第3話 ルール
逆解析には時間がかかった。法則性が見当たらないのだ。
実験に使用したベースの波形を眺める。
被験者Aの測定前の脳波を並べ、机上で計算を始める。
測定後の波形と見比べても差異はない。想定通りだ。
被験者Bの測定前の脳波にも同様の計算を行うが、測定後の脳波と何度やってもやはり合わない。被験者Cに関しても同じ結果である。
「それぞれに与えた波形は異なるし、ベースの波形とも異なる…被験者Bに与えた波形とベースの波形の違いは…」
被験者Bに与えた波形からベースの波形を除いてみる。
「ん?これは…被験者Aの測定後の脳波と酷似している?つまり…被験者Bにはベースの波形と被験者Aの脳波をミックスしたものが与えられている?」
急ぎ被験者Cに与えた波形の解析を始めた。
やはり被験者Cに与えた波形はベースの波形と被験者Bの脳波をミックスしたものと同一であったのだ。
そしてもう一つの新たな法則を発見する。
感情が伝播していたのだ。
被験者Aが測定前に感じていた緊張、恐怖は被験者Bに伝播し、被験者Bの疲れは被験者Cに伝播していたのだ。
それは被験者Eも同様であり、それがユウスケが感じた違和感の正体だったのだ。
これは脳科学を研究するユウスケにとってはとんでもない発見であった。
感情を操作することが出来る、それは世界を変える可能性を秘めているのだ。