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32話 真実の追及

エンディングルート入ります。

あと2、3話くらいで終わると思います。

「姫ちゃんちってさ、アホみたいにでかいね……」


 未来ちゃんはポロっとそんな言葉をこぼした。

 私達は現在、姫ちゃんの家、と言うよりは屋敷に来ていた。いつもの友達四人、そして今日はシロウも一緒だ。

 姫ちゃんがついに自分の家の秘密をみんなに打ち明けた事で、気兼ねなく出入りできるようになっていた。

 みんなで姫ちゃんの部屋に向かっていると、一人のサングラスをかけた、いかにもヤクザ風の男とすれ違った。この屋敷に住み込みで働いている拓さんだ。


「拓さん、こんにちは」

「おや、雛お嬢! いらっしゃい! 今日はお友達と一緒ですかい? 姫お嬢がこんなに友達を連れてくるなんざ、何年振りの事か……。ゆっくりしていって下せぇ」


 拓さんと挨拶を交わすと、未来ちゃんが目をパチクリさせていた。


「イヌちゃん、雛お嬢って呼ばれてんの!?」

「雛さんは、もうここに何度か来ていて皆さんと仲良しになっていますから」


 姫ちゃんの説明に、ネコちゃんもホエ―っと開いた口が塞がらない様子だ。

 そして私達は姫ちゃんの部屋に通された。


「おお~、ヒナの部屋の二倍は広いんじゃないか? すごいなヒメ! おっ、マシロじゃないか、お邪魔するぞ」


 シロウのはしゃぎっぷりが何だか恥ずかしい。

 部屋の中には私達を待っていたかのようにマシロがいて、シロウとおしゃべりを始めていた。


「では第一回、イヌちゃんの秘密をみんなで考える会を始めたいと思います!!」


 未来ちゃんが高らかに宣言した。

 そう、今日集まったのは、秘密を知ったみんなが私の能力の謎を解き明かそうという事らしい。ただ、私は嫌な予感しかしない。


「ねぇ、本当にちゃんと考えてくれるの? 私、結構本気で悩んでるからね? 弄らないでよ? 絶対に弄らないでよ?」

「わかってるって。私達に任せておきなさいよ。三人寄れば文殊の知恵っていうでしょ?」


 不安に怯える私を余所よそに、未来ちゃんはニヤニヤしながら話を進める。

 ダメだこの子、絶対わかってない!

 私ももう、みんなとはそれなりに付き合いが長い。こういう時は絶対にネタにされる事は、目に見えて明らかだった。


「軽くまとめるよ。イヌちゃんはこれまでに不思議な現象を引き起こしている。ただの野良犬だったシロウ君を人間に変えた事。シロウ君が事故に合い、心臓が止まっていたにも関わらず、生き返した事。それによって魂を循環させて、お互いの能力を取り入れる事ができるようになった事。これはもはや、人間の常識を超えている! では何故、イヌちゃんがそんな事ができるのか、わかった人は手を挙げて!」

「はい!」


 真っ先に姫ちゃんが手を挙げた。どの道私は静聴する事しかできない。


「私、雛さんは魔法使いだと思うんです!」

「おお~、ヒナは魔法使いなのか!?」


 シロウが興奮しながら食いついている。

 私はタラリと頬から汗が流れ落ちる感覚になった。


「恐らく、強大な敵と人知れず戦って、激しい戦闘で記憶がなくなってしまったんです。だけど、必死になった時だけ魔法が発動して、これまでに何度か奇跡を起こした。きっとそんな展開です!」


 姫ちゃんが熱く語るの聞いて、私は一応ちゃんと考えてみる。


「けど私、別に記憶無くなってないし……普通に子供の頃からの記憶あるし」

「魔法使いとしての記憶だけ無くなったのかもしれないじゃないですか!?」

「えー……」


 意外にも姫ちゃんは、必死に食い下がってくる。


「ヒナが魔法使いなら、魔法が使えるはずだぞ! ヒナ、『マジックセイバー』って唱えるんだ! アニメだと魔法の剣が現れて、それで戦うんだぞ!」

「ああ、朝にやってるアニメですね。魔法使いのバトルモノの」


 シロウと姫ちゃんが盛り上がっているところ悪いのだが、魔法を使う素振りなんて、とても恥ずかしくてできない。


「さぁ雛さん、魔法を使って下さい! それで雛さんの正体が判明するかもしれないんですよ?」

「ヒナ、早く早く!」


 二人にせがまれて、私は仕方なく立ち上がった。右手を前に出し、恥ずかしさを押し殺してひと思いに叫んだ。


「マジックセイバー!」


 カシャ!

