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22話 真夏の恐怖の物語④

もう怖いところはありません。(元々怖くなかったかもしれませんが)

いつものドタバタコメディーに戻ります。

それにしてもシロウがいないとドタバタ感がほとんどない事に今更気づきました……

 時刻はもう夕方の四時を回っていた。と言っても夏なので外はまだ明るい。

 あの洞窟探検をした後、現地解散となって私は家に戻って来たわけだが、どうしてもネコちゃんの事が気になっていた。

 ネコちゃんはあの箱を自分の意思で持ってきたと主張した。その場はそれでとりあえず収まったが、そんなの嘘だと私でも分かる。あの状況で自ら持ってくるなんてありえない。ネコちゃんは霊が自分を呼んでると言っていた。取り憑かれたような行動もした。

 私の中でどうしようもない不安と焦燥が渦巻いて、電話をかけてみる事に決めた。

 携帯にかけるとすぐに繋がった。


「もしもし、ネコちゃん?」

「雛ちゃんどうしたの? さっき別れたばかりだよ?」

「その……大丈夫かなって」

「何が? 大丈夫に決まってるじゃない」


 声はいつもの明るいネコちゃんだった。しかし私は不安を拭いきれない。


「本当に……?」

「……うん」


 少し間があり、声も低くなった。


「あのね、もしよかったら、今日はネコちゃんちでお泊りしようかなと思って」

「え……!?」

「えっと、ほら、両親は今いないっていってたじゃない? だから、寂しいんじゃないかなって……」

「……」

「あぁ~別にネコちゃんが怖がってそうとかそういうつもりじゃ無いの! ただ……友達だから何か力になれればと思って、その……迷惑かもしれないけど」


 何だか自分で言っておいて押しつけがましい気がしてきて、うまくしゃべれない。

 私の方がパニックを起こしているようだった。しかし、


「…………て」

「え? 何?」

「助けて……雛ちゃん……」


 消えそうな声で、確かにそう聞こえた。その瞬間、私の頭の中で火花が散るような衝撃を受けた。


「私、本当はこんな箱、持ってくるつもりなんて無くて……っく、訳分かんなくて……うぅ」


 嗚咽おえつ混じりの声が聞こえてくる。電話の向こうでネコちゃんが泣いている。それだけで私のやる事は決まっていた。


「大丈夫だよ! 楽しい話しをいっぱいしよう。そうすれば怖くなんかないよ! すぐに行くから待ってて」

「うん、ありがとう……」


 私は電話を切って立ち上がると、シロウに視線を向けた。シロウは電話の反応から空気を読んだのか、いつになく真剣な顔で私の言葉を待っている。


「友達が助けを待ってるの。私、行かなくちゃ。シロウも手伝ってくれる?」

「ヒナの言う事なら、俺は何でもするぞ!」

「正直、かなり危ない事になるかもしれないけど、それでもいい?」

「ならなおの事、俺がヒナを守る。それが俺の役目だからな」


 ゆっくりと立ち上がって迷いなくそう言い放つシロウの頭を、私は優しく撫でてあげた。

「ありがとうシロウ。じゃあ荷物をまとめてすぐに出かけるよ!」


 私達は急いで準備を済ませて、両親に置き手紙を残して家を出た。

 私達は足早に神社に向かった。神社の前の、数段しかない石段にネコちゃんは座って待っていた。


「お待たせ、ネコちゃん」

「あ、雛ちゃん、えぇ! シロウ君も!?」

「久しぶりだなネコ」


 ネコちゃんがシロウの存在に、何だかワタワタと挙動不審な動きを見せている。


「何かの役に立つかと思って、シロウも連れて来ちゃった。大丈夫、寝込みを襲うような奴じゃないから」

「そんな心配はしてないけど……その、今日はよろしくお願いします」


 何故かしおらしくシロウに頭を下げている。

 お互いに挨拶も済んだところで、家に上がる事にした。神社の隣の一軒家が自宅らしく、上がるように促されたが、そこでシロウが足を止めた。何やら空を見上げながら、難しい顔をしている。


「どうしたのシロウ、何か感じる?」

「ヒナ……ここまでヤバそうな事になってるなんて聞いてないぞ……」

「いや、来る途中で全部話したじゃない……って、そんなにヤバいの?」

「なぁ、今からでも場所を変えないか? むしろヒナの家に泊めてあげればいいと思うんだが」


 シロウの提案にネコちゃんが答えた。


「それなんだけど、お父さんに電話したら、明日の朝には帰ってきてくれるらしいの。それまで二時間に一度、箱を清めてほしいって頼まれたから」

「なんだ、明日まででいいなんて難易度低くなったわね。ところでその箱はどこにあるの?」

「神社の本堂だよ」

「わかった。俺達で出来るだけサポートするぞ」


 話しがまとまり、家に上がる事にした。茶の間に通され、私たちは適当に座り込む。


「それではネコに魔除けのアイテムを与えるぞ」


 シロウが何かを取り出した。それは昨日から練習していた折り鶴だった。


「ひゃ! 何これ!」


 ネコちゃんが驚きの声を上げる。それもそのはず、昨日のエイリアンのような姿に、羽と尻尾が付け加わり、その異形っぷりがグレードアップしていた。


「俺が折った鶴だぞ」

「どこが鶴よ!? 魔除けどころか呪いを生みそうなキモさじゃない!」


 私が瞬時にツッコむ。


「あはは、シロウ君折り紙うまいね。この長い手足でポーズと取らせたら可愛くなるかも」

「なるほど、さっそくやってみよう」


 二人が異形の鶴で遊び始めた。ネコちゃんが笑ってくれている事が嬉しくて、シロウを連れてきて正解だったと私は思った。

 だけどそのシロウがさっきからソワソワしている。まるでトイレを我慢しているかのように落ち着きがない。すると突然、

 バッ!!

 シロウが物凄い勢いで後ろを振り返った。


「え? な、何? どうしたの!?」


 私とネコちゃんがビクついた。


「あ、気のせいだったぞ」

「ちょっと止めてよ! アンタのそのリアクションの方が怖いから!」

「すまんすまん……あ!! ヒナ!!」


 シロウが声を張り上げた。


「こ、今度は何!?」

「あ、気のせいだったぞ」

「……ねぇ、引っ叩いていい?」


 私は顔を引きつらせたままシロウのほっぺを摘まみ、にゅ~と引っ張った。

 やっぱりコイツを連れて来たのは間違いだったかもしれないと考えを改める。


「ま、まぁまぁ、落ち着いて雛ちゃん、シロウ君も悪気があった訳じゃないし」


 ネコちゃんが仲裁に入る。


「う~ん、やっぱり落ち着かないぞ。ネコ、何か被る物は無いか?」

「タオルケットならあるよ?」

「それ貸してくれ」


 持ってきたタオルケットでシロウは全身を包んだ。

 何だろう、自分の部屋に引きこもるニートと言うか、冬の日に絶対外には出ない事を主張する子供と言うか……


「ふぅ、少し落ち着いたぞ」

「それ、暑くないの?」

「ク、クーラー強くするね」


 そんな事をしている間に、次第に日は落ちていった。

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