第2話 偶然の産物
数週間前―
教授と共に一般の方に協力してもらい脳科学の臨床実験を行っていた。
通常であれば大学内であったり、ゼミの生徒たちに協力してもらっているのだが脳科学に精通している者たちだと実験結果の分析には協力的だが、専門的知識が邪魔をして素直な感想が聞けなかったのである。
結果としては大した実績にはならなかったのだが…
実験の内容としては脳に外部刺激を与え、脳波に出る影響を測定するという単純なものである。測定前、測定中、測定後の脳波を記録し、被験者にも身体の変化についてメモしてもらうといったものであった。
特筆すべき収穫なし、ただし異常も見当たらず、実用に足る、というのが教授の出した結論であった。
―被験者A―
測定前:少し緊張、怖い
測定中:なんかこわい
測定後:意外と平気でした
―被験者B―
測定前:だるい
測定中:特になし
測定後:緊張
―被験者C―
測定前:不安です
測定中:しんどい
測定後:少しめまいがする
―被験者D―
測定前:こわい
測定中:こわい、違和感がする
測定後:こわい
―被験者E―
測定前:特になし
測定中:怖い
測定後:怖い、不安
以上がレポート内容である。
文言だけで見れば何の問題もない、そう結論付けるのもよく分かる。ただ、ユウスケは被験者に脳波を測定する装置を装着するのを手伝っていた。疑問を感じたのは被験者Eのレポートを見てからである。
被験者Eにおいては少し他の者と比べて異質であった。と言ってもユウスケの周りにいないタイプというだけで繁華街にはよくいる、いわゆる今風の若い男子であった。
実験内容と手順を説明した際も、さも催眠術師に対して「俺はあいつらとは違う、俺はダマされない」といった疑うような目つきをしていた。
そのEが測定を開始後、心変わりでもしたかのように素直に感想を述べているのである。それも恐怖という心の弱点をさらしている。
改めて被験者たちのレポートと脳波測定結果を比較してみる。
「ふむ…これは…どれも一致している…」
脳科学に精通している者であれば当然こうなるであろう、積極的に協力してくれているのだから嘘も意地も張らない。
だが、一般の方であればどうだろう。困惑もあるだろうが、素直に回答など得られないのが通常であり、脳波の解析結果と比較してどこまで自身を制御できているのかを含めて解析するのである。
それが全て嘘偽りなく一致している。教授にしてみれば実験としては概ね成功ということになるだろう。ただユウスケは疑問を感じずにはいられなかった。
再度、脳波測定結果を見つめる。
脳波に異常は見られない―
外部から与えた波形を確認する。
「これは…被験者たちに与えた波形が異なっている!でもなぜだ?」
被験者Aに与えた波形は研究で使用している波形に間違いなかった。それ以外の被験者たちに外部から与えている波形に見覚えがない。
「手違いだろうか?それにしても何の波形だ?過去の実験で使ったものでもないぞ」
ユウスケには見覚えがなかった。
「逆解析を…試みるか」