1話 古い記憶
ある村で彼は生まれた。
彼には優しい父親と明るい母親と世話好きな姉がいた。彼は父親に似て暗い青色の髪、金色の目。母親と姉は綺麗な金色の髪で綺麗な緑色の目をしていた。そして彼は家族が大好きだった。内気で、暗い彼も家族の前では明るい愛想のいい少年だった。
商人の父親は一週間おきにしか帰ってこられなかったけれど、お土産を持って優しい笑顔でいつも帰ってきて、彼を優しく抱きしめてくれた。
でも、彼が5歳のとき。仕事から1週間ぶりに帰ってきた父親は変わり果てていた。何かを求め、近づく母親や姉を突き飛ばし、殴っていた。小さい彼が父親に勝てるわけ無く、ただ見てることしかできなかった。
「とうさんっ……やめて!」
彼が叫ぶと父親は家族を見渡して、何かに気づいたようだった。我に返ったと、そう思って家族は安心した。
でも、違かった。父親は「失いたくない」と呟いた。そこからは早かった。どこからかナイフを取り出した父親。背後にあった小さな窓からこっそりと母親と姉は彼を逃がした。
「……あなたは……幸せになって?大切な人を見つけて幸せに生きて?」
彼は走った。走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って……やがて遠くで火の手が上がった。真っ暗な空が夕焼け色に染まっていた。
近づけばさっきまでいた家が崩れ落ちているところだった。炎にバリバリと噛み砕かれているようだった。
野次馬が集まる。その視線は全て「俺」に注がれていた。ディオ・ラミデ。心中した家族の生き残り。それがただ辛くて辛くて……幻が見えた。ナイフを持った父さんの幻。
俺は……どうして生きてるんだろう。どうやって生きていくんだろう。
「お前もこっちへ来ればいいだけだ」
大好きだった父さんの声が聞こえた気がした。
どうも!
胡桃野子りすです!
続きを読んでくださってありがとうございます!
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