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エピローグ・嵐の終わりの
~エピローグ・嵐の終わりの~
私が目を覚ました時、最初に映ったのは真っ白な天井だった。どうやら病室の様だ。近くの台にはお見舞いのために誰かが持ってきた花が花瓶に生けられている。
もう一度天井に視線を戻す。私は悪い夢を見ていた気がする。やりたくもない人殺しを強要され、何度も涙を流す。そんな夢。
「お……父、さん」
急に開いた扉から私をお父さんと呼ぶ女性。
その女性は間違いなく娘の美夕の姿だった。しかし明らかに大人びた容姿は二十歳を超えているようにしか思えない。さらに左腕は義手になっていた。
目を真っ赤にする美夕の横でしっかりと美夕の右手を左手で握る見知らぬ男性。その男性も右腕が義手になっている。そして襟元から傷跡を覗かせていた。
どこの馬の骨かも分からない男が娘の手を握るなどあってはならない。ここは一発父親としての威厳を見せるべきだ。
何か言うべきだと思い大きく息を吸う。そして男性に一言。
「ありがとう」
何故か出てきた感謝の言葉に男性はにっこりと笑い返した。