都へ
フレアを倒して数日。
あの日から村中から依頼が来るようになって、さらにそれが広まったらしくだんだんと他の村からも依頼が来るようになった。簡単に言えば、今までアルさんがやっていたなんでも屋業を受け継いだ形になったのだ。
「ども〜アドリ村から来ましたー!なんでも屋で〜す!」
アンの声にその場にいる人々の目が一斉にこちらへ向く。少しその視線に圧倒されつつ、都の宮殿の奥へと進む。そう、依頼人はなんと王様なのだ。
だから、粗相の無いようにするためにも、スティアは一言も喋るなと言ってある。スティアは見た目だけで何か言うこともあるからな…。
前なんて隣村の村長への第一声は
「は、初めまして!鼻長さん!」
と、意味のわからない絶対見た目で判断しただろ。という発言をした。ちなみに村長さんは額に青筋を浮かべかなりご立腹の様子だったが優しく笑顔で大人の対応をしてくれた。それはそれで怖かったが。とまあここまで話せばわかるだろう。スティアに話させると危険。うっかりすれば打首になりかねない。
ちなみにアロと俺しかその危機感は持っていない。スティアは自覚無しだからもちろん、アンは能天気、リオはスティアなら大丈夫と言うし…あともう1人は何も言わないしな…。
しばらく歩いていると俺の身長の2倍…いや3倍ぐらいの扉があった。全て金や銀、宝石などでできている城だ。眩しくて仕方なかったが…この扉は少しの汚れもなく今までよりもさらに眩しく見えた。
重い扉を王の目付け役だという少年が開けるとその瞬間。
「待っていたぞぉ!なんでも屋ぁ!」
そう言ってアンに飛びついた青年。そして、その青年をアンからはがす目付け役。つまり…もしかして…この青年…
「王、もっとしっかりしてください。みっともないですよ」
「え…お、王様なんですか…あ、いえ!お初にお目にかかります!!!」
スティアの代わりに爆弾発言をしかけた…いやしたリオ。
王は顔を引き攣らせ、目付け役は吹き出した。とりあえずそれは置いといて、皆で挨拶をする。
「危険な旅もあるだろうに、女の子達もいるんだねぇ」
改めて俺らを見渡した王はそう言った。
確かにリオは強いのでともかく、スティアはとてつもなく頼りなかった。でも、それでもリオによるスパルタ特訓によりかなり強くなった。そしてもう1人…
「えー、依頼は近頃近辺に出た、盗賊団を捕まえること。依頼料は銀貨10枚…って安すぎませんか?普通はこのぐらいの依頼銀貨30枚ぐらいですが?」
淡々と、表情1つ変えずに依頼料を吊り上げようとしているのはリオの異父姉であるリア。俺よりも遥かに表情がない。が、村ではクールビューティーと言われ隠れた人気者だ。まぁ、確かにコバルトブルーの髪、金と銀のオッドアイ、ポーカーフェイス。ミステリアスで、不思議な魅力があるのはわかる。
ただし、実は義妹のリオが大好きすぎる極度のシスコン。もうそれ恋愛感情だろ。と思える。でも、これを村の皆は知らない。
そして…
「せめて、15枚にしてください。あと、成功報酬も金貨5枚ではなく10枚に。まぁ、それでも少しばかり安いですがね」
今日はまだ良い方だ。前なんて、根も葉もない話までして依頼料と成功報酬を吊り上げた。今日は少しだけ盛っているだけで嘘は言ってないから…な。多分。
「わ、わかった!依頼料銀貨20枚、成功報酬金貨15枚にしようじゃないか!どうだ!」
「え!?王、そんな財政厳しいのにそんなに高くしたら反発買いますよ!?」
目付役に怒られつつ、
「だって、他の奴らはもっと高いということだろー!都の王としてな〜それはと思ったのだ!!良いだろ!」
そんなことを言ってる王を満足気に口角を上げ見つめるリアはなんだか悪魔にも見えなくもなかった。依頼料を受け取り、依頼に関しての細かい話に入った。
***
「要点をまとめると、最近都周辺で暴れている盗賊団を少しも傷つけず捕まえる。ということですね」
約30分。話があちこちに飛びつつ説明してくれた王。要点をまとめると最初から聞いてたやつとさほど変わらない。有力な情報と言えば、目撃情報が多いのが少し歩いたところにある山の周辺らしい。ということだけ。
宿での作戦会議はこんな少ない情報だけで平気かと不安になるが、仕方がない。あとで都に住む人々に話を聞くことにもなっているが、有力な情報は得られる確率は少ないという。
「わかりやすくしてくれてありがとうございます。リアさん」
アロはそう言いながら、都に来る前に作ったというパンを皆に配る。
「わーい!パン!ほいひい!」
「飲み込んでから喋ってくださいね…」
食い意地をはっているスティアは2つ3つパンを鷲掴みすると、それを頬張った。そのまま喋るスティアにアロが注意する。アロが母親のように見えるほのぼのとした光景だった。ちょっと和む。
ただ、その次に見える光景は尋常ではないくらい恐怖だった。
ふとその隣を見ると、しつこくリアに話しかけるアンと、それをガン無視するリア、それを鬼の形相で睨むリオがいた。
そして、そんな恐ろしい画の横ではパンを食べながら編み物をするスティアとアロ。
まあ、どうにかできることでも無いか。俺もパン食べるかな。
***
腹ごしらえが終わり、宿から出て、道行く人へ話を聞いてみる。店へ入り、店員にも聞いたりしたが、夜に活動をしているらしく、シルエットしか見たことがないという。そして、そのシルエットも特に特徴も無く、ただメンバー全員の脚力がとてもすごいらしい。
地面から10mまで軽々と跳んだり、風の様に走ったり。
そんな集団に俺らが勝てるかが謎になってきたが、こうもなると「少しも傷つけないで捕まえる」ということができないのではないかと不安になってくる。
***
結局有力な情報は得られず、真夜中では相手がよく見えないからということで、早朝目撃情報の多い山へ行くことになった。
***
真夜中。ふと目を覚ますと横で静かに寝息をたてるスティアが目に入る。
「疲れただろうな…」
小さなことから大きなことまで沢山の仕事こなして、丸一日かけて都まで歩いて、一日中都で情報集めして。
「無理させてごめんな」
もしも、盗賊団にスティアが狙われても俺が守る。何があっても。絶対に。
どうもー!
子りすです!
長らくお待たせいたしました!
やっとのことで更新です!
出来るだけ、次の更新急ぎますね!
では!また!