 姫ちゃんに写メを撮られた。


「うわあぁあん、何してんの!? 消して! 今の写メ消してぇ~!!」

「別にいいじゃないですか。減るもんじゃないですし」

「減るよ!! 私の精神がゴリゴリ削られてるんだよ!! もう姫ちゃんなんて大嫌い!」


 ズガーンと激しい衝撃でも受けたように、姫ちゃんは両手をついてうな垂れた。


「わ、わかりました。嫌われては元も子もありません。画像は消します。あ、でもむくれてる雛さんも超ラブリーです」


 いまいち反省しているのかわからない姫ちゃんをたしなめると、今度は未来ちゃんが手を挙げた。


「はいはい! 次は私ね! まぁ姫ちゃんのと似てるんだけど、イヌちゃんは魔法少女だと思うんだよねぇ。ズバリ、変身できると見た!」

「もう恥ずかしいポーズとかは取らないから! どんだけ私をはずかしめたいの!?」


 また妙な事言いだす未来ちゃんをジト目で見ながら、私は警戒を怠らない。


「いやぁ~、魔法少女ってさ、マスコットキャラが付き物じゃない? 人間にも動物にも姿を変えることが出来るマスコット。それがシロウ君だと思うんだよねぇ」

「確かに設定的には合ってる部分もあるけど、でもシロウだって特にそんな記憶はないし……ねぇシロウ?」


 以前からシロウには散々話を聞いた私だが、念のためにシロウに話を振る。


「うん、ヒナと会うまでは普通に野良やってて、ヒナと会ってからは普通に人間やってるぞ?」

「う~ん、それはほら、激しい戦闘で記憶がなくなっているのかも……」

「それ、私の話のパクリじゃないですか!」


 姫ちゃんが抗議している。そんな時に、今度はネコちゃんが手を挙げた。


「私もいいかな? 私はね、むしろシロウ君が魔法使いだと思うの」

「おお!? 俺が魔法使いだったのか!? むうぅ……飛翔の魔法、フライ! むわぁ~!!」


 シロウが必死に魔法を使おうと騒ぎ始める。そんなシロウをほっといて、私達はネコちゃんにツッコむ。


「私も最初、シロウの人間化はシロウ自身に秘密があるのかと思ってたけど、何か私の願いが具現化してる感じなのよねぇ」

「それは雛ちゃんの願いをシロウ君が叶えてるんじゃないかな?」


 私は腕を組んで考える。


「シロウ君が事故に合った時、生き返したのはイヌちゃんなんでしょ? だったらやっぱり、イヌちゃんが原因なんじゃないの?」

「それは……何か、雛ちゃんの想いを経由する事で、自動で発動するような魔法なのかも」


 未来ちゃんの意見にも、なかなかメンド臭そうな条件を主張している。そんなネコちゃんを、未来ちゃんと姫ちゃんが物言いたそうな顔でジィーと見つめ始めた。


「な、何……?」

「何かさ、ネコちゃんってシロウ君の事を特別視してない?」

「えぇ~! そ、そんな事ないよ! 私はただ、一つの可能性として……」

「もしかしてネコちゃんってさ、シロウ君のこと好きなの?」


 そう言われた瞬間、ネコちゃんは耳まで真っ赤になった。


「はあ~~!? な、何で!? どうして!? 意味分かんないよ!? 私はみんなの盲点となるシロウ君に観点を当てて考えただけで、私の感情とか全然関係ないし!」

「落ち着いてネコちゃん。そんなに取り乱されると、むしろ怪しいから!」


 ネコちゃんはグルグルと目が渦巻いて、一目で混乱していると分かるほど慌てふためいていた。


「と、取り乱してないし! 大体、私なんて全然ダメだし!!」

「いや、別にダメだなんて言ってないよ!?」

「ダメだよ! だって……シロウ君は雛ちゃんと付き合ってるんだもん!!」


 ……………………………………………………は?

