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大きく美しく輝く月

満天の星

澄みわたる空気


何カ月ぶりだろうか。

こんなにも癒やされる夜というのは。

男は、のんびりと椅子に腰掛け、甘い香りの入ったグラスを傾ける。


既に夜も遅いため、周りの家々の光はない。もちろん、この男の家の光も。

静まり返った地上を明るく包む星と月の光。


「ほぅ.......」

男は、これまでの忙しい日々を忘れ、今、この時を十分に堪能していた。

明日は、久しぶりの休みだ。起きるのが遅くなったとしても、誰も文句は言わないだろう。

口許が緩む。

空になったグラスにトポトポと二杯目を注ぎ込む。

ピンク色のそれは、光を受けてきらきらと輝く。

普段、同じように飲んでいるものなのに、今日は、一層美味しく感じるのは、気のせいではないだろう。

舌の上で味わいながらも、コクコクと飲み干すペースが速いのも仕方のないことだ。



ふと、男は、手を止めた。

今まで規則正しい旋律を奏でて鳴いていた虫の音がピタリとやんだからだ。

その場は、静寂に包まれていた。


(一体どうしたのだ?)

そっと立ち上がり周囲を見渡した、その時だった。男は信じがたいものを見た。

虹色に輝く球体を…


天からゆったりと降下していくそれは、 男にとって、とても神聖なもののように思えた。

美しく光り、夜だというのに温かささえ感じさせる。

地面まであとわずかとなったとき、男はさらに信じがたい光景を目の当たりにする。

球体の側に黄金に輝く、2体の獣… カストレア王国に伝わる神獣ーーー


球体を守るように自分たちの光でそれを包んだかのように見えた。そして、動きだす。

ヒュン、ヒュンと風の間を軽やかに、それらは男の目の前を通り過ぎていった。


ハッと気づいたときには、時間が幾分か経った後だった。虫の音がまた聞こえてくる。


(全く、動けなかった、な)

男は、通りすぎていったその先を見やる。

もちろん、跡形なんてありはしない。


(私が見たもの、あれは、幻か?)

(いや、私は、確かにこの目で見た。あれは、カストレアに幸運をもたらすものに違いない。)

椅子にもたれて、天上を見る。

(天は、なぜ私にこの光景を御見せになったのか。きっと、何か理由があるのだろう。私は、今日のこの啓示を決して忘れない。)

男は深く深く胸に刻んだのであった。




▶▶▶▶▶▶▶▶▶








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