2話 出会い
「ディオ君残して心中ですって」
「やだ、可哀想ね」
「旦那さんが仕事に失敗して火放ったみたいよ。昨日、聞こえたもの」
「じゃあディオ君だけ逃げたのね」
「可哀想に…」
家族が死んでから、独りぼっちにされてから、村を歩く度にそんな声が聞こえた。
向けられるのは憐れみの視線。触れちゃいけないと、避けられている感覚。
周りに人がいないわけじゃないのに、独りで、寂しくて、たまらない。
しばらくは近所の家に住まわせてもらっていたが、よそよそしい。それでも一人じゃないとは思えるだけマシだった。
そして、ある日出かけようと言われて連れていかれたのは『孤児院』だ。
また、一人にされるのか……?
そんな不安があった。
連れてこられた建物はかなり大きくて、白い壁に赤い屋根。
周りを見渡していると、急に声をかけられた。
「初めまして、ディオ君! 私はここの管理をしているメリー・ラメよ。よかったらメリー先生って呼んで? よろしくね!」
白いシャツに緑色のエプロンという服装。綺麗な白い髪のボブで綺麗な緑の目の女の人。緑の目。それは母さんと姉さんとは少し違い、深い緑だった。母さんたちは確か……もっと……。なんだか、靄がかかったように母さんたちの顔がはっきり思い出せない。
俺がずっと黙って俯いていると、彼女は優しく微笑んだまま首を傾げていた。慌てて、挨拶のための言葉を口に出す。
「よ、よろしくお願いします……。メリー……先生」
メリー先生は嬉しそうな笑顔で「ふふっさぁ! ついてきて! こっちよ!」と、招き入れてくれた。
そして、孤児院にあるいろんな部屋のこと、住んでいる子どもたちのことなど、いろいろな説明をメリー先生がしてくれた。
「ここにいる子たちは、全員優しい子よ。きっとディオくんにもお友達ができるわ!」
メリー先生はそう言って、近くで遊び回る子どもたちを見る。
でも、俺は不安だった。俺はもともとあまり友達ができない方だった。目つきが悪いとか、そう言われることが多い。
「大丈夫よ。なんかあったら先生に言ってね!」
不安を見透かされたようでメリー先生は俺の頭を撫でながら微笑む。
なんだか少し、安心できた気がした。
そして、庭の見える場所に座って話している時だった。
「先生ー! 飲み物! 持ってきたよー!」
そう言って俺とそこまで歳は変わらないであろう少女が走ってきた。
金髪に少しピンクの髪が混じっている。そして、緑色の目。
父さんが昔仕事で手に入れたと見せてくれた宝石を思い出す。キラキラとしていて、澄んだ明るい緑色の宝石。母さんたちの目に似てるとあのときの俺は言っていた気がする。そして、今目の前にいる少女の目は、その宝石に似ていた。だから、きっと、母さんたちの目とこの子の目は同じだ。
「あら、スティアちゃん。ありがとうね! はい、ディオ君飲み物」
スティアと呼ばれた少女に先生はお礼を言うと、持ってこさせた飲み物を俺に差し出す。
「あ、ありがとうございます…!」
そう言って受け取ると、何故かスティアが膨れっ面でこっちを睨んでいる。
「えーと…な、なんですか…?」
「私には…?」
「はぁ?」
「うぅ…私に! お礼は!?」
あぁ、なんだ。この子は自分にお礼が無いから怒ってるのか。さっきのお礼は、二人分のつもりだったんだけど。
「えーと、ありがとう」
すると、満面の笑顔を浮かべてスティアは言う。
「えへへ! どういたしまして!」
その笑顔はすごくかわいくて、この笑顔に俺はこれからたくさん救われる。
「あ、そうだ! 自己紹介してないね。私はスティア・リティルっていうの! よろしくね!」
「あぁ。うん。そうだったね。俺はディオ・ラミデ…。よろしく、スティア」
すると、急にスティアはキョトンという顔をした。
どうしたんだ? お、俺、なんか変なこと言ってたか?
そんな風に1人で混乱していると、
「私…、友達に呼び捨て初めてされたー! びっくりしたー!」
呼び…捨て…? なんだ、そんなことか。すぐに嫌われてしまうかと思った。
そして、スティアは『友達』と言った。俺がここに来て、始めての友達ができた瞬間だった。
「よかったぁ…」
そんな他愛の無い会話をし始めてしばらくして、俺は全く気づかなかった。ここに来て、メリー先生やスティアと喋っていると死んだ家族のことを忘れて、負の感情も消えて、普通に過ごせていることに。
どうも
胡桃野子りすです!
いきなりの新キャラ2人登場です!
お気に入りのキャラなどがいましたらぜひ教えていただきたいです!
ブックマークやレビューをしてくださった方がいて本当に嬉しいです!
これからも感想などよろしくお願いします!
続きもよろしくお願いします!