 何を言っているの? ファッツ? ホワイ?


「ええええ~~!? そうだったの? イヌちゃんが……いやでも納得かも。いつから付き合ってるの?」

「いやいやいや! ちょっと待って! ネコちゃん勘違いしてるよ!? そんな事全然ないから!!」


 戸惑う私にお構いなしと、未来ちゃんが面白がって詰め寄ってくる。

 いつからそんな風に思われていたのか……。確かに暴走状態だったお凛ちゃんに立ち向かって行った時は、少しカッコいいかなと思ったり見直したりもしたけど……。って何考えてんだ私は! シロウは家族みたいなもんなんだから!

 何だか私まで頭がグチャグチャになって、混乱し始めた時だった。


「皆さん! いい加減にして下さい!」


 と、姫ちゃんがその場を静めてくれた。その声で私も我に返る。

 助かった! さっき大嫌いなんて言ってごめん。やっぱり姫ちゃんは私の味方だったのね!


「私を置いて話を進めないで下さい! 雛さんを想う気持ちは私だって負けてません!」


 ……ダメだ。話がややこしくなるだけだった。


「まさかの四角関係!? いや、東海林先輩もいるから五角関係じゃん! イヌちゃん、誰が本命なの?」

「雛さん私! 私が一番ですよね!?」


 はわわわわ……

 みんなに迫られ、もはやその場が混沌としたその時――


「なぁ、マシロも雛の事で、思いつく事があるみたいなんだが、ちょっといいか?」


 と、いつの間にかみんなに交じってシロウが話しかけてきた。


「ぎゃあああああ~!! シロウいつからそこにいたの!?」

「ひどいぞヒナ~、最初からいるって」


 唐突にシロウが出てきたせいで、絶叫してしまった。

 いつから話を聞いていたのかという意味だったんだけど……

 今の話を聞かれたのではないかと思うも、シロウはケロッとしていた。


「え? あ~うん、そういえばイヌちゃんの能力の話だったわね。うん、話してみ?」


 未来ちゃん、絶対この話し合いの趣旨を忘れてたよ……

 人間バージョンのシロウに抱っこされているマシロが語り、それの通訳をシロウが務めた。


「『お互いに記憶の覗く事も出来るのなら、お互いにおかしな記憶がないか確認してみればいいのでは?』と言ってるぞ」


 シーン……

 今までの話し合いで、一番まともな案が猫から出されたという事実に、一瞬周りが静かになった。


「で、でもさ、イヌちゃん自身がおかしな記憶は無いって分かってるのに、それをシロウ君が確認したところで、何かが見つかるとは思えないんだけど……」

「『自分自身で気付いてない事でも、他人の目から見て分かる事もある』 と言ってるぞ」


 そして再び沈黙。

 確かに、記憶のインストールは前に一度試してみた事もあるし、十分可能だと思う。プライベートに関わるので、使ったのはその一回こっきりだが。

 私は未来ちゃんにコクリと頷いて、いいアイディアだという意思を示した。


「いやぁ~、私が最後の締めに言おうと思ってた事を、ここで言われちゃったか~」

「あ、未来ちゃんズルい! 自分は分かってたみたいな顔して!」

「流石はマシロ。飼い主に似て、とても利発です」


 知ったかを始めた未来ちゃんに、ネコちゃんが抗議している。そんな様子を余所に、姫ちゃんは鼻が高そうにマシロを撫でた。


「どうするヒナ? 試しにやってみるか?」

「そ、そうね。他に当てもないし……」


 そうして、私とシロウが記憶を探る決意を固めた。


 最初に記憶を調べるのは私からになった。やはり、現時点で私が一番可能性が高いからだろう。私はシロウの正面に座って、記憶を渡す覚悟を決めた。


「シロウ、あまり私の記憶覗かないでよ? 恥ずかしいから」

「いや、おかしなところが無いか調べるのにそれは無理な相談だぞ……」


 軽くボケを挟みつつ、ついにシロウが作業に入った。


