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2話 初めての友達

「ただいまー、ってああああああァああーっ!」


 帰宅早々に声が裏返った叫び声をあげてしまった。


「おぉ~ヒナ~、お帰りなさい!」


「ななな、何やってんの……?」


 シロウは人間の姿で犬用のトイレを踏みつけている。

 容器からミシミシと嫌なを音が鳴る。


「何かトイレが小さくて使いにくいんだよぉ」


「あんた今、人間サイズでしょ! その状態で犬用のトイレに乗らないで! 砂が散らばる! 容器が壊れるぅ!」


「んお? おぉ~、今人間か~、忘れてたぞ~」


 ……忘れるものなの? こいつ、無意識に人間化してるんじゃないでしょうね?

 シロウは犬と人間、どちらにも思いのままに変化可能だ。


「いつも言ってるけど夕方には両親が帰ってくるんだから、絶っ対人の姿見せちゃダメだからね!」


「わかってるって~、ヒナは心配性だなぁ~」


 いつものように無邪気に笑うシロウだが、私には安心する要素なんて何一つ無かった。

 高校生になって数ヶ月がたった。しかし私には未だ友達ができないでいた。なんと言うか、友達作りが下手なのだろう。そんなある日。


「乾さんごめん! 先生に頼まれてたプリント全部やってくれたの?」


「うん。朝倉さん黒板移し終わってなかったでしょ? それに、私一人でも大丈夫そうだったし」


 この子は朝倉美音子あさくらみねこちゃん。身長は私とどっこどっこいな小柄で、おっとりとした性格なのでつい手を差し伸べてあげたくなる、そんなタイプの子だった。

 席が隣なので、今日は同じ日直だったのだ。


「ありがとー。じゃあ、今日の黒板は全部私が消すね」


「気にしなくたっていいけど、なら私は黒板消しの粉を落とす係に徹しましょう!」


 申し訳なさそうに提案する朝倉さんに、それではいくら何でも気が引けると私は返す。


「ほんと~? 乾さんが優しい人でよかった。もっととっつきにくい人かと思ってたよ~」


 マジか。そんな風に思われてたんだ私……

 そこへ2人の女子が近づいてきた。


「ネコちゃん、黒板移し終わった? 相変わらず遅いんだから~」


 この人は前園未来まえぞのみきちゃん。身長が高くてスラっとしていて、いつも元気で明るい子だ。


「これは、今日の昼休み買い出し係はネコさんに決まりですね」


 結城姫乃ゆうきひめのちゃん。ロングヘアーがいつもサラサラなのが目を引く。誰にでも敬語で礼儀正しい印象の子だ。


「えぇ~! そんな事で決められちゃうの~!」


 朝倉さんがあたふたしている。この三人はいつも一緒にいる所をよく見かける。すでに一つのグループになっているかのようだった。


「えっと、ネコちゃんって朝倉さんの事……だよね?」


 私はおずおずと聞いてみた。


「そうだよ~。朝倉『みねこ』だから、ネコちゃん!」


 前園さんが何故かドヤ顔で答える。


「そうなると、『いぬい』さんは、イヌさんになりますね♪」 と結城さんが閃いたかのように言った。その言葉に前園さんが異様に反応する。


「おぉ~! その通りだ姫ちゃん! そうすると、私の友達には、犬と猫、二匹がそろう事になるよ!」


「友……達?」 と私はつい、つぶやいていた。


「あぁ~、ごめんね、馴れ馴れしくて、嫌だった?」


 前園さんが苦笑しながら心配そうに聞いてくる。


「そんな事ない! ちょっと感動しちゃって!」


 興奮して勢いよく立ちあがったせいで、前園さんと顔の距離が急激に近くなる。きっとこの時の私の目はシイタケのように輝いていただろう。


「近い近い! でもよかった~」


「では、昼休みは四人で食べませんか? ねぇ? ネコさんもいいですよね?」


「未来ちゃんが、やきそばパンで姫ちゃんが、カツサンドで……あ、雛ちゃんは何にするの?」


 ネコちゃんは買い出しの事を本気にしていた。

 そして私は名前呼びされる事になったらしい。

「もぐもぐ、まさかネコちゃんが本当に買い出しに行ってくれるなんてねぇ」


 未来ちゃんが食べながらしゃべっている。

 昼休みの時間、私達は四人で屋上に来ていた。元々教室ではまとまれる場所が無いため、以前から屋上でお昼を過ごしていた三人に私が加わった形である。


「え!? 冗談だったの!?」


 どうやらネコちゃんは冗談が通じない性格らしい。


「雛さんはお弁当なんですね。とても美味しそうです」


 姫ちゃんが私のお弁当を覗いてきた。


「あ、みんな良かったら好きなの食べて」


「むぐむぐ。やった~、姫ちゃんはイヌちゃんって呼ばないんだね? 名付け親なのに」


 名付け親って……


「未来さん、飲み込んでからしゃべって下さい。私はあだ名ではなく、出来るだけ本名で呼ぶ事が人間の尊厳だと思っていますから」


 姫ちゃんってかっこいいなぁ。私は素直にそう思い尊敬してしまう。


「姫ちゃんは相変わらず硬いなぁ。ん? でもネコちゃんの事はあだ名で呼んでるよね?」


「私はその……ネコ派ですから」


「「「派閥の問題なの!?」」」


 三人が一斉につっこむ。姫ちゃんはお恥ずかしいといった様子で頬を染めている。聞きようによっては、人間としてではなく、ペットとして見ているとも解釈できる。

 うん、かっこいいと思った私の評価を取り下げるとしよう。


「ネコちゃんは? イヌちゃんって呼ばないの?」


「私は、イントネーションがよくわからないから。

イ↑ヌ↓ちゃん? イ↓ヌ↑ちゃん? どっち?」


「いや、どっちでもいいんですけど……まぁ私はイ↑ヌ↓ちゃんかな!」


「それに私、雛ちゃんって名前、可愛いと思うの」


 恥ずかしいセリフを普通に言うのがネコちゃんの魅力なんだろうなぁ、と私は思う。

 でも恥ずかしいので話題を逸らしてみた。


「まぁ、犬を飼ってる手前、イヌっていうあだ名も不思議な感じだけど。あ、もちろん全然嫌じゃないからね?」


「犬を飼ってるの!?」 と未来ちゃんが食いついてくる。


「未来さんは動物好きですからね」 姫ちゃんはやれやれと言った様子で答えた。


「えぇ~見たい見たい! イヌちゃん! 写メとか無いの?」


「ごめん。携帯持ってないの」


「えぇ~! 高校で携帯持ってないって珍しすぎるよ! 天然記念物ですか!?」


 ひどい言われようである。


「どうして持たないの?」とネコちゃんが聞く。


「その……掛ける友達がいないから……」


 ドカーーーーーーーーーン!!!

 派手に地雷を踏んでしまった空気に三人が青ざめている。


「その、なんかごめん……」


 未来ちゃんに謝らせてしまった。とりあえず空気を変えるためにテヘペロのポーズを取り誤魔化しておく。


「なら、親が許してくれたら携帯買いに行こう! 私たちの番号を教えるよ」


「ほ、ほんとに!!」


 ヤバい! 超ヤバい。不肖わたくしこと雛は、このかた友達なぞ出来た事がありませんでした。それが、一気に携帯の番号交換まで進展するなんて! 今が人生の絶頂期だ! 近いうちに死ぬかもしれない!


――そう、この時私はかなり浮かれていたのでした。

キャラの名前を考えるのが一番大変かもしれない……


描写や地の文をしっかり書いて、読者に状況を分かりやすく表現する。

……難しい

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