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19話 真夏の恐怖の物語①

会話率80%くらいいってそうです。

  『 魂 の 循 環 』

 『 聴覚 インストール 』


「準備はいいか? ではヒナに問題です。あそこにいる男女はどんな関係でしょうか」


 現在私とシロウは公園のベンチに座っている。

 人間バージョンのシロウが軽く指さす方向を見ると、私と同じくらいの歳の男女が何やら揉めている。耳を傾けると、


「ちょっと! 今日は私と買い物に行くって約束したじゃない!」

「すまねぇ。オイラは今から川に行かなきゃなんねぇ。今日は一年に一度、川に主が戻って来る日なんだ。オイラは父ちゃんとの約束を果たすために、川の主を釣り上げなきゃならねぇんだ!」

「わ、私の約束とお父さんの約束、どっちが大切なのよ!」

「困る事言うなよ……ならおめぇも一緒に行かねぇか? そうすれば一緒に遊べるだろ?」

「なっ!? か、勘違いしないでよね! 私は別にアンタと一緒にお出かけしたかった訳じゃないんだから! アンタなんて、ただの荷物持ちにしてやろうって思ってただけなんだから! でもまぁ、そこまで言うなら釣りに付き合ってあげてもいいわよ」


 そう言いながら立ち去って行く二人。私は呆れながら答えた。


「どんな関係って、こんなの簡単じゃない。ただの友達よ。でもあの女の子も可哀そうよね。男の都合で欲しい買い物を後回しにされたんだから。さっさと主を釣り上げて買い物に行きたいに決まっているわ」

「……ヒナ、あの女の子は男の事が好きなんだ。だらか買い物とかは本当はどうでもよくて、一緒に居たいだけなんだぞ?」

「はぁ? だって一緒にお出かけしたい訳じゃないって言ってたじゃない」

「いやいや……あれが有名なツンデレってやつだぞ。それに結局一緒に釣りに行ったじゃないか。見たところ、女の子は釣りに興味無さそうだったろ? なのについて行くって事は男と一緒に居たいって事なんだ」

「そうかしら? 主を釣れば終わりなんでしょ? だったら二人で糸を垂らして確立を上げた方が早く終わって、買い物に戻れるって算段かもしれないじゃない」

「……」


 シロウが呆れた顔で私を見てくる。


「だからそのポンコツを見るような目は止めてよ!」

「……じゃあ次の問題な」

「ちょっと! ポンコツを否定してよ!!」

「あの男女はこれからどうなってしまうでしょうか」


 シロウの視線を辿った先に、二十歳はたちくらいの男性と、その男性よりも少し背の低い女性が口論をしている。耳を澄ませて話しを聞いてみた。


「キミ、今向こう女性を見てたでしょ!」

「なっ! べ、別に見てねぇし!」

「嘘! キミは生え際フェチだから、オールバックにしてる子の生え際が気になるんでしょ!」

「バ、バカ、たまたま視線を動かしたら、そこに女がいただけだっつーの!」

「やっぱり見てたんじゃない! あーあ、男って見境のない変態ばっかよねー」

「おまっ! いい加減にしろよ!!」


 なんだかよく分からない事でケンカを始めている。


「この後どうなるかって話だったわよね。男の体たらくにより傷つけられた女心。これは最悪、破局するかもしれないわね」

「ブー! 正解は、仲良くなるでした」

「はぁ!? なんでよ!!」


 例の男女に視線を戻してみると、


「俺が一番気になるのはお前だよ!」

「え!? それ、本当?」

「当たり前だろ。俺にはお前しかいないっつーの」

「嬉しい!」


 なぜかラブラブになっていた。


「どゆこと……?」

「まぁちょっと難しかったかもしれないけど、あれは仲直り前提のケンカだぞ」

「……何それ?」

「ん~、つまり、わざとケンカして、仲直りの際に相手から本心を聞き出す事で、前よりも仲良くなる、みたいな感じらしいぞ」

「理解できないわ。だったら最初から相手の気持ちを直接聞けばいいじゃない」

「いや~、そこが女心の難しいところなんじゃないか?」

「何? じゃあ私には女心が足りないって言いたい訳!?」

「いやいやいや、別にそういう意味で言った訳じゃないぞ!……じゃあ最後の問題な」


 話を逸らすかのように慌ててシロウが次の問題に移ろうとする。


「今、俺達は他の人の目から見て、どう見えているでしょうか」

「何その問題。散歩の途中で休憩している姉弟きょうだいってとこじゃない?」

「……正解」


 正解と言う割には相変わらず呆れた表情でため息を吐いているところが気になる。


「この公園、カップル多いんだけどなぁ……」

「何ブツブツ言ってるの? そろそろ帰りましょう。買い物に付き合って」


 そう言って私達は公園から出た。


「シロウ、アンタ色恋沙汰に詳しくなってるけどどこで覚えてくるの?」

「ウィスが色々と教えてくれるぞ。あとはアニメとかドラマで恋の駆け引きなんかをたくさんやってるな。それはそうとヒナ。俺に本を買ってくれないか?」

「いいけど、急にどうしたの?」

「ヒナに足りない分の知識は俺がおぎなわないといけない衝動に駆られてきた」


 何だろう。私がちょっと恋愛にうとい事が壊滅的な被害になりそうだから、それをカバーしたいと言っているのだろうか? 何だか釈然としない気持ちのまま、その足取りを本屋に向けた。

 そしてこの日を境に私の持っている漫画とは別に、シロウが読書をするようになったのは言うまでもない。

 季節は七月に突入してもうすぐで夏休みに入る、そんなある日の午後十時。この町を突如地震が襲った。

 かなり大きく、テレビを付けてみるとこの地域は震度五強と表示されている。

 私もシロウもちょっと驚いたけど、家にも特に大きな被害は無く、その日の話題になる程度だった。


――しかし、この地震がきっかけとなり、私達は恐怖のどん底に突き落とされる事になる。だがこの時の私はそんな事になるなんて知るよしもなかった。

雛「あれ~? 恐怖の物語は? 恐怖の要素無くない?」

犬「冒頭の茶番が長すぎて出だしだけで終わったな」

雛「大体、茶番が本編より長いってどういう事よ!」

犬「そのうち茶番が本編とか言われそうだぞ……」

雛「そう言われるだけの読者が付いてくれればだけどね」

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