「魂の循環……。記憶、インストール!」


 ザザザッと胸がざわつき始めた。シロウは目を閉じて、私の記憶の洗い出しに集中していた。


「ヒナ……」

「なに? 何か見つけた?」

「ヒナって高校に入る前、友達できなくてかなり寂しい思いをしてたんだな」

「そういう事いちいち口に出さなくていいわよ! 黙って作業しなさい!」


 私は顔から火が出るほど恥ずかしくなり、横目で友達をチラ見した。三人はニヤニヤと意味深な笑みを浮かべているのがまた何とも言えない。


「ん~魂の奥深くに、まだ眠ってる記憶があるぞ。ヒナ、もう少し近くに寄ってくれ。その方が引き出しやすい気がする」


 そう言って、シロウが目を瞑りながら私に抱き着いてきた。私は頭から煙が出そうなほど戸惑いを隠せない。

 だが、シロウが私の魂の奥底に入り込もうとしているのか、背筋がゾクゾクずる。


「シ、シロウ……私なんだか体が……ひゃんっ!」

「む~、もう少しで届きそうなんだけどな」


 変な声が出てしまった。依然シロウは私の中をかき回す。


「ま、まだなの……? そんなに激しくされると……あうぅ」

「だぁ~ストップストップ!! キミ達は友達の家でなんちゅー事をしとるのかね!」


 耐えかねた未来ちゃんが私とシロウを無理やり引きはがした。周りを見ると、みんな顔を赤くしている。

 恥ずかしいのは私の方なんだけど……

 とりあえずこういう時は、全部シロウのせいにしておくに限る。


「も~このバカワンコ! すごく恥ずかしかったんだからねっ!」

「……」


 シロウは目を見開いて固まっていた。


「シロウ、どうしたの? ねぇ、私に変な記憶なんて無かったでしょ?」

「……」


 シロウの様子がおかしいのは一目瞭然だった。そんな態度に段々と不安になってくる。


「シロウ、何か言ってよ……」

「……すまん、少し一人にさせてくれないか? 考える時間がほしい。ヒメ、マシロ、お邪魔したぞ」


 そう言って、シロウは部屋から出て行こうとしている。


「待ってシロウ!」


 私はみんなに声をかける暇もなく、慌てて後を着いて行った。

 屋敷を出て、道の途中で私はシロウの手を掴んで、その歩みを止めた。


「待ってってば! 一体どうしたの? 何が見えたっていうの!?」


 私の問いに、シロウは重い表情のまま私に顔を向けた。


「ヒナ……。ヒナは、今の生活が好きか?」

「え!? うん、好きだよ。シロウがいて、友達ができて……幽霊だけどお凛ちゃんもいる。毎日が楽しいよ」

「なら、無理に知ろうとしなくてもいいと思うんだ。ヒナが奇跡を起こしたアレは、ラッキーな事だったんだ。だからそれ以上求めなければ、この生活は続いていく。だけど知ってしまえばヒナは変わってしまって、今の生活も壊れてしまうかもしれない」


 シロウのそんな反応に、あまり良い内容ではない事は分かった。だけど、それでも私は真実を求めずにはいられなかった。


「ううん、目の前に真実があるって分かってるのに、それを見て見ぬ振りなんて出来ないよ。大丈夫! どんな事を言われても、私は変わったりしない。だから話して」

「本当だな? 絶対だな?」


 シロウは心配そうに念を押してくる。私は笑顔で頷いて見せた。


「俺が話すよりも、ヒナが記憶をインストールすればすぐにわかるぞ。もう俺の頭にはその記憶があるから」

「あぁ、そっか! んじゃ、引き出させてもらうね」


  『 魂 の 循 環 』

 『 記憶 インストール 』


 私は意を決して、シロウから記憶を引き出した。

 私の頭に、いつの頃かの記憶がよみがえる。

 それを目を瞑り、思い返し


――そして私は、絶望した。

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