第1話 研究
気が付くと外には小鳥達が夜明けを告げていた。
ユウスケは大学院で脳科学を研究している。研究に没頭するあまり、最近では昼夜逆転していた。
彼の大学生活は研究一色であった。大学生らしいキャンパスライフは送ってこなかったが、不満は一つもない。研究こそが生きがいなのだ。
「もう朝か…今日はもうこれくらいにして帰るとするか」
澄んだ空気、誰もいない構内、ユウスケはこの雰囲気を好んでいた。このためにあえて遅くまで研究している節もあるかもしれない。
構内の噴水前の自販機で微糖のコーヒーを買い、ベンチで帰る前に一息つく。これも彼の日課である。
もう数時間もすればキャンパスライフを謳歌している大学生がここ一帯を占拠することとなるだろう。そこでたった一人、今日の研究を振り返る。
「今日は脳の電気信号を解析して…明日はその解析結果を元に…」
昨日の自分と比較し、たしかに研究は進んでいると再確認する。
彼が専攻する脳科学は未開の分野である。
まだまだ解明されていない事実も多く、研究成果が実用レベルまで浸透するのには何十年もかかるだろう。人によっては何の為に研究しているのか、と問う人もいるだろう。でもいつかは解明されるべきなのである。その人間の英知に挑むのは自分自身であるべきとユウスケは考えている。
未開の分野の開拓、このまま彼の人生は研究生活で終わるのであろう。
ただ一つ、ただ一つの発見を除いて―