29話 運命の足音
一ヶ月放置になりそうだったので、とりあえず更新です!
遅れてすいませんでした。
十万文字の目処も立ったので、今連載しているもう一つのファンタジーが一区切りついたらこちらを進めます。
もう少しだけお待ち下さい。
「未来ちゃんに全てをお話しします……」
東海林先輩とのトランプ対決で色々と見せてしまった私は、保健室で周りに誰もいない事を確認してからある程度簡潔に打ち明けた。気味悪く思われないか不安だった訳だが、
「ふ~ん……」
未来ちゃんの反応はかなりあっさりしたものだった。
「あれ? 驚かないの? ネコちゃんに打ち明けた時なんて、両手両足を広げて『どひゃー!』って驚いてたよ?」
「そんな驚き方してないよ! リアクション芸人じゃないんだから!」
ネコちゃんが必死に訂正している。
すると姫ちゃんがいきなり立ち上がった。
「私も皆さんに隠してきた事があります。今まで家に呼ばなかったのは、実は家が極道だからなんです!」
「どひゃーーー!!」
姫ちゃんの告白に、未来ちゃんが両手両足を広げ盛大に驚いた。
「え、そっち!? 姫ちゃんの方が驚くポイント高いんだ!?」
「え? だって極道だよ? カッコいいじゃん!」
未来ちゃんの基準が分からない。そんな時、今度はネコちゃんが立ち上がった。
「私もみんなに内緒にしていたことがあったの……実は私の家は神社で、私は巫女をやっているの!」
「どひゃーーーーーー!!」
再びひっくり返ったカエルのように驚いている。
「いやいやいや、知ってたでしょ! ネコちゃんが巫女だって知ってたよね!? 洞窟探検の時にすでに言ったよね!?」
「そうだっけか? で、イヌちゃんの秘密って何だっけ?」
「だから、シロウは人間になれるんだって! シロウとは魂が繋がってるから、私は動物と会話が出来たりするの」
「ふ~ん……」
ふ~んて、それだけ!? 顔は真顔だし! 視線は窓の外のトンボ追ってるし!
「嘘でしょ!? 驚いてよ! 打ち明けるべきかすごく悩んでた自分がバカみたいじゃん!! 何かもう寂しいからもっと驚いてよ!!」
人外レベルの秘密でも、未来ちゃんにとっては人を弄るだけのネタにしかならない事を、この時私は初めて知った。
「話は聞かせてもらった!」
保健室のドアが勢いよく開き、東海林先輩がしてやったりという感じの笑みを浮かべながら、こちらに近付いてきた。
「ひいぃぃぃ~出たぁ~!」
私はムンクの叫びに描かれているモデルと同じポーズで身をすくめた。
どうもこの先輩は苦手だ。
「先輩、ドアをちゃんと閉めて下さい!」
「あ、うん。すまない」
姫ちゃんの要望に素直に答え、再びこちらに向かって来る。
「あの、『話は聞かせてもらった』って、私達廊下まで声が漏れないようにしゃべってたつもりなんですけど……」
私はおずおずと聞いてみた。
「僕はカードテクニックを身に付ける際に、聴覚も訓練したからね。ドアに耳を押し当てれば、中の会話くらい聞こえるさ」
「ただの盗み聞きじゃないですか!?」
詐欺師の他にもストーカーとも認識しておこうかしら……?
「乾さん。キミの話が本当なら、僕との勝負で見せた摩訶不思議な技の数々も頷ける。やはりキミは非常に面白くて興味深いよ。ぜひ、僕と携帯アドレスの交換をしてくれないか?」
「イヤです」
私はマッハで答えた。
「別にいいんじゃない? 私はイヌちゃんが羨ましいよ。先輩とメアド交換できるなんて滅多にない事だよ?」
「もちろん友達のキミ達とも交換するつもりだよ。僕はキミ達の仲間に加わりたいのだからね」
そう言うと未来ちゃんは喜んで携帯を取り出し、先輩と親しげに通信し始めた。
未来ちゃんはアレかな? 誰とでも仲良くなれる特殊能力でもあるのかな?
「じゃあ私も! 私は朝倉 美音子で、みんなからネコって呼ばれてます」
「面白そうですね。結城 姫乃です。あ、雛さんに余計な事したら今度は私が許しませんから」
みんなが楽しそうに携帯を差し出している。私にはみんなが篭絡されているようにしか見えない。
いや、姫ちゃんは平常運転かな……
「私は凛。お凛って呼ばれてます。よろしくお願いするです」
「のわー!!」
急にお凛ちゃんが目の前に出現した事で、先輩は驚きのあまり二、三歩あとずさる。
「キミがさっき話してた幽霊の子か……本当にキミ達は面白いメンバーだね」
「私、この子にいい思い出がないわ……むしろトラウマがあるんだけど……」
未来ちゃんと姫ちゃんは初めてお凛ちゃんと会話するので、先輩と同じようにおっかなびっくりだ。
というか未来ちゃんは洞窟での恐怖体験がトラウマらしく身震いしている。
「あれ? イヌちゃんどうしたの? ニヤニヤしちゃって」
未来ちゃんに言われて初めて気が付いた。私は何故か笑っていた。保健室の中は担当医がいないせいで、かなりにぎやかになっており、そのせいだろうか。私も何だか楽しくなっていた。
「分かりました先輩。私のメアドも教えます。昨日の敵は今日の友と言いますし」
そう言って私は携帯を差し出した。
「ありがとう乾さん。ちなみに上級生の間では今、キミの話で持ち切りだ。まぁ当然だろう。あれだけの勝負をしたのだから。だが安心していいよ。僕のありとあらゆる知識で、キミの技をちゃんとしたトリックだったと説明しておくから」
「あ、ありがとうございます。ホント助かります」
こうして私の携帯には、また一つ変な人のアドレスが増えた。
だけど不思議と、もう嫌な感じはしなかった。
私は今までに奇跡を三つ起こした。
一つ目はシロウを人間に変えた事。
二つ目は人間になったシロウに、人の言葉を与えた事。
そして三つ目は、シロウが事故に合った時、失った魂の代わりに私の魂を与え、循環させた事。
これによって私の人生は大きく変わった。高校に入る前までの、ずっと一人でいた時の私からは想像も出来ない事だろう。
家族とも言えるシロウがいて、友達も出来た。さらにその輪は広がりを見せて、私の周りはさらに騒がしくなっていく。それがすごく嬉しくて、楽しかった。
――だがこの時、この日常に終わりを告げる運命と言う名の足音が、一歩、また一歩と近付いてきている事に、犬の超感覚を取り入れた私でも気付く事はなかった……
次は動物と戯れる話をすると言ったな。アレは嘘だ……
いえ、嘘ではありません(汗)
その前に一話、エンディングルートに入る前の前振りをしておきたかっただけです。




