事件
あれからも、桜羅とは仲がいい。
相変わらず時々、謎の「ボク」の声は聞こえる。
それが乙武なのか他の誰かなのかはわからないが、気にしてない。
ただ、聞こえるのは妾だけではないようで…。
「乙音 …。最近…桜羅が来てからかな?時折「ボクのモノ…」などと、声が聞こえるのだが、それは自分の幻聴であろうか…?」
「藍武も聞こえておったか!あれは誰の声なのであろうな…」
「ま、まさかとは思うが、桜羅に幽霊が取り憑いておるとか…」
藍武…此奴まだこんなにヘタレにであったか…。敬語も抜けて、男らしゅうなったと思ったのに…。
「そんな訳あるか!馬鹿!幽霊などおらぬわ!」
「す、すまん…」
しょんぼりとしている藍武を覗き込むようにしゃがみ込むと力一杯デコピンした。
「痛っ!な、何するんです…か…」
「まっった!敬語じゃ!早う男らしゅうならんかっ!そんなんじゃからいつまで経っても嫁が決まらぬのじゃ!」
「すまん…だが、乙音が嫁いでくれればよいのだ…。」
「妾だってそうしたい!でもな…」
この先は言ってはならない。そんな気がした。藍武だって妾に嫁ぎ先が決まっていることぐらい知っておる。
でも、その相手が…「藍夜兄」だということだって。
そんなことを考えていた。でも、その思考を吹き飛ばす大きな声が聞こえた。
「おいっ!大変だっ!」
藍夜兄だ。あの藍夜兄が声を張り上げているのじゃ。余っ程のことなのだろう。
「とりあえず来いっ!このままじゃ乙武と藍音姉が…」
「っ!?」
乙武と藍音姉!?嫌な予感がする。どうか…外れてくれ…この予感!
近くに咲いていた定家葛を揺らして妾達は走り出した。
***
着いた先にいたのは…着物の背中部分が斬られた藍音姉と折れた木の槍を持った、戦ったのであろう乙武。そして…刀…ついこの間…『この刀は私の家に伝わる「花兎」ですの!かっこいいでしょう!』そう言って桜羅が見せてくれた「花兎」。それを持って立つ桜羅だった…。
「あ、藍武っ!そなたは回復師を呼んでこいっ!ここは妾と藍夜兄でどうにかするっ!」
「わかった!」
走り出した藍武を確認して桜羅に視線を戻す。
「…だったのに…もう少しだったのに!もう少しで乙武サマはボクのモノだったのにっ!」
「ボク」は桜羅だった…。
「乙武サマはボクに優しくしてくださった…。なのに何故ボクのモノになってくれないのですか?何故ボク以外のコと話すのですか?なんで…なんでなんでなんでっ!」
次の瞬間、桜羅は刀を振り回して乙武に向かって走って行った。
「ハッ…僕に力で挑むなんていい度胸だよ…。僕や僕の敬愛する藍音姉に悪戯したこと後悔させてあげる…」
何処にあったのか乙武は棍棒で刀を受け止め、がら空きの腹に蹴りを入れた。その場に崩れ落ちた桜羅に乙武は笑顔で言う。
「僕に悪戯とか百年早いよ。只の嫉妬に狂った女が僕に勝てるとでも?馬鹿にすんなよ」
こんな乙武を見たのは二年前に藍音姉に付きまとってた輩を追い払ったとき以来だ。村の人たちが駆けつけ、事態は収束した。このとき、藍家の当代…つまり妾の叔父である藍人さんに言い渡された。
いつか妾が勇者になると。
どーも!!!子りすです!
更新遅くて申し訳ございません!
今回は乙音と藍夜の関係性と「ボク」の正体を明かしました!
藍夜は藍家の跡継ぎであるためやはり嫁は貰わなきゃなのですが、代々の決まりで嫁にとる相手は同じ血を継ぐものつまり、親戚、自分の姉妹を嫁に貰わなきゃなもので…そうなると藍音か乙音になりますから…。でも、乙音は藍夜に恋愛感情を抱けません…。前回出したムラサキツユクサの花言葉にはそういう意味がありました!!
そして、今回の桜羅の元に行くにあたって出てきた定家葛。花言葉は「依存」。これは桜羅の性格を表しています!ちなみに定家葛は桜羅の着物の柄でもあります…。
ちなみに、最後の乙武の台詞は作者がただただこういうことを言わせてみたい!と思ったからです。
いかがでしたでしょうかー!
「更新遅かったのに、こんなもんか…」とか思っている方がいたら教えてください。それを見て泣きながら次回はもっと上手くできるようにします。
それではそろそろ!
評価、感想、レビュー、ブクマよろしくお願いします!
それでは!また!!