表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

2


ふわっと体が浮かぶ。花の優しい香りに 包まれる。とても落ち着くこの感じ。

目を開ければ、それは、もう夢の中。


昨日見た夢の続きだろうか。私の目に写る、球体とそれを守る2体の獣。

なぜか、私は、それに付いて移動しているようだ。

(あれ?いつもは、好きなところへ行けるのに。なんだろう、離れられない?)

疑問符が頭に浮かぶが、まあ、仕方がない。


どれだけ移動したのだろうか。町や村をいくつも通りすぎていっただろう。たぶん。

たぶんというのは、あまりにも移動が早くて、下を見ていたら、酔ってきて途中ダウンしたからだ。でも、体は勝手に付いていったけど。


やっと止まったと、周りの様子を見れば、カストレア王国の中央都市からは、大分離れた田舎だった。


2体の獣は、そっと下へと降りた。

(えっ、そこに降りるんですか。)


降りたそこは、牧場のような場所だった。

馬たちが気配を感じたのであろう。寝ていただろうに、2体が降りるその場所を開けて、囲むように居直す。

警戒しているかと思えば、そうでもない。ビリビリ感ではなく、なんというか慈しむかのような温かな眼差しだ。

それは、馬たちだけでなく、騎獣として活躍する、ヤコンやカトーラ達もだ。普段、絶対一緒に関わることがない獣たちが、その輪に集まってくる。





2体の獣が、角を球体に押し当てる。

獣たちが、一斉に膝をおった。


光輝く球体は、みるみるうちに、その光を膨れさせていった。

(巻き込まれる‼)

思った時には、既に遅し。

気づくと光の中だった。




「「お目覚めに」」


私は、確かに、そんな声を聞いた。


「 」


誰かが答えるその声も。








光が収まったその先にあったものは、いや、あったのは、


赤ちゃん・・・・・



白く柔らかな布に包まれて、すやすやと眠っている。その赤ちゃんを囲むように2体の獣。

でも、その姿は、先程までの神々しさを全く感じさせるものはない。

巨体は消え去った。

その代わりに1体は、大人が一人乗れる位の大きさに。もう一体は、肩に乗る位の大きさに。


しかし、さすがは神獣。大きさは変わっても、威厳は変わることがない。

スッとその目が私を捕らえたような気がした。


どきっ。


でも、びっくりしたけど、不思議と悪い感じがしない。それよりも、なんだか懐かしいような。


その目がやっと私を解放したとき、いきなり1体が、空へ向かって啼いた。


それに合わせるようにもう一匹も。


囲んでいた獣たちは、さらに身を低くし、頭を下げる。

(何なの、これ)

その光景は、なんとも異様だった。

一瞬の静寂。そして、その後の咆哮 。


(もしかして、私、すごい場面見ちゃったかも‼)


気持ちが高揚していくのが分かった。

どれくらい啼いていたのだろうか。

その後、2体の獣の 一啼きで終わりを迎えた。

静かになった獣たちは、身を寄せあいながら、そっとその場にて眠りについた。


(今日は、ここまでかな。起きたら、すぐに書き留めなきゃ)

私もまた、ふかふかの獣に寄りかかって、そっと眠りについた。






・・・・・いつもなら、これで、夢が覚めるはずだった。



でも、目覚めて、私が見た景色は、自分の部屋ではなく。あの夢の世界だった。





(ここは?)


周りを見渡すと、そこには、幼女が寝ていた。

そして、その子の側には、2体の獣が寄り添っていた。


(じゃあ、この子は、あのときの赤ちゃん!時が進んだってことか)



すやすやと眠る幼女を、そっと見る。

神獣たちは、私の存在が分かっているのであろう。近付くと素早く反応したが、襲いかかることもなく、ただ見守ってくれるようだ。


幼女は、2歳になったかどうかって位の姿をしていた。

黒い髪に黒い眉。

真っ赤なほっぺに、ぷくぷくした体・・・・・


どう考えても、一般的な日本人の子供だ。


でも、それだけでなはく、すごく、引っかかることがある。


見覚えがある、その子に。


似てるのだ。どこから、どう見ても。


私の子供の頃に。




え。


えっと、どういうこと。


かわいいわぁ、なんて言ってられない。

何か気味が悪い。


バッと、その場から離れる。

部屋を出ようとしたが、出られない。

何か強制力が働いているかのようだ。

幼女に引き寄せられる。


離れようともがく私。

それを見つめる、2体の神獣。


何度も試すが、結果は変わらず。

もがき疲れて、もうその場に座り込む。

諦めて、幼女をもう一度見れば、閉じていたその目がぱっちりと開いていた。

その目には、私が写し出されている。


見れば見るほどそっくり。


幼女が私に向けてだろう。両手を伸ばしてきた。


ついつい反射的にその手にタッチをしてしまう。


「お帰り」


声が聞こえた。


その声がどこからきたかは、もうわかる。


頭に流れ込むあの記憶。


「「これは、私だ」」


この幼女は私で、あることに間違いない。



「「よくぞお目覚めに」」


神獣たちがいう。




そっか、私だったんだ。なーんだ、そっかあ。そっかあ・・・?


私の意識は、ブラックアウトしていった。



▶▶▶▶▶▶▶▶▶▶▶▶▶▶






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