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夜に星が瞬けば、  作者: 銀タ
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「やーい猫やーい」

『おう、呼んだか?』


 鴇尾の呼び掛けに答え、するりと牢の隙間から滑り込んで来たのは、しなやかな体つきのぶち猫だった。こちらに来てから出来た友達で、世間知らずの鴇尾の先生でもある。


『おっ、鏡がある!流石菰乃屋、儲かってるねっ』


 ひょっひょっと鏡に向かって猫パンチを繰り出す、可愛らしい猫の首をむんずと掴み、やや乱暴に目の前に座らせる。珍しく真面目なその様子に、どうしたんだ? と首を傾げた猫は、モゾモゾと座り直し、鴇尾の言葉を大人しく待った。


「ねぇぶちにゃん、私の目、青?」

『まぁ俺はぶちにゃんなんてヘンテコな名前じゃないが、鴇尾の目が青いのは確かだな。それがどした?』

「異能の者は、属性の色が出る?」

『ああ、その事か!なんだ、金衛門に聞いたのか?』


 尻尾をポンっと床に打ち付け、なるほどと納得しているブチに、小さく頷く。

 知ってるのかと首を傾げた鴇尾に、その猫は胸を張って得意気に語りだした。


『しかたねぇな、これだから箱入りは困るぜ!俺が分かりやすく教えてやるよ。まずそうだな、鴇尾は異能の者に属性があるのを知ってるか?知らない?じゃあまずそこからだな、異能の者ってのは――』


 異能の者には五つの属性があり、各々が一つの属性を持つ。


 鴇尾が昔みた火を操る火属性

 同じくその時にみた雷を操る雷属性

 風を操る風属性に

 闇を操る闇属性

 そして治癒の力を持つ光属性だ。


 上から順に数が多く、一番希少な物が光属性とされている。また火属性の異能者の数が多いと言っても能力の差は大きく、手に火を起こせる程度の者も含めると一番多いというだけで、鴇尾が見たような巨大な火柱を操るような者は片手程だという。今この乱世に名を馳せる武将達はすべからく異能の者で、戦場でその力を盛大に発揮している。

 そしてどの属性にも言える事だが、強い力を操れる者は少なく、どこの国からも喉から手が出るほど欲しがられる存在なのだ。その為、異能の者が居るという噂を聞き付ければ、様々な国から人が押し寄せるらしい。


『異能の者ってのは案外見つけやすいんだ。なんせ、目立つからな』


 やっと自分の知りたい話までたどり着いたようだ。得意気にうんちくを垂れていたブチの、話の半分も聞いていなかった鴇尾は、そわそわと姿勢を正した。そんな鴇尾に気付く事なく、ブチはしたり顔で続けた。


 異能の者はその属性に基づいた色が、髪か瞳、もしくは両方に現れるらしい。火属性なら橙、雷なら金、風は緑に闇は紅、光は白と決まっている。


 なんだその目に優しくない配色は、と半目になった鴇尾に対し、ブチは人間のように肩を竦めてみせた。


『まあ、力が強い者ほどその色は鮮やかになるし、異能者ってのは容姿が美しい奴が多いからな。案外似合うもんだぜ?鴇尾だって綺麗な青だろ?』


 ということは、鴇尾は能力が強いということか。しかし、動物と話す能力に、強いも弱いもあるものかと一人首を捻る。


『鴇尾の場合、その能力はお前しか居ないから何とも言えないが……無駄に動物に好かれるってのが、強いって事なんじゃないか?』


 なるほど、それは一理ある。どちらにしろこの能力は鴇尾しか居ないのだから比べようもない。考えるだけ無駄か、と早々に自己完結した鴇尾は、ゴロリと寝そべった。


 知りたかったことも知れたし、もうブチに用は無い。金衛門に言われた仕事も終わっている、後はゴロゴロするだけだけの、まったくもって快適生活である。

 にゃーにゃーと何やら喧しく騒いでいるブチはさらっと無視して、襲ってきた心地好い睡魔に身を委ねた……かったのだが、ブチの気になる一言に、思わずぱちりと目を開けた。


「いまなんて?」

『だーかーらーっ!お前が何で金衛門ごときに見つかったのか、知りたくないのかって言ってんだっ!』


 それは確かに気になってはいた。なんせ鴇尾は、生まれてこのかた家族以外とは会ったことも、見かけたことすらないのだ。なのに何故金衛門が鴇尾の能力を知り、鴇尾を買ったのか、ずっと不思議に思っていた。

 のそのそと起き上がった鴇尾に、話を聞く気があると理解したブチは、えっへんえっへんと偉そうに勿体ぶっている。


「で?」

『うむ、実はだな、衝撃を受けるかもしれないが、気を落とすなよ!』


 そう聞いた途端何となく先が分かった鴇尾は、一気に興味を失い聞く気を無くした。またその場でゴロリと寝転がった鴇尾に、慌ててブチが話しかけてくる。


『お、おいっ!知りたくないのかっ!?自分の事だろ!?』

「……親でしょ」

『なっ!なっ、なんで分かったんだ!?お前心を読む力もあるのかっ!?』


 それを言うならそっちの方だろう、と内心突っ込む。何故かは知らないが、動物達は鴇尾の心の声まで、ほんのりとだがわかるらしい。なので鴇尾が一々口を開かなくても、返事が返ってくる事が多いのだ。


『っかー!まったく、五歳児とは思えない程冷めてんなっ!』


 そりゃそうだ、五歳ではないのだから。それを知ってるのに、そうしてからかってくるブチを睨み付け、ゴロゴロと寝返りをうって背を向ける。


『まあまあ、話を聞けよ。何でもお前の親が、変な力を持つ子供を買ってくれって直接菰乃屋を訪ねて来たらしいぜ。金衛門の悪評は知られた話だしな。じゃなきゃあんな小物が、異能者を手に入れられるはずがないわな』


 薄々勘づいてはいたが、やはりというか何というか、まったく薄情な親だ。しかしそんな事よりもこのブチは、したり顔で話をしているが、その内容に鴇尾なショックを受けるとは思わないのだろうか。

 まぁ実際何も感じなかったが、それこそ鴇尾だから良いものの、下手をしたら人間不信のトラウマ物である。この無神経猫め、と睨み付ける鴇尾に、当の猫はシレッとしたものだ。


『馬鹿野郎、俺だって話す相手くらい選ぶわ!お前に話したって、まぁっっったく気にもしないって、分かってるから話してんだろーが!』

 

 失礼な奴だな! と憤慨する猫に、お前の方がよっぽど失礼だよ、と思わなくもないが、そろそろ眠気もピークである。

 いつまでも相手してられるか、と後ろで騒ぐブチを尻目に、今度こそ迫りくる睡魔に抗らう事無く、心地よい眠りについた。 






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