5話 武器
孤児院を出て数年。
エリアは俺らが孤児院を出た1ヶ月後に里親が見つかったとのことで相変わらずスティアと2人で旅をしていた。
いろいろな村を転々としていた俺とスティアは、あるとき立ち寄った村に住んでいた。
本当は立ち寄るだけのつもりですぐに他の場所へ行こうかと思っていたのにも関わらず、ここに住むことにしたのは村長のアル・アルロンさんの双子の息子であるアンとアロと仲良くなったからだ。
「ディオ君おはようー! 今日もいい天気だね!」
「ディオさん、おはようございます!」
元気な挨拶をした長い金髪を後ろで結んでいるのは双子の兄アン。礼儀正しい少し大人しい挨拶をした長い銀髪を下ろしてるのは双子の弟アロ。2人とも父親譲りの青い目をしている。
ちなみにアンはチャラ男。アロは男の娘。それが2人のイメージだ。
初めてこの村に来た時は、アンがスティアに盛んに話しかけるものだからフレンドリーなスティアもめずらしく困り気味だった。普段はスティアが話しかける立場だったが……アンの前ではちょっと内気になっていた。
アロを初めて見た時は綺麗だな。と思うほど男には見えなかった。本人はそれがコンプレックスみたいだが、中身もなんというか、お母さんみたいなところがある。手芸などが得意なものだからスティアとすっかり仲良くなり、今ではスティアと一緒に毎日のように何かを作っている。
「ディオくん〜! た、助けてぇ!!」
アン達と談笑しているとスティアが涙目で走ってきた。見ると、アン達の飼い犬であるレイがスティアを追いかけてきていた。どうやらレイは追いかけっこをしているつもりらしいが……。俺達にもすぐに懐いてくれたためか俺もよく追いかけられる。が、レイは大型犬。
まぁこの村の大半の人が同じように追いかけられればビビる程大きくて見た目も黒くて目が赤いので若干怖い。
「ヴゥ〜ワン! ワン! ワン! 」
「ぎゃあぁああぁ! レイくん怖い怖い怖いい! やめてえええ!」
「ほ、ほら! レイさん! こっちです、こっち〜」
ビビっているスティアはさておき、1人の少女が声をかけるとレイはすぐにそちらへと向かっていく。黄色の髪に緑の目、そしてメイド服。
俺が驚いてポカンとしていると、少女はレイにリードをつけてくるりとこちらを向き、
「初めてお目にかかります。ディオ様! アン様とアロ様からよくお話を聞いております! 私はアン様とアロ様の家でメイドをしている、リオ・オリアと申します。以後、御見知りおきを」
メイド服を着た少女もといリオが言う。
「あ、あぁよろしくお願いします……」
あぁ、メイド……。
「リオちゃん〜助けてくれてありがとうっ〜!」
どうやらスティアはリオともう話したことがあるみたいで、泣きながら飛びついていた。
「リオちゃん! ごめんね〜レイ、また逃げちゃった?」
アンが声をかけるとリオはいきなり頬を紅潮させて、背筋を正して話しはじめる。
「い、いえ! 大丈夫です! 私とスティアちゃんと遊んでいたらレイさんテンションがあがったようで追いかけっこ始めちゃって……! でも、凄く楽しそうにしているみたいなのでよかったです! スティアちゃんはかなり怖い思いをしてしまいましたが……」
どうやらリオは……いや、確実に……。
(リオさんは、兄さんに惚れててメイドやってるんですよ〜)
小さな声でアロが俺に教えてくれる。やっぱりな。俺が考えていた通りだった。にしても、リオは苦労するだろうな。あんなチャラ男を好きになって……。
「あ、そういえば皆さん! あとで僕らの家に来ませんか? クッキーが僕らだけじゃ食べきれないぐらい沢山焼けているので!」
「本当!? じゃあ、遠慮なく!」
アロが言うと、本当に遠慮なくクッキーを沢山食べるつもりであろうスティアが返事をした。
アン達の家に行くと、沢山……いや、もうそういう次元では無い量のクッキーがあった。
「どうぞ、皆で食べましょう! リオさんも休憩にして食べてください!」
アロがそう言うと、リオはスティアに
「女子会しよう!」と言って、紅茶とクッキーを持って少し離れたスペースへ移動した。
「じゃあこっちも男子水入らずで!」
と、アンが言ったがその時にはもう、俺とアロで話していたからとりあえず無視をしておいた。その後、すぐに泣きながら話に入ってきたけれど。
「そういえば最近、外に魔物が増えてきたよね」
アンの言葉に相槌を打つ。
「確かにそうだな。しかも、少しずつ強くなってないか?」
「「うん……」」
この頃、スライムしかいなかった村の周辺に、蛇だったり、悪魔だったりの新しい魔物やスライムの少し強いバージョンやらが沢山出てきたのだ。
「僕、こないだまでは一撃で倒せたスライムが2、3回でやっと倒せるぐらいまでに強くなってました。」
「ふ〜ん。やっぱそうなんだ〜。ま、俺はかわいい娘がいればいいけど〜!」
アンは立ち上がるとリオとスティアの方へ行ってちょっかいをかける。
「なーに2人で楽しそうに話してるの〜?」
「アン様!? ひ、秘密です!」
リオは顔を真っ赤にして必死に取り繕っていた。
「兄さんの事でも話していたんですかね……」
「多分そうだろうな……」
大量のクッキーをほとんど食べ終わった頃、アルさんが来た。
「やぁ、ディオ君、スティアちゃんいらっしゃい。皆に少し頼みがあるんだが、いいかい?」
そう言ってアルさんが話したのは、北の草原にいる魔物のせいでいろんな人が困っているからその魔物を倒して来ることと、その草原から薬草を採ってくること。どうやらその魔物は草原に来る人々を襲っているらしい。
「ちょっと父さん!? 魔物って凄いデカくて強いって噂の奴だよ!?」
「まあ、アン。取り乱すな。せめて、薬草を採ってくればいいから。魔物のことはついでレベルに考えてくれ。」
「ついでってレベルじゃないですよ……」
リオは呆然としている。
皆がどうしようか悩んでいる中で俺はすぐに返事を決めた。
「俺は行きます。面白そうですし」
俺の発言に皆が驚いた。
そして、みんなが俺に続いて言った。
「じゃあ私も行く!」
「じゃあ俺も〜!」
「では、私も……」
「ぼ、僕も!」
満足そうにアルさんが頷く。
「よかった。でも、アンとアロ以外は武器も無いだろうから」
そう言ってアルさんは俺には黒い柄に金色の鍔の刀。
スティアには白く塗られた鉄の骨組みに薄い鉄の扇面の扇。
リオには黄色と緑のグラデーションの鞭。
「皆なら引き受けてくれると思って特注のを用意しておいたんだ」
「ありがとうございます!」
そんな武器を渡してくれた。アルさんの独断と偏見で武器は決めたそう。リオの武器だけが少し違和感があるが……。
皆でお礼を言って、用意をすると北の草原へ向かった。
どうも、胡桃野子りすです!
新キャラが3人!
毎度毎度ありがとうございます!
本当はリオちゃんはもう少しあとにだそうと思っていましたが
勢い余って早めの登場です!
アンくんとアロくんは二卵生の双子設定なのであまり似ていない設定です!
アンは金髪、アロは銀髪ですよ!
そして!なんと気づいたら、
ブックマーク20件超え!
感謝!!
これからもよろしくお願いします!
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