セラが壊れた-!!俺のセラが―・・・・・」



おいっ。壊れてませんけど。

ま、これが普通の反応だよね。 うんうん。


「受け入れてもらえなかったら、あなた達よろしくね」


「「おまかせを」」

2体が、口を揃えて言う。


「しゃべった・・・。これで一人じゃない。よかったー」


「私達は、あなたと共にあります」

「あなたを守るよう、そのために私達は、目覚めたのです」

「この小さいのが、アストライオス。そして私が、クロノス」

「なんなりと、お申し付けください」



話をしてくれるだけで、何と心強いことか。


「ありがとう。とりあえず、名前、アス、クロって呼んでもいいかな。私のことは、ナナオで」

「「承知」」

「あ、ね、どうして、私、こんなことになってるの?前までは、夢の中では、見ているだけだったのに。今じゃ、物はさわれるし、話せるし、相手にも見えてるみたいだし。それに、何で子供に」


気になっていることを一気に聞くが、返ってきた答えは、はっきりしないものだった。


「「お目覚めになったからです」」


とか、


「「 その時が来たからです」」

とか。


ただ、分かったことは、夢のこの世界も実際の世界であって、消えてなくなるものではないらしい。世界は、いくつも存在していて、空間がそれぞれ違っているだけのこと。


私が夢を見ていたとずっと思ってきていたことは、夢ではなく、空間を移動していたということらしい。


ただ、何でか、今になって、こっちの世界に干渉できるようになっちゃたんだけど。

赤ちゃんからだったのは、体が世界に馴染めるようにするためなんだってさ。


私の役割が何かあるのか、それもさっぱり分からないけど、とりあえず、現実の世界の私と今いる私はつながっていることが分かったので、八宵のためにもネタ探しをするようにしようっと。


ぐぅーーーっと、腹の虫が鳴いた。

とりあえず、下へと降りて何か食べよう。





******************







階段を降りると、そこには、3人の男がいた。

一人は、少年ラルク。もう一人は、先程の声の持ち主、青年イルト。そして、ひげをかっこよく生やした壮年の男がいた。大方、二人の父親だろう。


降りてきた私を一斉に見る。

「セラ、お腹が空いただろう。御飯にしようか」

「ラルクが変なこと言ったみたいだが、気にするな」

「えっ、ひどい。本当にさっき、セラが、セラじゃないって、言ったんだって」


男達は、また、言い合い始めようとする。


「話は、後でもいいですか。お腹が空いたので、御飯をいただけると、ありがたいのですが」


「「「・・・・・・」」」


顔を見合わせる3人。



「あの」


「あ、ご、御飯ね。待って、よそうから」

イルトが動き出す。


他の二人も 、我に返ったのか、席へと着いた。


「ここへ」


教えてもらった場所へ座る。


目の前に食事が並ぶ。豪華とは、言えないが、庶民の私にとっては、十分な量だ。


「ありがとうございます」

言うと、驚かれた。



全員が席に着いた。


「いいただきます」


いつものくせで、あいさつをしてから食べ始める。


衝撃といった、その目。

今だけ、今だけ。


もぐもぐもぐ。

新鮮な野菜に、スープ。ナンみたいな柔かな生地の食べ物。

美味しい。


次々に食していく。


「美味しかったです。ありがとうございました」


「あ、おおそまつさまでした。あ、えっと・・・」


「ナナオです」


「本当に、セラではないのか・・・」

「はい、名前は。えっと、ただややこしいのは、みんなが言うセラが私なんです」


ラルクは頭を抱えた。意味がわからないというようだ。イルトも首を傾げている。

その中で、父親だけだった、分かっていたのは。


「自分の名前がちゃんとあるんだな。そうか、やはりな。こんな日が来るだろうことは、分かっていたんだ」

「「???」」


「君は、ナナオという名前があるんだな。朝出かけるまでは、何ともなかったってことは、さっき、目覚めたばかりということだな」


「!?はい!そうです」


「そうか。そりゃあ、腹がへるだろう。もっと食べるか?」


「何、言っているんだよ、父さん。どう見たって、セラだろ?」

「い、意味がわからない」


「ああ、セラはセラだ。だが、その名前は、私と母親のメアリーがつけたものであって、本当の彼女のものではない。彼女の本当の名前が、ナナオだったという話さ」

くいっと、キーラを飲み干す。


「父さん・・・、俺たちが知らないこと、何か知っているんだね」

「ああ。お前達に話していなかったことが・・・・ある」






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